213:先輩とコスプレイベント!①

 コスプレ衣装を買い、とうとう先輩とコスプレイベントへ行く約束をしている日になった。


 今日は朝から大須へと向かい、先輩と合流してからコス衣装に着替える予定だよ。


 現地ではレンタル衣装なんかもあるらしくて気分が変わったらレンタルしてみるのも面白いかもしれないね。


 そんな事を考えながら移動していると、すぐに大須へ到着した。


 大須はオタクの三大聖地の一つとも言われていて、名古屋近辺のオタクや一部の観光客はよくここに遊びに来るんだよね。


 電気街としても有名で、PCショップやパーツショップも多く存在していて、家電量販店とは一風違った面白さがこの街にはあるんだ。


 その中でもPCショップがやってるCPUガチャなんかは大人気らしくて未だに行列が出来るんだとか。


 僕はPCの内部には詳しく無いからやった事は無いけど好きな人はそう言うの好きそうだよね。


 少し話が逸れちゃったけど、今僕はそんな街の地下鉄の出口で先輩が来るのを待っているんだ。


「優希くん、お待たせ!」

「僕もさっき来たところなので大丈夫ですよ!」


 僕が出口で待っていると先輩が駅から出てきた。 僕もついさっき着いたばかりだから、一本違いだったのかな?


 それでも約束の時間より二十分は早かったから、お互いに早く着きすぎちゃったみたい。


「先輩、まだ二十分あるのに早かったですね!」

「それはわたしの台詞だよ! これだけ早く来たら優希くんより先だと思ってたのに⋯⋯」


 先輩は少し頬を膨らませると僕にそう言った。


「約束してたからつい早く来ちゃったんですよね⋯⋯」

「むぅ、まぁいいけど⋯⋯」

「それじゃ先輩、そろそろ移動しましょうか!」

「うん、そうしよっか!」


 僕と先輩は駅から移動を始めると、大須の商店街の中へ入っていった。


 商店街にはいると目に入ってくるのはとにかく沢山のお店。


 飲食店もあれば何を売っているのかすらわからない怪しいお店、服屋や薬局、コンビニととにかく沢山のお店がある。


「いつ来てもここの情報量は凄いね」

「正直どこに何があるのか未だに覚えきれてないです⋯⋯」

「とりあえず今日はこの商店街の中ならコスプレOKなんだし、早速着替えれる場所行こっか」

「ですね! あっ、そういえばお化粧ってどこでやれば良いんだろう⋯⋯」


 まずはコス衣装に着替える事に決めた僕達だったけど、お化粧なんかも着替える場所で出来るのかな?


「優希くん、一人でメイク出来るの?」

「まだ全然ですけど、一応少しは⋯⋯」


 ここは変に気取る必要も無いと思った僕は、素直に先輩にそう言った。


 これで下手でも変に思われる事は無いといいんだけど。


「それじゃ、わたしが教えてあげるよ!」

「えっ?」

「でもそうなると、二人きりになれる場所がいいかな? ネットカフェとかないかな?」


 先輩がそう言うと、スマホを手に取り地図を見始めた。


「うーん、ネットカフェだとマナーとか悪いのかな?」

「どうなんでしょう⋯⋯?」


 確かにネットカフェでそう言う事をするのはダメなのかもしれないと思うとちゃんと確認を取るべきなのかもしれない。


「あっ、でもその前に衣装に着替えないとだね⋯⋯流石に優希くんの前で着替える訳にもいかないし」

「そ、それはだめです!」

「だ、だよね⋯⋯とりあえず着替えてからお店に行って店員さんに聞いてみようか」

「はい!」


 そして更衣室の利用券は既に購入済みだった僕達はとりあえず着替える為に更衣室へと向かって行った。


 更衣室で無事に着替えた僕は軽く自分でメイクをしてみようかなと思ったけれど、先輩が見てくれると言っていたし、先輩に見てもらいながらやる事にした。



「先輩、お待たせしました!」

「優希くん似合ってるね。 お化粧無くても通用するレベルだとは思わなかったよ⋯⋯」

「そ、そうですか? ありがとうございます!」


 先輩は僕のコスプレを見ると少し驚いた様子だったけれど、褒めてもらえて少し嬉しかった。


 最近は恥ずかしさも少し和らいできてるから、少し慣れたのかな?


「でも、先輩も似合ってますよ!」

「ふふっ、ありがとう」


 先輩が着ているのはアオザイと言うベトナムの方の民族衣装で、とても身体のラインが綺麗に見える。


 アオザイの色もシンプルに白でとても綺麗。


 美しいと言う言葉が非常によく似合う衣装だね。


「それじゃとりあえず優希くんのメイクの為にもまずはネットカフェでメイクOKか聞いてみよっか」

「はい!」


 先輩がそう言うと、近くにある全国チェーンのネットカフェに入って行った。


 中に入ると店員さんは問題ないと教えてくれたけれど、僕の姿を見るなり、女性専用の個室へ案内するか聞かれた。


 だけど、僕は男なのでと断ると店員さんが目を見開いて驚いていたのは男としてやっぱり複雑な気分。


 それだけ衣装が似合ってる証拠と言えば証拠なんだけどね⋯⋯?


 そして個室へ入った僕は先輩にメイク道具を渡す。 すると先輩は慣れた手付きで僕の顔にメイクを施していく。


 先輩も普段から自分でメイクしてるからこれだけ上手なのかな? と考えているうちにメイクは終了した。


「よし! 良い感じ! いつもながら本当に優希くんは可愛いね!」

「あ、ありがとうございます⋯⋯」


 慣れてきたとは言えどもやっぱり可愛いと言われると未だにどきっとする。


「そんな恥ずかしがってるところがまた良いんだよねぇ⋯⋯」


 最近皆の反応が最初の頃の薫さんみたいになってるのは僕の気のせいだろうか?


「それじゃ、可愛い優希くんを皆に見てもらおっか!」

「⋯⋯はい!」


 僕は覚悟を決めて先輩と一緒にネットカフェから出ると、深呼吸をして精神を落ち着かせた。


 今日は白姫ゆかとしてではなく、姫村優希として、コスプレをするんだ。

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