212:コス衣装を買いに行こう!

 なのさん達とのオフコラボも終わり、僕の春休みの予定で最後に残っているのは先輩とコスプレイベントに行くこと。


 先輩は春から大学生になるとの事で今以上に忙しくなるかもしれないと言っていた。

 でも、夏休みも長いから次はGWや夏休みにでも遊べたらいいね、なんて先輩は笑いながら言っていたっけ。


 でもそうなると、今回は自分の意思でコスプレをする訳だから、衣装も自分で用意しないといけないよね。


 流石にこんな事で橋本さんや薫さんに頼る訳にもいかないし。


 そうなると、買いに行くしか⋯⋯無いよね。



 準備をして家を出た僕は、大須にあるコス衣装の売っているお店に向かう事にした。


 ここなら沢山衣装が売ってるだろうし、見てても楽しそう。


 大須へ到着した僕は大須にある中でも一番有名なコスプレ衣装を扱うお店へと入って行った。


 店内に入ると至る所に置いてあるコス衣装。


 このお店のコス衣装は、公式からライセンスを正式に取得して販売していると言う事もあり、とてもクオリティが高い衣装が多い。


 だけど、その分見てみると金額もしっかりしている。


 コスプレイヤーはお金がかかるって言うのはこう言う良い衣装を買うからって言うのもあるんだろうね。


 それから店内を物色しているととにかく色々な衣装が目に入ってくる。


 可愛い系の衣装からカッコいい系の衣装までとにかく一杯で目移りしてしまう。


 そんな風に店内をうろちょろとしながら衣装を見ていると⋯⋯


「あれ? もしかして優希くん?」

「えっ、この声は⋯⋯?」

 聞き覚えのある声が聞こえたと思い声のした方向を向いてみるとそこには香月さんがいた。


「あれ? どうして香月さんがここに?」

「えっと⋯⋯実は私のバイト先なんだ⋯⋯ここ」

 少し恥ずかしそうにしながら香月さんはそう僕に言った。


「そ、そうだったの!? いつから!?」

「私は割と最近だね⋯⋯このお店って一応その、如何わしいものは扱っていないから必死にお願いしてバイトさせて貰ってるんだ」

「どう言うこと?」

 僕は言っている意味がわからずに香月さんにそう聞き返してみた。


「えっとね、基本的にコスプレ衣装を扱ってるお店って未成年と言うか学生はNGってところが多いんだよ」

「そうなの?」

 初めて知った⋯⋯と言うかあんまりこう言うお店自体来ないから、全く気付かなかったのは無理もないのかな?


「そうなんだよねー、それで今まで全然こう言うとこでバイトしてなかったんだけど、ここの応募条件に年齢とか学生NGって書いてなかったから速攻で応募したんだよね!」

「なるほどー」

「そしたら未成年はOKだけど、学生NGって書くのを忘れてたらしくて、でもどうしても働きたかったから必死にお願いしたら、特例でOK出してくれたんだよ!」

「それは良かったね香月さん!」

「うん! それで、優希くんは何でここに?」

 世間話も終わると香月さんは僕にそう聞いてきた。

 ⋯⋯僕がコス衣装買いに来たって言ったらどんな反応するんだろうか。


「えっと、もうすぐコスプレイベントあるのは知ってるよね?」

「うん、もうすぐだね! 私楽しみなんだー」

「その時に着る衣装がほしくて⋯⋯」

「へぇ」

 着る衣装が欲しいと僕がそう言った瞬間、香月さんの空気が変わった気がした。


「それだったら私の出番、だね」

「こ、香月さん⋯⋯?」

「大丈夫、私に任せて!」

 香月さんの目が光ったような気がしたけど、気のせいだよね?


「優希くん、こんなのはどう?」

 そう言って僕のところに衣装を何着か持って来た香月さん。

 その衣装はどれも可愛らしいものだった。


「ね、ねぇ香月さん」

「どうしたの?」

「カッコいいやつとか⋯⋯ないの?」

「優希くんがカッコいいやつ⋯⋯?」

 何でそんな鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしているのかな香月さんは。


「それはダメだよ!」

「なんで!?」

「優希くんの可愛さを世界に広めるのが私の仕事なんだよ!?」

「スケール大きくなってないかな!? 世界にってどう言う事!?」

「お店のピヨッターアカウントでツイートしたり?」

「待って!? 恥ずかしくて僕が死んじゃうよ!?」

 僕は思わず香月さんにそうツッコミを入れると、流石に冗談だけど、なんて笑っていた。

 だけど、目が笑ってなかったような気がする⋯⋯


「一応、うちだと試着も出来るけど、優希くんどうする?」

「試着出来るの?」

「あそこに飾ってあるやつだったら出来るよー」

 香月さんが指を指した方を見てみると女性キャラクターの衣装が大量に展示されていた。


「あっ」

 そこには最近有名になったアニメ、JK魔女の衣装があった。


 オーソドックスなとんがり帽子に魔女っぽいマント、その中には落ち着いた色のブレザーと言ったアニメ再現のセットがあった。


「これ結構可愛いね」

「着てみる?」

「⋯⋯うん」

 カッコいいのとか言っていながら結局女装してるなー、なんて頭の中で考えながら試着してみると、これが想定以上に良かった。


「⋯⋯これにしようかな」

「すごく似合ってて良いと思うよ!」

「じゃあこれ買っていくから香月さんお会計お願いしてもいいかな?」

「大丈夫だよー!

 着替える前に写真、撮ってもいい?」

「⋯⋯まぁいいけど」

「やったー! あ、あとうちのピヨッターに載せたりとかは⋯⋯?」

「上の人がOK出すとは思えないけど、大丈夫なの?」

「勿論確認は取るよ?」

「じゃあOK出たらって事で!」

「じゃあ投稿したらメッセージ送っておくね!」

「うん!」

 お会計前にそんな事を喋った僕はお会計をするとお昼ご飯を食べてから家に帰っていった。

 たまにこうやって遊びに行くのも楽しいよね。


 ⋯⋯ちなみに香月さんが投稿した僕の写真は少しだけバズったのだとか。

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