214:先輩とコスプレイベント!②
大須のアーケードへと出てきた僕達はコスプレをしながらアーケードを巡る人の中にささっと入って行った。
何でも今やっているこのコスプレイベントは世界コスプレサミットと言われるイベントが大人気になった結果、他の時期にもやろうと言う事で行われるようになったらしく、世界コスプレサミットほどでは無いにしろ、多くの観光客やコスプレイヤーで賑わっていた。
「優希くん、凄い人だね⋯⋯」
「そうですね⋯⋯世界コスプレサミットが大人気で凄く混むって聞いてたのでこっちはそこまでだと思ってました⋯⋯」
僕と先輩は人で溢れるアーケードの中でそう呟くも、その呟きは周りの声ですぐに掻き消されて、誰の耳にも入る事は無かった。
「とりあえず、優希くんを見てもらう為にも端っこに移動しなきゃ⋯⋯!」
先輩はそう僕に聞こえる声で言うと、僕の手を握り、列の端へと誘導してきた。
「わわっ!?」
「あっ、痛かったかな? 大丈夫?」
突然驚いて声を上げた僕の事を先輩が心配そうに見つめる。
でも、僕が驚いたのはこのパレードを見つめる一般参加者の多さだった。
「大丈夫です! 周りの僕たちを見てる人の数が多くてびっくりしちゃいました⋯⋯」
「あぁ、なるほど! てっきり手を握ったのが痛かったのかと思っちゃったよ⋯⋯」
「それは大丈夫ですよ!」
「なら良かったぁ⋯⋯」
先輩は安心したような顔でそう返事をすると、改めて僕達の事を見ている人達の方を見始めた。
「日本人だけじゃなくて外国の人も沢山いるね」
「そうですね、うぅ⋯⋯これだけの人に見られてると思うと緊張します⋯⋯」
「ッ! そ、そうかな⋯⋯?」
「先輩は緊張しないんですか?」
「わたしは慣れたかな? 結構モデルやってると人の目もあるから」
「なるほど⋯⋯でも人の目に慣れるって凄いですね⋯⋯僕なんて未だに恥ずかしいですよ?」
「ふふっ、優希くんらしくてわたしは良いと思うけどね?」
先輩は笑いながら僕にそう言ってくれた。
恥ずかしがるのが僕らしいって思われているのは釈然としないけれど、先輩が良いって言うなら⋯⋯まぁ、いいかな?
「でもよくよく考えたら、女装に慣れた上で人前に出るのも慣れるのって相当難しく無いですか?」
「うん。 わたしもそう思うよ⋯⋯」
そう考えたら僕は今結構とんでもない事をやっているんじゃ⋯⋯?
そんな話をしていると僕や先輩の方に声が聞こえてきた。
「そこのJK魔女の子とアオザイの人視線くださーい!」
声をかけて来たのは大きなカメラを持った人だった。
「視線くださいだって、笑顔で返してあげよっか」
「はい!」
僕たちはそう言うと、笑顔でカメラを持った人の方を見た。
「ウグッ」
「おっ、おい!? 大丈夫か!?」
「クソッ、一瞬で大量の尊みを浴びたか、急性尊み中毒だ、少し休ませれば治るはずだから端っこに寄せてやってくれ!」
ん? なんだか僕の思っているのと違う状況になってきているような⋯⋯?
「な、なんだか様子がおかしいね⋯⋯大丈夫なのかな⋯⋯?」
先輩も周りの様子を見て何かを察したみたい。
「うげぅ⋯⋯」
「クソッまた一人やられた!」
「そこの百合のお姉さん達視線くd⋯⋯ガクッ」
「クソォォォ!また一人!?」
パレードの参加者達に声をかけて撮影しては倒れる人が続出してきている。
コミケでもここまでの事はなかったのに一体何が起きてるの!?
「い、一体これは⋯⋯?」
「なんだか怖いね⋯⋯」
「ん?君たち知らないの?」
僕達の側にいたレイヤーさんが急に声をかけて来た。
「僕は初参加なので何がなんだか⋯⋯」
「わたしもです⋯⋯」
「あー、だったら無理もないや。
今この辺を歩いてるのは百合レイヤーとかって言われる同性で仲良く歩いている人が多いゾーンなんだけど、それが好きな人はああして大量の尊みを浴びると尊死するんだよ」
「「なにそれこわい」」
軽い解説をしてくれるも、その解説を聞いて僕と先輩は思わず同時にそう言ってしまった。
「尊死と言っても実際死ぬわけじゃないから安心してね。 たまに心臓止まるくらいだから」
「心臓止まったらダメですよね!?」
「それは大丈夫じゃないですよ!?」
コスプレイベントってこんなに怖いところだったなんて僕は初めて知ったよ⋯⋯?
「コミケや岐阜のコスプレイベントと全然違います⋯⋯」
「コミケは精鋭揃いだからねー、たまに医務室に運ばれる人もいるらしいから全員がって訳じゃ無いけど」
「精鋭揃いだったんですか!?」
「コスプレするだけじゃなくて撮影する方も奥が深いんだね⋯⋯」
「あとコミケと比べるとここは露出が少ないかなー? あそこはローアングラーとかも多いしこっちの方が治安はいいかも」
「なるほど⋯⋯」
「イベントによって空気感って違うんだね⋯⋯」
「じゃあ私は向こうに行くから二人とも楽しんでね!」
「あっ、はい! ありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
「ふふっ、じゃあまたねー」
そう言って“お兄さん”は別のエリアに歩いて行った。
「優希くん⋯⋯」
「今の人、男の人でしたよね⋯⋯声的に」
「うん⋯⋯」
「メイクって凄いですね⋯⋯」
「優希くんはそのままであのレベル出せるって言うのも相当ヤバいって自覚はあるのかな!?」
「⋯⋯やっぱりそうなんですね」
「あっ」
薄々分かってはいたけど、そこまで男っぽく無いんだね、僕。
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