231:プレゼントを貰っちゃった!(後編)

「なにこれ」

 ボクは一瞬地声でそう言ってしまった。


 余りにもの驚きでそんな声を出してしまったのは、この機械に少し見覚えがあったからなんだけど。


「ふっふっふ、それは今一部で話題の家庭用モーションキャプチャーさ!」


:コイツ、正気か!?

:それいくらすると思ってんだよ!?

:まじかよ

:ゆかちゃんの殺傷力を上げようって魂胆か


『モーション、キャプチャ⋯⋯?』

「これを家に設置して、中に入っているスーツを着るだけでフルボディトラッキングが出来る優れ物さ!」

『いやいやいやいや、これいくらすると思ってるの!?』

「値段なんて気にしたら負けだよ」

『気にするに決まってるよね!?』

「だって既にボクは自分のを持っているしね。

 断られても逆にボクが困ってしまうよ」


:いやその理屈はおかしい

:こんなん誰だって貰うの躊躇するわw

:今調べてみたら三桁万はするんだが

:そりゃフルボディトラッキングの機械は高いさ


『いやいやいや! それでもこんなのは受け取れないよ!?』

「ボクの為だと思って受け取って欲しいな」

『ど、どう言うこと?』

「ボクはね、フルボディトラッキングでぬるぬる動くゆかちゃんが、踊ってみたを踊ってくれるゆかちゃんが見てみたいんだ!」

「何気に自分の欲望全部載せしてきましたね」

「その為に三桁万出すとかコイツ正気じゃねーの」

「気持ちはわかるけど凄いね⋯⋯」

「お姉ちゃん、流石にこの人の気持ちは理解しちゃダメだと思う」


:皆何気に酷いw

:誕生日プレゼントに三桁万の機械はそりゃやばいて

:と言うか繋ちゃんってまだ16歳じゃ⋯⋯?


「ボクの扱い何気に酷くないかい!?」

『だってこんなの渡されたらこうなるよ!?』

「皆も見たいとは思わないかい!?

 ゆかちゃんが可愛いダンスをしたり、ゆかちゃんがぬるぬる動いてる所を!」

「「「「見たい」」」」


:皆、欲望に素直すぎw

:俺も見たい

:正直、私も...

:私も見たい!

:そ、それなら俺だって!


『お姉ちゃん達まで!?』

「という訳で皆の為にも受け取ってくれないかな?」

『う、うん⋯⋯その、ありがとう!』

「その言葉だけでこれ以上の価値があるよ⋯⋯」

『それは言い過ぎじゃ無いかな!?!?』

「そんな事はないさ!」

「うん、ゆかちゃんが歌って踊ったらそれはもう大量殺戮兵器だよ」

「繋さんは私を尊死させたいんですか??」

「ゆかちゃんがダンスしながら歌う⋯⋯良いね⋯⋯」


:逃げ場がどんどん無くなっていくwww

:四面楚歌とはこの事か

:圧力たけぇw


「いやいや、みんにゃ、ゆかちゃんの意思を尊重するべきだと思うにゃ。

 ⋯⋯ウチも見たいにゃ」


:ダメだこの駄猫www

:良い事言ったと思ったら最後で台無しだよwww

:一瞬良い事言ったな!って思ったのにw

:結局似た物同士が集まってたって事だな


『良いよもう! ボク、皆がびっくりするくらいカワイイ動画アップするから!』

「「「「「ほう?」」」」」

『あっ、今のはその、勢いで言っちゃったと言うか⋯⋯』

「これは楽しみだね」

「全力で待ってますよー」

「最近耐性付いて来た私を尊死させるくらいのものを作れるかな?」

「お姉ちゃん、耐性付いたって言いながら前死にかけてたよね」

「それは言わないで」

「ウチも楽しみに待ってるにゃー!」

「な、なのはまだ死にたくないの⋯⋯」


:なのちゃんがびびってて草

:ゆるママ強がってるw

:さくらちゃんが清楚に見えて来る不思議

:YURAさんのツッコミがw


「とりあえず、渡すものは渡したしボク達はこれで失礼するよ。

 ゆかちゃん、改めてお誕生日おめでとう。

 ふわり先輩も無理言って申し訳無かったね」

「ウチもありがとうにゃ!

 おかげでゆかちゃんをお祝い出来て嬉しかったにゃ!」

『あっ、二人ともありがとう!

 今度はボクがお祝いするからね!』

「お手柔らかに頼むにゃ⋯⋯」

「二人きりで過ごす夜なんかどうかな?」

『それするとボクが捕まるからね!?』

「ははは、冗談だよ」

「本当にゃのか怪しい所だにゃあ⋯⋯」

 そう言いながら繋ちゃんとさくらちゃんの二人は部屋から出て行った。


『なんだか凄いものもらっちゃった⋯⋯』

 二人が部屋を出て行ったあと、ボクは思わずそう呟いていた。


「予想はしてましたけど、まさか本当に持ってくるとはこの浮雲のふわりの目を持ってしても見抜けませんでしたー⋯⋯」

 ボクの声を聞いていたのかボクに続けてふわりお姉ちゃんがそう言った。


「冗談で言ったのは良いけど、本当に持って来るとか誰が予想できるかって話なの」

「ゆかちゃん、何か仕込まれてたりしない?

 大丈夫?」

『仕込まれてたとしてもボクじゃ気付けないよ⋯⋯』

「箱の中、少し見ても良いですかー?」

『うん、良いよ!』

 ボクがそう答えるとふわりお姉ちゃんが段ボールを開けて、中にある機械の箱を見始めた。


「どこにも開けた様子は無いですし、ちゃんと工場で生産された物と同じようですねー⋯⋯

 これはおそらくちゃんとした物だと思います⋯⋯」

『な、何で分かるの!?』

「いやー、実はこれ最近いまなんじにも導入されたんですよー」

「さ、流石いまなんじだね⋯⋯」

「私じゃ数百万ポンと出せないよお姉ちゃん⋯⋯」

「でもゆかちゃんの為なら?」

「⋯⋯出せるかも」

『出さなくて良いからね!?』

 そんなこんなで一番危険視されていた繋ちゃん登場を乗り切ったボク達は、少しお話して配信を終了する事にした。



「それじゃ優希くん、忘れ物は無い?」

「はい! 大丈夫です!」

 薫さんが家まで車を出してくれると言っていたから、僕は荷物を運ぶとトランクに入れた。

 それから忘れ物がないかチェックもして準備はOK、薫さんにお願いすると薫さんは車を走らせた。


「よし、着いたよ」

「薫さん、ありがとうございます!」

「それじゃ、優希くんまたねー」

「また何かあったら気軽に呼んでくれても良いからね?」

「はい! その時は声掛けさせてもらいます!」

「それじゃ優希くんお疲れ様」

「薫さんに由良さんお疲れ様です!」

 車の中から由良さんがばいばーいと言いながら手を振っているのを見ながら僕も手を振り返す。

 少しすると車は見えなくなってしまったから僕は家に戻る事にした。


 そして、エレベーターで上に上がると、そこにはいないはずの人がいた。


「あっ、優希くんおかえり」




---------


お久しぶりです、作者の二兎凛です。

ここ1-2ヶ月ずっと体調不良なりメンタルが死にかけていたりと大変でした⋯⋯

そのせいで感想への返事も出来なくて申し訳無いです⋯⋯

少しずつ良くなってきているのでそろそろ感想の方も返信していこうと思いますので良ければ是非!

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