156:親戚の集まりってなんだか居心地悪いよね

 昨日は倒れたお父さん達に布団をかけて僕も眠っちゃったけど、大丈夫だったかな?


 リビングに行ってみると少し眠そうな顔をしたお母さんとお父さんがいた。


「お父さん、お母さんおはよう⋯⋯」

「おぉ、優希⋯⋯おはよう⋯⋯」

「優希ちゃんおはようございます⋯⋯ママって言ってくれてもいいんですよ⋯⋯?」


 朝からいきなり飛ばしてるお母さんだけどそれ言っちゃうと昨日みたいになりそうだから却下だね。


「お母さん、昨日それで倒れたのに何を言ってるの⋯⋯」

「だって女の子の格好しながら言ってる優希ちゃんが可愛かったんですもの⋯⋯」

「あれは卑怯だと思うぞ」

「お父さんまで!」

「実際息子に言う事じゃないのは分かってるけど、入り込んでたのもあったのか凄く可愛く見えたもんは仕方ないだろ⋯⋯

 あーそうだ、今日は父さんの家に行くんだが、他の親戚も来るのに女の子の格好は流石にまずいと思うんだ。

 母さん、親戚の子達の性癖が歪みかねないから、服を返してやってくれ⋯⋯」

「うぅ⋯⋯もっと見てたかったんですけど仕方ないですね⋯⋯」


「お母さん? 服は捨てたって⋯⋯」

「流石に勝手には捨てないですよ⋯⋯ただ嘘吐いてただけです⋯⋯」

「そ、そうなんだ⋯⋯酷いよお母さん」

「もうしないので許してください⋯⋯」

「う、うん、今回だけだよ?」

「やっぱり優希ちゃんは優しいですね!

 でもたまには可愛い優希ちゃんを見せて欲しいです⋯⋯」

「本当に反省してるのかなお母さんは!?」

「してますよ! これからは優斗さんに着せる事にしましたから!

 だからたまにでいいんです! コスプレしてる写真とかでもいいので!」

「えっ」


 お父さんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてお母さんを見ていた。


「えっ?」


 お父さんはもう一度大事な事だから二度、と言わんばかりにお母さんに顔を向けて聞き返した。


「私、気付いたんです。

 昨日言っていた新しいVtuberの姿の優斗さんを調べてたんですけど、いけるな、って」

「何がいけるんだ母さん!? というか防音してるはずの俺の部屋の音をどうやって!?」

「どうやって、って言われても普通に入りましたけど⋯⋯

 それに優斗さんも、顔立ちはかなり整っていますし、女の子の声も出せる訳じゃないですか。

 じゃあ優希ちゃんだけ着せるのも不公平だなって」

「いやそれ以前に女装させるのが間違いなんだが!?」


 お母さんは突然とんでも無い事を言い出して、お父さんを言いくるめようとしている。

 ぼ、僕は関係ないからね?

 お父さん、そんな助けを求めるような顔をしても無駄だからね?


「遠慮しなくてもいいんですよ?

 私が可愛くしてあげますから⋯⋯ね?」

「ゆ、優希からも何とか言ってやってくれ!」

「ぼ、僕からはなんとも⋯⋯」

「折角ですし、白姫ゆりの公式衣装でも作ってもらいましょうか?」

「や、やめてくれ!!」

「お父さん、頑張って!」

「優希いいいいいいいいいいいい!!!!」


 そんな会話が朝から繰り広げられていたけれど、その後すぐに朝ごはんを食べ、少ししたらお爺ちゃんの家へ向かう事になった。


 お爺ちゃんの家までは特に何も起こらず無事に到着したよ。


 でも今日はお正月と言うこともあり、普段会わない親戚の人達が集まっている。


「おぉ、優斗に優希、希美さんあけましておめでとう」

「お爺ちゃんあけましておめでとう!」

「父さんあけましておめでとう」

「お義父さん、あけましておめでとうございます」


 僕達が部屋に入るとお爺ちゃん含め親戚のおじさん達がお酒を飲み盛り上がっていた。


 お婆ちゃんを含めた女性陣は今は別行動をしているみたい。


「おぉ、優希くんか久しぶりだなー」

「ゆきにぃあけおめー!」

「ゆきにぃだーあそぼー!」


 親戚のおじさんとその子どもである双子の姉妹が僕に挨拶をしてきた。


 双子の姉妹は僕の顔を見るとまるでロケットのようにダッシュしてきて構って構ってとくっついてくる。


 と言ってもまだ4歳くらいの子なので僕でも相手出来るけどね。


「おじさん達、お久しぶりです!」

「ゆきにぃー!ゆあとあそぼー!」

「だーめー!ゆきにぃはゆいとあそぶのー!」

「はは、優希くん、うちの子達がすまないね」

「いいんですよ、子どもはこれくらい元気じゃないと」

「うー! ぼくもゆきにぃとあそぶのー!」

「ゆきにぃはわたさないのー!」

「喧嘩したらダメだよ?

 一緒に遊ぼう、ね?」

「わかったのー」

「ゆきにぃがそういうなら⋯⋯」


 僕がそう言いながら二人の頭を撫でてあげると渋々といった感じではあるけど納得してくれた様子。


「うふふ、優希ちゃんモテモテね」

「あはは、子どもにモテても意味ないよ⋯⋯」


 僕はそう言いながら他の部屋に双子ちゃんのゆあちゃんとゆいちゃんを連れていき、一緒におままごとをした。


 何故か二人が僕をママ役にしたがっていたのは何でだろう?


 一時間ほど付き合ってあげると疲れたのか、とても眠そうな顔をし始めた。


「眠くなっちゃった?」

「おねむじゃないよ⋯⋯」

「ゆきにぃともっとあそぶの⋯⋯」


 二人は否定しているけど眠気には勝てなかったのか僕の膝の上で眠ってしまった。


「ちょ、ちょっと待って!」

「すぅ⋯⋯」

「んぅ⋯⋯」


 気持ち良さそうな顔で二人は寝息を立てているけど僕はそのせいでこの場から動けなくなってしまった。


「ど、どうしよ⋯⋯」


 僕が困っていると——


「静かになったと思ったら寝ちゃったのね」

「あっ、お母さん」

「優希ちゃん、とりあえずお布団持ってくるから待っててね」

「うん、ありがとう、お母さん」


 そしてお母さんが布団を持って来てくれたから、二人を布団に寝かせてあげ、親戚のおじさん達のいる部屋へ戻っていった。



「おぉ、優希くんおかえり。

 うちのゆあとゆいがすまないな」

「大丈夫ですよ、二人とも遊び疲れたのか今は眠っちゃいました」

「うちの子達ったら本当に優希くんの事大好きなんだから⋯⋯(普通の男に興味持てなくなったらどうしようかしら⋯⋯)」


「えっ? 何か言いました?」

「い、いえっ、気のせいよ?」


 一瞬おばさんがボソッと何か言っていたような気がするけど勘違いだったみたい。


「あぁそうだ、優希くんこれ、お年玉だよ」

「そういえば俺も渡してなかったなーはいよー」

「ワシもまだじゃったな、ほれ、大事に使うんじゃよ」

「はい、優希、大事に使うんだよ?」


 話の流れを変えるようにいきなりおじさん達とお爺ちゃんからお年玉を渡された。


「え、ぼ、僕今バイトとかもしてるし大丈夫ですよ!?」

「ええからええから、受け取っとき」

「まだ成人もしてないんだ、受け取っていいんだよ」

「ワシの頃は大学生までなら普通に渡しとったしのう」

「僕も大学生までは貰ってたからね、優希、素直に受け取っておくといいよ」


「う、うん⋯⋯お爺ちゃんにおじさん達もありがとうございます!」

「ほっほっほ、ええんじゃよ」

「構わないさ、後でうちの娘達が来るから相手してやってくれるか?」

「そんなことで良ければ⋯⋯」


 そしておじさんの言う通り女性陣が帰ってくるとおじさんの娘さんも一緒にやって来て、一日中おままごとをする事になった。


 途中でゆあちゃんとゆいちゃんも起きてきて、帰る時間になるまでずっと相手をしていたんだけど、僕は家に着く頃にはへとへとになってしまった。


 そして何故かゆあちゃんとゆいちゃん以外の親戚の子も何故か僕にママ役をやらせようとするのは本当に何でだったんだろう。

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