157:実家から帰宅!/ゆるママのお正月

 日が変わり、早いもので名古屋に帰る日になってしまった。


 どうしてまったり出来る時間ってあっという間に過ぎて行っちゃうんだろ。


「優希ちゃん、忘れ物は無い?」

「うん、大丈夫!」

「優希、何か分からない所とかあったら気軽に連絡してくれていいからな」


 玄関で荷物を持って家を出ようとするとお母さんとお父さんがそう言った。


「うん、お父さんありがとう、何かあったらその時は連絡するね」

「あっ、優希ちゃん、お昼ご飯を食べるのを忘れているわね!」

「いや、お母さん朝ごはんつい三十分前に食べたんだけど⋯⋯」

「母さん、優希が二度と帰って来ない訳じゃ無いんだから、な?」


「だって、寂しいんですもん⋯⋯」

「また連休の時にでも帰って来るから、ね?」

「うぅ、分かりましたぁ⋯⋯優斗さんを女装させながら待ってます⋯⋯」

「しれっと俺を巻き込まないでくれないか!?」

「あはは、それじゃ楽しみに待ってるね。

 それじゃ行ってきます!」


「あぁ、いってらっしゃい。

 気を付けてな。

 それと楽しみにしなくていいからな?」

「優希ちゃん、怪しいお姉さんに着いていっちゃだめですからね!」

「怪しいお姉さんって何!?」


 そんな会話を最後に僕は名古屋へ向かう為にバス停へと歩き出した。


 今日はお父さんは予定があるらしくて、送っていけなくて悪い、なんて言っていたけど気にしなくていいのにね。


 それからの移動は特に問題無く、無事に家に到着。



 家に到着した僕がまず最初にしたのは部屋の簡単な掃除。


 少しの間部屋を留守にしていたせいか少し埃っぽくなっているから、面倒だけどぱぱっと終わらせたよ。


 それから家でだらんとしてると、いつまで経っても残ってる課題に手をつけられなさそうだから気力を振り絞って課題を終わらせる事にした。


 それから大体二時間くらい集中していた僕はふと、スマホの着信音が鳴っている事に気が付いた。


「ん? 誰だろ⋯⋯って橋本さん?」


 通話の相手はGloryCuteの橋本さん。

 最近は特に連絡も無かったけど、何かあったのかな?


「もしもし、姫村です」

『もしもし、GloryCuteの橋本です。

 優希ちゃんの携帯で間違いは無かったかしら?』


「はい、合ってますよ!」

『良かった、ちょっとお願いがあるのだけど、今口頭で少し説明させて貰ってもいいかしら? 時間が無いなら改めて連絡させてもらうから安心して頂戴ね』


「今で大丈夫ですよ!」

『助かるわぁ、それで本題なんだけど、うちとコラボして服を出してみないかしら?』


 なんとまさかのリアルなコラボのお誘いだった。


「えっ? 僕が、ですか!?」

『前、二回ほど出て貰ったと思うのだけど、未だに再登場は無いのかってお便りを貰うくらいなのよ、だからうちとしてもまた出て欲しいの。

 コラボで公式衣装を出して欲しいって声もあるから、どうせなら一緒にやってしまおうと思ったのよ』


 確かにそう言われると、ファッション誌に出た後に急に登録者が伸びたりしたし、そうなのかも。


「ぼ、僕なんかで良ければ⋯⋯」

『あら、嬉しいわ。

 細かい打ち合わせなんかは薫ちゃんの仕事が落ち着き次第始める予定だから、また詳細は決まり次第連絡の方させてもらうわね』


「了解しました!」

『それじゃ、アタシはこれで失礼するわね。

 また会う時が楽しみだわ』


 そう言うと、橋本さんは通話を切った。


「ま、またコラボ⋯⋯僕なんかで本当にいいのかな⋯⋯?」


 認められている事が嬉しい反面、少し不安もある僕だった。



 一日に優希くんと別れた私は、由良と一緒に実家へ帰省していた。


 実家ではお父さんやお母さんだけでなく親戚の人達が揃っていて、みんなで新年を祝ったり、わいわいと会話を楽しんでいた。


「ねぇ、薫、そろそろ浮いた話とかないの?」

「浮いた話かぁ⋯⋯」


 久しぶりにお酒を少し飲みながらお母さんと話していると、最近の恋愛話について聞かれた私は返事に困った。


「例えば好きな子がいるとか、気になる人がいるとか、なんかないの?」

「すっ、好きな子⋯⋯」


 お母さんにそう言われた私、頭に浮かんでくるのは優希くんの顔。


「気になる子は、いるけど⋯⋯」

「なぁに、いるんじゃない! 教えなさいよー」

「だ、だめ!」

「なんでよー?」


 ジト目で私を見つめるお母さん。


「あの子まだ未成年、だし」

「薫、犯罪だけは勘弁して頂戴よ?」


 冗談混じりの軽いノリでお母さんが言うけど、流石の私も分かってるよそれくらいは。


「大丈夫! それに来年十八歳になるって言ってたから⋯⋯」

「ふーん、あんまり男の話をしなかったあの薫がねぇ」


 ちょっとニヤニヤしながらそう呟いたお母さん、本当に楽しそうな顔してるね。


「まぁ、いいわ。

 報告出来るようになったら教えなさいよ?」

「う、うん」


 それ以前にお付き合い出来るかどうかも私には分からないんだけど⋯⋯


「なら、お見合いの話は断っておいた方が良さそうね」

「えっ?」


 今唐突に爆弾発言が聞こえた気がするんだけど!?


「えっ? お、お見合い?」

「あぁ、心配しないでいいわよ?

 薫がもし相手がいないならって相手には言ってあるから」


「(あ、危なかった⋯⋯)」

「それに由良も今はまだ早いって言ってたし、とりあえずお見合いはしたくなったら教えて頂戴。

 その時はセッティングするから」


「うん、分かった」

「ま、頑張ってその好きな子を捕まえられると良いわね」


 お母さんは笑顔で私を応援するようにそう言った。


 そして二日も同じように実家で久しぶりに会う親戚の仲の良い従姉妹達と話をしていた。


 するとスマホに一件の通知が。


「(ゆ、優希くんがシュバルツさんとコラボ配信!? み、見たい⋯⋯!)」


 だけどこの状況で配信を見るのは流石に厳しいものがあったので私は泣く泣く諦める事に。


 後でアーカイブ見ないと⋯⋯


 その後は、やらないといけない仕事もあったので、三日に名古屋の家に戻って来ていた。


 そして四日の夕方である今、私は先輩に連絡を貰い、先輩と通話していた。


「もしもし、薫です。

 先輩、どうかしましたか?」

『あら、薫ちゃん急にごめんなさいね』


「大丈夫ですよ、丁度一息入れようとしてた所ですし」

『そう言って貰えると助かるわぁ。

 それで本題なのだけど、優希ちゃんとのコラボをする事になったの』


「そうなんですか!?

 ⋯⋯と言う事は、まさか?」

『そう、そのまさかよ。

 薫ちゃんには優希ちゃんに似合うと思う服のデザインをお願いしたいの』


「なるほど⋯⋯ちなみに期限は?」

『急ぎじゃないから焦らなくて大丈夫よ。

 今やってる仕事が片付いたら連絡をくれれば良いわ』


「うーん、今やってる仕事がかなり長期の仕事になるので、少しずつで良ければ並行して進めて行っても大丈夫ですけど⋯⋯」

『あら、大丈夫なの?』


「今もそんなに詰め込んでやってる訳では無いので、大丈夫ですよ」

『それじゃあお言葉に甘えちゃおうかしら』


 優希くん絡みの仕事なら、受けない訳にはいかないよね。


「分かりました、詳細とか決まったらまた教えて下さい」

『OKよん、それじゃまた近いうちに連絡するわね』

「はい、待ってますね」


 先輩との通話が終わった私は、少しスケジュールがギリギリになるなぁと思いながら作業を再開した。

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