164:ふわちゃんがんばる!

 私は今、久しぶりに料理をしている。


 何で今更⋯⋯と思う人もいるかもしれないけれど、流石に優希くんに情けない姿は見せたく無いから、レシピを色々調べたりしながら、私は調理を繰り返していた。


「流石に何度も作って食べてると、味が分からなくなってくる⋯⋯どうしよう」


 私は考えた結果、とある人を呼ぶ事にした。

 家も近いし、きっと来てくれるはず。



「それで、ぼくが呼ばれたってわけなの?」

「うん、急にごめんね綾乃ちゃん」


 私は手を合わせて綾乃ちゃんに一言謝ると、綾乃ちゃんは笑顔で答えた。


「華の手料理が食べられるならいつでも行くの、気にしないでいいの」

「そう言ってくれると凄く助かります⋯⋯」


「それで、華は何を作ったの?」

「今日は何種類か作ったんですけど、自分で何度も食べてると味がわからなくなっちゃって⋯⋯」


 そう言いながら私は綾乃ちゃんに今日作ったデザートを持って行った。


 1個1個は小さいサイズにしてみたとは言え、六種類もあると流石に食べてるとチョコ自体に飽きが来てしまうのもあって、食べて判断してもらえるのは非常に有り難い。


「ほうほう、これがゆかちゃんにあげる為のチョコの試作品⋯⋯どれも美味しそうなの」

「一応、トリュフ、生チョコ、アーモンドチョコ、ガトーショコラ、ブラウニー、ムースの六種類を用意してみたんですけど、どれが一番美味しいか判断してもらえると嬉しいです」


「それなら早速いただくの。

 いただきますなの」


 そう言って、綾乃ちゃんはチョコレートをパクパクと食べ始めた。


「トリュフはココアの苦味との相性がいい感じで美味しいの。

 生チョコは美味しいけど、少しくどさを感じるから作るならビターチョコを混ぜるといいかもなの。

 アーモンドチョコは美味しいけど、変わり映えしないから、他のやつの方が良いと思うの」


 しっかりと食べた上で判断してくれているので私もとても参考になる。


「ちょっと飲み物貰ってもいいの?」

「はい、紅茶ですよ」

「わーい! ぼく紅茶大好きなのー!」


 甘い物に合わせて、紅茶を淹れてあげるとなのちゃんは美味しそうに紅茶を飲んだ。


「甘い物を食べた後だからお口の中がさっぱりしたの。 ありがとうなの」

「どういたしまして、それじゃ次からはスプーンを使って食べてみて下さいね」

「いただきますなの!

 はむっ、うん、しっかり甘くて、苦味もあって、これは生クリームと合わせても美味しく食べられると思うの。

 ガトーショコラはかなりありなの。

 むっ、ブラウニーは美味しいけどボロボロ崩れるのが難点なの⋯⋯」


 それでも美味しそうに食べてくれる綾乃ちゃん。

 良かった、少なくとも全部変な味にはなってないみたい。

 最近全然料理してなかったから不安だったけど、とりあえず安心。


「そう言えばもう一つ残ってたの⋯⋯結構お腹いっぱいだけど、華が作ってくれたものを残すのはもったいないの。

 ぱくっ⋯⋯これ一番美味いの」

「えっ?」

「華! これ一番おいしいの!

 プルプルで、食感もいいし、上にかかったココアパウダーとクリーミーなムースの相性が半端じゃないの!!

 生クリーム付けて食べてもこれは絶対に美味しいやつなの!!」

「じゃあ当日はこれで行った方がいいかな?」

「うーん、そう言われると他も美味しかったし、迷うの⋯⋯」

「それじゃあ⋯⋯うん、決めた」


 綾乃ちゃんの反応を見て、私は何を作るかを決めた。

 これで絶対に優希くんを満足させてみせるんだ!


「決まったみたいで何よりなの。

 それで、華には聞きたい事があるの」

「どうかしたの?綾乃ちゃん」

「冬コミの戦利品はどうだったのか、感想を聞いてなかったの」

「どれも最高でしたぁ⋯⋯」

「ちなみにどれが一番お気に入りだったの?」

「うーん、個人的には⋯⋯ゆかちゃんが現実に現れたって設定のアレですね」

「あー、ふわりが大暴走したあれなの?」

「そうそう! それです!」

「ゆかちゃんが可愛いのは分かるけど、リアルであの本みたいな事したらダメだから、気をつけて欲しいの」

「あの、綾乃ちゃんまで私を何だと思ってるんですか」

「だって、普段の言動見てたら不安になるってものなの」

「だってゆかちゃんがあんなに可愛いんですよ? 仕方なくないですか?」

「⋯⋯そう言われるとそうなの」

「そう言えば私、ゆかちゃんに着て欲しい衣装あるんですよね」

「ほう、詳しく聞かせるの」


「女の子用の水着なんですけどね、ワンピース型の水着なんか着て恥ずかしがってる所とか見てみたくないですか?」

「華、天才なの⋯⋯ぼくも見てみたいの⋯⋯」

「でも、リアルで着てもらうのは無理だと思うの」

「でしょうね⋯⋯」


 そのあとも二人でゆかちゃん談義をしていると、綾乃ちゃんの配信の時間も近くなってきたので綾乃ちゃんは家へと帰って行った。


 それからもちょこちょこと練習をしては綾乃ちゃんに食べて貰いながら、その日が来るのを楽しみにしていた。

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