152:自然にイチャつく二人
無事にお父さんと合流した僕達はフードコートでお昼ご飯を済ませる事にした。
少し早めの時間だったけど、これから混雑する事を考えたら早めの方が良かったりするんだよね。
ここのフードコートは結構いいお店が揃っていて、有名チェーンのうどん屋さん、牛丼屋、ハンバーガー屋、あとは少しマイナーどころが入っている感じ。
何か食べたいけど何にしようか迷った時はここにくればほぼほぼ食べたい物が見つかると言ってもいいくらい種類やジャンルが多いのが嬉しいね。
そんな沢山のお店の中、僕○亀のうどんにしたよ。
地味に好きなんだよね、ここのかけうどん。
付け合わせに野菜天とかしわ天をトッピング、このトッピングを自由に取れるって言うのがまた僕好みだったり。
お父さんは中華料理のお店で中華丼とからあげを、お母さんはローストビーフ丼を選択。
「やっぱり、ローストビーフは自分で作った方が美味しいですね⋯⋯」
「そりゃ、勝てるわけないさ⋯⋯」
「だってお母さんのご飯美味しいもんね⋯⋯」
お母さんがローストビーフ丼を食べながら微妙そうな顔をして言った。
勿論周りには配慮して凄く小さな声で。
「ん、結構この中華丼いけるな」
「へぇ、そうなんですか? ⋯⋯本当ですね」
「ちょっ! 俺の中華丼!」
「一口くらいいいじゃないですか、減るもんじゃないですし」
「減ってるんだよなぁ⋯⋯」
どこのカップルかな?
「お父さんもお母さんも変わらないね⋯⋯」
「え? 何が?」
「何がですか?」
「自然にイチャつき始めるとこ」
「俺またやってた?」
「私も無意識でした」
どうやら完全に無意識だったみたい。
逆に凄いと思うな僕は。
「ま、まぁそれは置いておいてだな、優希は何を買ってきたんだ?」
「急に話を逸らしたね⋯⋯まぁいいけど。
僕が買ってきたのはゲームの福袋だね」
「ゲームの福袋か、配信のネタにもなるし悪くないな」
配信者の目線でついつい見ちゃう辺り、やっぱりお父さんはその道でやってる人なんだなって実感するよね。
「そう言うお父さんは?」
「俺か? 俺はVR便利グッズ福袋って言う面白そうなものを見つけてしまったからそれを買ってきた」
「便利グッズ?」
「わからんからこそ面白いって思わないか? どんな不良在庫があるのか、それとも神アイテムが入ってるのかわからない、だからこそだな」
嬉々として語るお父さん、結構子供っぽいところがあるよね。
「お父さんそう言うの好きだね?」
「優斗さんは昔からそう言うの好きですよね、ゲームでも逆転目指してやられる事多いですけど」
「それは言わないでくれ⋯⋯」
お父さんはちょっと悲しそうな顔をしながら言った。
「それで、優斗さんは優希ちゃんとどんな配信をするんですか?」
お母さんがお父さんにそう尋ねた。
「んーそうだな、今日の配信は福袋開封でもやってみるか?」
「うん、それいいかも。
動画でやってるの見てちょっとやってみたかったんだよね」
「私も良く見ますよ、福袋の開封動画。
ついつい見ちゃうんですよね」
結構お父さんも乗り気になっているのもあって今回の配信は福袋の開封配信をやる事になった。
「あっ、そうだ優希。
念の為に手袋を買っておいた方がいいぞ」
「手袋? なんで?」
「あぁそうか、優希はコスプレした姿を出してるから今更か......少なくとも俺は手袋しないとリアルが絡む配信出来ないんだよな」
「あー、企業勢ってイメージ守るからその関係?」
「そう言う事だな。
まぁ俺は過去にも何度かやってるからあんまり言われないが、他社だと現実を映すのは完全にNGとする企業もあるらしい」
「そうなんだ⋯⋯でもそうなるとネタ考えるの大変そうだね」
「そういった企業は企画を上手いこと考えて飽きが来ないように努力してるらしいな」
企業勢はしがらみも多くてなんだか大変そう。
そう言う意味では個人勢で良かったな、なんて考えてしまった。
「ま、あんまり気にしすぎる事はないけどな」
「僕、意識した事無かったよ⋯⋯どちらかと言えばYotuberの形態の一つみたいなイメージだったから」
「まぁ、大体合ってると思うけどな」
そんな話をしてる間に、周りは混み始めて来た。
「ん、邪魔になりそうだし、そろそろ移動するか。 他に買いたい物とかあるか?」
「んー僕はさっき色々見てきたから大丈夫かな?」
「私もある程度見てきましたし、大丈夫ですよ」
「んじゃ食料品見たら帰るか?」
「うん、それで良いと思う!」
「そうしましょうか」
その後は食料品売り場や飲食物を扱っているお店の福袋を見て帰ったよ。
ついつい色々買いすぎちゃったのはここだけの話。
♢
無事家に到着した僕達は配信の準備をしていた。
「お父さん、カメラの位置ってこれくらいで大丈夫?」
「うーん、もう少し高くて良いと思うぞ」
「これくらい?」
「んー、OK、いいと思う」
カメラの位置を調整して、モニターなどもセット完了。
僕の白姫ゆかのデータもクラウドからダウンロードして来てるから問題無し。
「優希の準備はOKか?」
「うん、僕は大丈夫。
マイク、トラッカー、ちゃんと着けてるよ」
「よし、それじゃやるか」
「うん!」
お父さんと初めてのコラボ配信、ちょっと緊張しちゃうね。
「すぅー⋯⋯」
僕は、大きく息を吸い精神を集中させた。
いくら気楽だとしてもリスナーの殆どはお父さんのリスナーさんだろうし今はお父さんの息子ってだけじゃなく——
「それじゃ、開始するぞー」
『うん!』
白姫ゆかとして知って貰わないと。
「皆さんこんばんは、閃光のシュバルツでございます」
『リス兄、リス姉こんばんは!
白姫ゆかだよ!』
二人の挨拶で新年最初の配信が始まった。
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