189:少しくらい手伝いたい!
話も終わり、僕達は運ばれてきたパンケーキに舌鼓を打っていた。
「うん、やっぱり美味しい」
「ふわふわで⋯⋯クリームが合わさって至福の時って感じです⋯⋯」
僕はパンケーキを食べるとその美味しさに思わず顔を綻ばせてしまった。
自分でもにやけ顔になってるのは分かってるけど、美味しいから仕方ないよね。
それから黙々とパンケーキを食べた僕達は、食べ終えるとお会計をしてお店を出た。
「美味しかったね」
「はい! 美味しかったです!」
「あっ、そうだついでにお願いがあるんだけど優希くん時間ってまだ大丈夫かな?」
お店を出た時に薫さんがそう聞いて来た。
「この後は夜に配信しようかと思ってたくらいなので大丈夫ですよ!」
「よかった、もし優希くんが大丈夫なら、Vtuberやる時に必要な機材とかを教えて欲しかったの」
「機材ですか?」
「うん、とりあえず何から揃えれば良いのか分からないから、おすすめのメーカーの物とかあったら教えて欲しいな?」
「そう言う事なら任せてください!」
「うん、それじゃあ優希くんよろしくね?」
「はい!」
僕がそう返事をすると僕達は駅前にある電気屋さんへ向かい始めた。
電気屋さんへ入った僕達はまず、配信用の性能のいいマイクを探しにマイクのコーナーへとやって来た。
「マイク、やっぱりいつ来ても種類が多いね⋯⋯」
「マイクは種類もですけどメーカーも多いですからね⋯⋯僕はオーディオ○クニカのマイクを気に入って使ってますけど⋯⋯」
「って言う事は同じ物を使えば、いつも優希くんの配信のときに私が聞いてる感じになるんだね」
「そうですね!」
「じゃあマイクはこれにしようかな⋯⋯」
薫さんは僕が使っているマイクと同じ物を選んでかごの中に入れた。
「薫さんはASMRとかはやるつもりなんですか?」
「私は今の所する予定は無いかな?」
「だったら必要無いですかね?
ASMRする為のマイクはかなり良いお値段するので⋯⋯」
「必要になる事があったら、その時にお願いするね」
「はい! その時は遠慮なく聞いてください!」
そして他にWebカメラなども大分古いのを使っていると薫さんは言っていたから僕の使っているメーカーや他の有名メーカーの物を教えてあげると、薫さんはそれを手に取り、気に入った物をカゴに入れていった。
やる気満々、って感じが伝わってきて僕までワクワクしてきちゃった。
「これくらいあったらいいと思いますよ!」
「そう? それじゃあお会計して来るから、少し待っててね」
「はい!」
それから数分後、買い物袋を手に持った薫さんが戻って来た。
「待たせてごめんね、それじゃいこっか」
「はい!」
そして僕達はそのまま駅の方へと歩き出した。
「そういえば薫さんはVtuberいつから始めるのか、とか決めてるんですか?」
駅へ向かう間、僕は薫さんにそう聞いてみた。 いつからやるのか分かってたら、僕のチャンネルでも宣伝出来るからね!
「予定では三月入ったくらいからやろうと思ってるよ。
それくらいになれば入ってる仕事も一段落する予定だから」
「なるほど!
それだったら、もし暇なら夜僕の配信で告知しませんか?」
「えっ?」
僕がVtuberを始めてスタートダッシュを切れたのは間違いなく薫さんのおかげ。 だから僕は薫さんのVtuberデビューをサポートしたいと思ってたんだ。
「きょ、今日!?」
「はい! 今日ですよ!」
「凄く嬉しいんだけど、まだ喋り方とか定まってないと言うか⋯⋯」
「最初の頃の薫さんそのままで良いと思いますけど⋯⋯」
「そ、そうかな?」
「だって僕最初の頃は薫さんの事ああいう雰囲気の人だって思ってましたし!」
「イメージ作りは成功してたんだね⋯⋯」
「実際会ってみると印象違ってびっくりしましたけど⋯⋯」
「正直どう思った⋯⋯のかな?」
薫さんにそう聞かれると思わずドキッとした。
「え、えっと、その、もっとイケメンっぽい人だと思ってたので、想像以上に綺麗でびっくりしたと言うか⋯⋯」
僕は頬が熱くなるのを感じながら正直に言った。
流石に本人の目の前で容姿を褒めるのは恥ずかしいよ⋯⋯
「あ、あ、あり、ありが、とう」
薫さんがテンパりながらそう返事すると、なんとも言えない雰囲気になった。
そのまま歩いていると駅に到着してしまった。
「その、薫さんが良かったら、今日、VCに来てください!
無理はしなくて大丈夫なのでっ!」
「うっ、うん!」
「それじゃあ、ま、また!」
恥ずかしくて逃げるように、駅で薫さんと分かれ、僕は家へと帰っていった。
♢
今日はとても良い一日だった。
優希くんがパンケーキを食べて顔を綻ばせているところなんて写真を撮って飾りたいと思った。
流石にそんな事しないけど、それくらい可愛いかったんだよ。
そして私はまだ優希くんと離れたく無いと思ってしまって、機材に無知な振りをしてしまった。
本当はある程度下調べもしていたんだけど、少しでも長く一緒にいたいと思ったらつい、優希くんにお願いしちゃった。
それに電気屋さんでは優希くんが使っているのと同じマイクやWebカメラを買えた。
普段使いするような物じゃないとは言え、お揃いの物が買えた私のテンションは鰻登りだった。
そして帰り道、優希くんからとんでもなく嬉しいお誘いが。
今日の配信で私のVtuberデビューについてのお知らせをするコラボをしてくれるんだって。 優希くんとコラボするのが大きな目標だった私からするとこの誘いは本当に嬉しかった。
でもそんな話をしていると私の最初の頃の印象の話になった。
あの頃の私は女性らしさをあまり出さずにいた。
だって女性でSNSをやっていると面倒な事が結構あったりするから。
それで優希くんに正直な感想を聞こうと思った。
恥ずかしそうに答える優希くんの様子に悶えそうになりつつも、その答えからもしかすると、なんて思ってしまった。
でも、そんな考えも吹っ飛ぶくらい私まで恥ずかしくなってきちゃって、駅では耐えられなくなった優希くんが逃げるように帰って行ってしまった。
最後にコラボするならVCに来てと声をかけて。
家に着いた私は買ってきたマイクを速攻でセットする為に自分の部屋へと入った。
「あっ、お姉ちゃんおかえりー
優希くんとの個室カフェデートはどうだった?」
今日の話を聞きたかったのか、由良が私の部屋に入ってきた。
「あんまりデート気分じゃなかったけど、パンケーキ食べてる優希くん最高に可愛かった⋯⋯」
「そんなに?」
「写真撮ってたら額縁に入れて飾りたいくらい⋯⋯」
「え、そんなに?」
「そんなに」
「いいなぁーわたしも見たかったなぁー
それでお姉ちゃん、なんでそんなに慌ててマイクなんてセッティングしてるの?」
「えっと、今日、優希くんの配信でVtuberデビューの宣伝をしてくれる事になったんだけど、その為の準備をね⋯⋯」
「へぇ、いきなりコラボ出来て良かったねお姉ちゃん」
「うん!」
「本当嬉しそうな顔で返事するね⋯⋯」
「だって嬉しいんだもん」
「じゃあわたしは配信を見ながらまったりとしてようかな?」
「由良に見られながらって思うとなんだか恥ずかしいな⋯⋯」
「コメントはしないから安心して?」
「見られてるのが問題なんだけど!?」
「あはは、それを言っちゃおしまいだよお姉ちゃん」
「それじゃ、頑張ってねー」
そう言いながら由良は自分の部屋へ戻って行った。
「全く、由良ってば⋯⋯」
「でも、これで優希くんとコラボも定期的に出来るようになるのかな⋯⋯」
私はこれから先の事に思いを馳せながら、マイクやカメラなどの周辺機器をセットしていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます