172:お母さんが大暴走?

 配信が終了した後、Melji乳業さんのYotubeチャンネルに投稿する為の動画を撮影する為に本来自分の出したかった物をそれぞれ用意し始めた。


 ボクは冷えてしっとりとしたガトーショコラに冷えた生クリームを添えた物を、華お姉ちゃんは冷えたチョコレートムースを、エミリーお姉ちゃんは常温になり、中に冷たいクリームの入ったチョコレートイーストドーナツをそれぞれお皿に並べてテーブルに座る事に。


 撮影する際はスタッフさんなんかも試食をしてその場のワイワイ感を伝える感じの撮影の予定になってるよ。


 ボク達の座るテーブルは長めのテーブルで、ボクを中心にして左右に華お姉ちゃんとエミリーお姉ちゃんが座ったよ。


「と言う訳で、ここからは気楽に行きましょうかー」

「試食タイム、デース!」

『い、いただきます?でいいのかな?』


 そして撮影されながらの試食タイムが始まった。


「んー♪ ゆかちゃんの作ったガトーショコラしっとりとしていて美味しいですー!」

「しっとりノーコー!うめーデス!」

『あ、ありがとうお姉ちゃん! 美味しく出来てたならボクも安心だよ!』


 そしてボクもガトーショコラを食べてみると前練習した時のように美味しく出来ていた。


『うん、美味しく出来てる!

 ボクはこの生クリームを付けて食べるのがオススメだから試してみてほしいな!』

「なるほど、これを付けて食べる⋯⋯美味しいですねー⋯⋯」

「生クリームが苦さを南無三してマース!」

「『いやだから言い方が!?』」


「あっ、そうだ、これはシュバルツさんにも食べてもらうべきデース!」

「えっ、ちょっ! エミリーさん、お、私は今はいないと思って下さいってさっき言いましたよね!?」


 お父さんが慌ててそう言うと——


「あの、シュバルツさんがいないならゆりさんはどうでしょうか?」

「え?」


 お母さんが唐突にそう言い始めた。


「そうすれば見た目は全員女の子、完璧だと思うんですけど」

「い、いやっ!?それは!?」

「ど、う、で、す、か?」


 お母さんはお父さんに暗にやれ、と強い圧力をかけていく。


 なんだか背筋が寒く感じてきたような⋯⋯」


「流石に準備してないと言いますか⋯⋯」

「Vライブのスタッフさん、どうなんです?」

「あっ、用意してありますよー任せてくださーい!」


 お父さん、逃げ道が⋯⋯


「なんで?」

「良かったですね!」

「良くないんだが?」

「お、お父さん! 口調、口調が!」

「うぐっ⋯⋯これは失礼⋯⋯」

「おぉー、これがホーソージコデスね!」

「誰のせいだと思ってるんですか、まったく⋯⋯」


 そしてすぐにお父さんのゆりの準備が完了して、全員での試食タイムに。


『「「いただきます!」」』

「いた、だき、ます⋯⋯」


 全員でそれぞれお菓子を食べ始めると全員が美味しいと言った感想を漏らした。


「いや、さっきも少し食べましたけど本当に美味しいですね」

「うーん、ゆかちゃんのお菓子おいしーデス!」

「⋯⋯息子の手料理、初めてかもしれません」

「でも、ふわりお姉ちゃんとエミリーお姉ちゃんのお菓子もすごく美味しいよ!」

「そ、そうですかー?」

「ゆかちゃんありがとーデス!」


 ボク達が食べながら盛り上がっていると、周りにいたスタッフさんも食べては美味しいと言っていた。


「いやーふわちゃんがまさかちゃんと料理出来るとは⋯⋯」

「エミリーちゃんのも結構うめーぜ?」

「ゆかちゃんの、ダンチよ」

「生クリーム浴びるように飲みたい」


 そんな声が周りから聞こえてきてちょっと笑っちゃった。


「どうかしましたかー?」

『ううん、何でもないよ!

 ただ、皆楽しそうだなって』

「こういう撮影の時はこうやって皆で楽しみながらやるんですよー、私たちの場合はですけどー」

「私もたのしーデス!」

「私は気が気じゃないんですけど⋯⋯」

「ゆりさん、お化粧しません?」

「あの、やめてくだ」

「エプロンもありますよ?」

「ひえええええええええええええ!!」


 そんな感じでわいわいと皆で楽しんでいる中、スタジオ内にお父さんの悲鳴がこだました。


 後日この時の動画が上げられた際にネット民の間で女装シュバルツのタグが大流行したとか、しなかったとか。



 そして撮影が終了し、後片付けをして今日は終了。


「優希くん、今度は二人でコラボしようね」

「えっと、はいっ!」

「ふわりさんずるいです、私もしたいです」

「「えっ」」


 唐突にエミリーさんが流暢な日本語を喋り始めたから、僕は思わず驚いてしまった。


「あの、エミリーさん、口調⋯⋯あれっ?」

「ど、どう言うことですか?」

「あ、言ってませんでした?」


「私、猛特訓して、完璧ではないですけど、日本語マスターして、きたですよ?」

「す、凄いです!」

「ゆかちゃんに、褒められた⋯⋯嬉しいデス⋯⋯」


 まだ途切れ途切れではあるけれど、エミリーさんは日本語がかなり上達していて、僕も思わずびっくりしてしまった。

 と言うことはあのカタコトはわざとってことだよね⋯⋯?


「この後は、優希くんは予定とかはあるんですか?」

「お父さん達とご飯食べに行く事になってるので、今日はこのまま帰るつもりです!」

「じゃあまた今度、一緒に配信やろうね!」

「私ともです!」

「はい!」


 そして華さんとエミリーさんと分かれた僕はお父さん達に合流して帰ることに。


「よう、優希お疲れ」

「優希ちゃん、お疲れ様」

「ありがとう! でもお母さん⋯⋯暴走しすぎだよ?」

「母さんって事を言えないから本当にきつかったんだからな⋯⋯」

「いやー、ついついテンション上がっちゃいました⋯⋯」

「何とかなったから良いけどな⋯⋯」


 そんな話をしていると——


「ん?電話なんて珍しい⋯⋯あれ、由良さん?」

「出てあげたほうがいいと思うぞ」

「そうね、急用かもしれないし」


「じゃあ出るから少し静かにしててね!」


 そう言って僕は電話に出た。


「もしもし、由良さんどうかしましたか?」

「あっ、優希くんよかった!

 お願いがちょっとあって⋯⋯」

「僕で良ければ聞きますよ!」


「実はね、お姉ちゃんが高熱出しちゃったみたいなんだけど、私今仕事の関係で名古屋にいないんだ⋯⋯だからお姉ちゃんの様子ちょっと見に行ってあげてもらえないかなって⋯⋯」

「でも鍵の問題とかは⋯⋯」

「それなら大丈夫、うち電子ロックだから家の前着いたら電話してくれたら、カメラで確認して解錠するから!その後は自動で鍵してくれるからそこも問題無いよ!」


「そう言う事なら、前に看病してもらいましたし!」

「一応食べ物とかは買って置いてあるからお姉ちゃんが無事かだけ確認してくれれば大丈夫だからね!」

「分かりました!」


 そして電話を切ると、お父さんが言った。


「って事は遊佐さんの家向かえばいいんだな?」

「ごめんね、お父さん」

「気にするな、遊佐さん最近働き詰めだったみたいだし、労ってあげてくれ」

「うふふ、優希ちゃんに看病だなんて羨ましい」


 そして由良さんに送ってもらった住所の場所までお父さんに送ってもらう事になった。

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