233:コスプレサミットの打ち合わせ!①
僕の誕生日も終わった次の日、学校へいつものように登校すると、裕翔に声をかけられた。
「優希おはよう!」
「あっ、裕翔おはよー! 珍しく今日は早いんだね」
「まぁ昨日渡せなかったからなー、時間合わなかったし」
「渡せなかった?」
「いや、優希昨日誕生日だっただろ?
大したもんじゃないけど、改めて誕生日おめでとうな!」
そう言って裕翔は僕に小さな紙袋を渡してくれた。
「裕翔、ありがとう!」
「へへっ、まぁ俺はバイトしてないから大したもんじゃ無いけどな!」
「気持ちだけで十分だよ!」
「そう言ってくれると嬉しいぜ。
ちなみに中は駅中にあるあのバームクーヘンの店のバームクーヘンだぞー」
「わぁ! ありがとう裕翔!
バームクーヘン美味しいんだよねぇ」
「俺の誕生日の時は期待してるわ! なんてな!」
裕翔がそんな事を言った瞬間に僕はふと思い出した。
そう言えば裕翔って最初に白姫ゆかの自己紹介動画見せたらガチ恋しかけてたんだっけ。
ボイスとか録音したらどんな反応するんだろう。
「じゃあ裕翔用にASMRでも録音しようかな、ガチ恋しそうになったって言ってたもんね、白姫ゆかに」
「頼むその事は忘れてくれ」
「どうしようかなー?」
「頼むからアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「シナリオはいずみさんにお願いしないとかなー?」
「それだけはやめてくれえええええええ!!」
「冗談だよ、冗談!」
「優希ならたまにそういうのガチでやりそうだから怖いんだよ⋯⋯」
裕翔がガチで僕を止めて来たから、流石にこれ以上いじるのはやめておこう。
「冗談⋯⋯なんだけどなぁ」
「今のその間は何だよ優希!?」
「いや、本当に冗談だからね!?」
「信じても、良いんだよな?」
「僕の事なんだと思ってるの!?」
「ふわちゃんとかゆるママさんを軽々しく殺す快楽殺人者?」
「いや本当裕翔は僕の事何だと思ってたの!?」
「いや結構な回数殺してたと思うけどな⋯⋯」
「いやいや、あれはそう言うネタでしょ!」
「いや、多分マジで死んでたと思うが⋯⋯」
「いやいや、無いよ⋯⋯いやどうだろ」
一瞬やっぱりあるかもと思った僕がいた。
そんな事を言っているとチャイムが鳴ってしまったのでいつも通り授業を受ける事にした。
♢
それから気が付けばもう日曜日、今日は先輩とコスプレサミットの予選に関する打ち合わせや衣装を作る為の採寸などをする予定になっているからバイトが終わったらすぐに家に帰って準備を始めた。
そろそろ家を出ようかなと思っていると、先輩から連絡が来た。
「今から迎えに行くね⋯⋯?
あれ? 先輩、免許取ってたのかな?」
そんな事を考えながら家を出ると、いつもの様に高そうな車が停まっていた。
「あれ? 運転席に乗ってるのは先輩じゃないよね⋯⋯?」
僕がそう呟いた瞬間、後ろに先輩が乗っている事に気が付いた。
「あっ、後ろに乗ってたんだ!」
そして先輩が手招きしていたから僕も後ろに乗ると、車はそのままGloryCuteへと向かい始めた。
「お疲れ様、優希くん」
「先輩こそお疲れ様です!
それと運転手さんよろしくお願いします!」
僕が挨拶をすると、運転手さんは親指を立てながらミラーでチラッと僕を見ていた。
無口な人なのかな?
「あはは、今日の運転手さんは無口な人なんだ。
でも、慣れるとお話してくれるようになるからそのうちお話してくれるかも」
先輩がそう教えてくれた。
やっぱり無口な人だったんだね。
それから車に揺られていると、少し眠くなって来た。
朝早かったから仕方ないとは言え、先輩の前で眠るのもなんだか恥ずかしいな⋯⋯
「ん? 優希くん眠そうだけど、大丈夫?」
「ちょっと、眠いです⋯⋯」
「まだ少し時間かかるから着いたら起こしてあげようか?」
「大丈夫です、頑張って⋯⋯」
そこまで頑張って言ったけれど、僕の身体は言う事を聞いてくれなかった。
最近疲れてたし、仕方ないのかもしれないけど。
♢(一ノ瀬遥視点)
「大丈夫です、頑張って⋯⋯」
優希くんが眠そうな顔をしながらそう言ったと思ったら、眠気に耐えられなくなってしまったのか、そのまま眠ってしまった様子。
「あっ、寝ちゃった」
少し様子を見ていると、気持ち良さそうな顔をして眠っている。
「(本当、可愛い顔して寝るなぁ⋯⋯優希くんは)」
運転手さんもいるから、下手に口に出せないけど、優希くんの寝ている顔を見ているだけでなんだか幸せな気持ちになってくる。
「⋯⋯うぁ!?」
ずっと優希くんの顔を見ていたら突然車が揺れた。
少し驚いたけれど、問題があった訳じゃないし大丈夫そう。
⋯⋯いや大丈夫じゃなかった。
「(ゆ、優希くんがわたしの肩に!?!?)」
そう、さっきの揺れで優希くんがわたしの肩に寄りかかってしまったみたい。
「(はわわわわわわわ、心なしかいい匂いがする気が⋯⋯ってこれ普通逆だよね!?)」
顔には出さないけど、わたしの心の中はもう大変な事になっていた。
「(し、心臓に悪いよおおおおおおお!)」
着いて欲しいのに、着いて欲しくない。
そんな我儘としか思えない状況のまま到着まで一人、脳内でキャーキャー言っているわたしがいた。
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