173:薫さんの看病をしよう!

 コラボが終わり、お父さん達とご飯に行こうかと話していた時に電話が鳴り、出てみると由良さんからの電話だった。


 どうやら薫さんが風邪を引いてしまったらしく、由良さん自身も仕事の打ち合わせの為に名古屋を離れているらしく、僕が様子を見に行く事になった。


「それじゃ優希、何かあったら連絡してくれて構わないからな」

「優希ちゃん、薫ちゃんに変な事しちゃだめよ?あっされる方かしら⋯⋯?」

「何言ってるのお母さん!?

 僕にそんな事出来るわけないでしょ、それに、嫌われたく、ないし⋯⋯」

「あらぁ〜」


 僕が言った言葉でお母さんは語彙力を失ったような声を出してニヤニヤとしている。

 どこかその目線を見ていると言った言葉が恥ずかしく感じてきた。


「っ、あ、あんまり道路にいても邪魔だから僕は行くね!」

「お、おう、遊佐さんにお大事にって言っておいてくれな」

「今度また遊びに来てねって言っておいてちょうだいねー」

「お母さんのはあれだけど、ちゃんと伝えておくね!」


 そして僕は車を降りると、薫さんの家のドアの前に立ち、由良さんに連絡した。


「由良さん、今到着しましたよ!」

「優希くん、ありがとぉ!

 ⋯⋯今カメラの映像確認したから、鍵のロック外すね!

 ドアは閉めたらオートで鍵がかけられるから閉めてくれたら大丈夫だからね!」

「分かりました!」


 由良さんがそう言うと、ガチャ、と音がしたのでドアを開け、家に入った。


「お、お邪魔します⋯⋯」


 女の人の家に入るのなんて初めてで、何故か緊張してしまう。


「優希くん、お姉ちゃんの部屋は玄関入ってすぐの所にあるから、様子を見てくれるかな?」

「分かりました!」


 僕は声を小さめに返事をして、薫さんの部屋に入った。


 部屋に入ると息苦しそうにベッドで寝転ぶ薫さんの姿が。


「息苦しそうですね」

「冷えピタ貼ってあるかな?

 家出る前は冷えピタ貼ってたんだけど」

「えっと、あっ、剥がれて落ちてるみたいですね」


 僕はそう言いながら剥がれた冷えピタを拾い、近くにあったゴミ箱に入れておいた。


「じゃあ、冷蔵庫に冷やした冷えピタ入ってるから、お姉ちゃんに貼ってあげてくれるかな?」

「分かりました!」

「それでちょっと様子見て大丈夫そうなら帰ってくれても大丈夫だからね!」

「せめて何か食べれるように、お粥でも作っておいてあげたら、楽じゃないですかね?」

「うーん、一応買ってはあるけど、お願いしちゃっても大丈夫かな⋯⋯?

 土鍋はキッチンのシンクの左側の一番下に入ってるから、お願い!」

「分かりました!

 前に薫さんに看病してもらったお礼でもあるので気にしないでください!」

「そう言ってくれると助かるよ!

 それじゃ、私はまだやらないといけないことがあるからお姉ちゃんの事、よろしくね!」

「はい!」


 電話を切ったあとにキッチンへ行き、冷蔵庫の中にあるひえぴたんを確認して、土鍋を取り出した。


「軽く水洗いして、っと」


 お米は米びつがあったので、そこから一合分のお米を取り出して、ざるにいれた。


 そのお米も水で軽く洗って土鍋に入れると、お米の量に合わせてお水を入れて、弱火でじっくりと加熱し始めた。


「これで準備はOK、っと。

 次は薫さんに冷えピタ貼ってあげないと⋯⋯」


 冷蔵庫から冷えピタを取り出して、薫さんの部屋に入る。


 部屋に入ると変わらず寝苦しそうに息をする薫さんの姿があった。


「最近ずっと忙しそうだったから⋯⋯かな?」


 そう小声で呟くと、薫さんのおでこに冷えピタを貼る。


「んっ⋯⋯つめたい⋯⋯」


 薫さんが冷えピタの冷たさで目が覚めたのか、そう呟いた。


「あれ⋯⋯? 由良、仕事あるって⋯⋯?」


 薫さんは寝惚けながらそう僕に言った。


「あっ、薫さん、起こしちゃいました?」

「あれ? 優希くん? えっ?」


 頭が回っていないのか薫さんは、目をぐるぐる回すかのようにテンパっていた。


「由良さんにお願いされたので、来ちゃいました」

「えっ、夢じゃない、の?」

「夢じゃないですよ?」

「あはは、恥ずかしいところ見せちゃってごめんね⋯⋯」

「それ言ったら僕の方もですよ⋯⋯?」

「あはは⋯⋯」

「それにしても凄く辛そうですけど、大丈夫ですか?」

「うん、あんまり本調子では無いけど、朝に薬飲んでから寝たから多少は良くなったよ」

「それだったら、今お粥作ってるんですけど、食べれそうだったら食べますか?」

「⋯⋯お粥? 作ってる?」

「はい! 由良さんに場所を聞いたので今作ってるんですよ!」

「じゃあ、お願いしてもいいかな?」

「はい! それじゃ、焦げるといけないので、見てきますね!」

「うん、ありがとう」


 そして僕は薫さんの部屋を出るとキッチンへ向かった。



 柿崎ゆる

@Kakizaki_yuru


ありのままに今起こった事を話します

風邪引いてダウンしたと思ったら

目の前にゆかちゃんがいました

自分でも何を言っているか分からないと思いますが

遊びに来ただとか、そんなものじゃ断じてないです

ゆかちゃんの看病の片鱗を味わっています......


 浮雲ふわり@いまなんじ七期生

@Huwari_imananzi07


返信先:@Kakizaki_yuru


前世でどれだけの徳を積めばそんな事になるんですかー?



 私がピヨッターに今起きた事を投稿すると程なくしてふわちゃんから返信が飛んできた。


「ふふっ、前世で徳を積んだ、か⋯⋯私の前世相当いい事したのかなぁ⋯⋯」


 私は久しぶりに優希くんに会えた事もあって、心は今にも踊り出しそうなほど嬉しかった。


 普段しないようなツイートをするくらいには。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る