151:福袋を買おう!
開店を待っていた僕達が話しながら暇を潰していると気が付けば十時になり、とうとう営業が始まった。
沢山の人が集まってはいるけど、歩くスペースが無いほどではないし、走る人の姿も見かけられないので、割とスムーズに進む事が出来た。
「それじゃ優希、また後で連絡くれよ!
今日は人が多いから待ち合わせ場所は分かりやすい場所だと助かる」
「うん!」
「優斗さんも気を付けてくださいねー
それじゃ優希ちゃん、私もお目当ての場所に行ってくるので気を付けてくださいね?
合流したらお昼を食べに行くので、食べすぎには注意ですよ?」
「あはは、食べ物は買わないよ⋯⋯多分」
別れ際に注意を受けたけど、そんなに買わないと思う⋯⋯うん。
ちなみにお父さんはVR機器を扱っているお店の福袋を、お母さんは服関連の福袋を買いに行くって言っていたよ。
本当は一緒に行動するべきなんだろうけど、流石に一緒に一つずつ廻ってると売り切れになっちゃうかもしれないから仕方ないよね。
そしてお父さんとお母さんと別れた僕が最初に向かったのはゲームの売っている家電量販店。
そこでは毎年ゲームの福袋を販売しているから、ちょっとした企画に使えそう。
よくある福袋から出たゲーム全部クリアする、みたいなやつだね。
そんな感じの事を考えながら福袋を購入する為に目的の場所目指して歩いていく。
売り場は前来た時から変わってないみたいで良かった。
どこに福袋が置いてあるかなーと思いながら探していると、数人の人がどれにしようか迷いながら唸っている所を発見。
価格の違う福袋が四種類存在しているみたいで、五千円、一万円、二万円、三万円と別れている様子。
「ここは勿論、三万円だよね⋯⋯」
配信や動画に使う物だから、必要経費みたいな物だし、出し惜しみは無しだね。
僕は福袋を手に持ってレジに向かおうとすると——
「うーん、イヤホンの福袋か⋯⋯最近イヤホン調子悪いしこれを機に買い換えるか?
ランニング中音無しは結構厳しい物があるんだよなぁ」
なんと裕翔がそこにいた。
僕と裕翔は小学生からの付き合いっていうのもあってお正月は帰省していても何ら不思議はなかったりするんだけど、まさか来るお店まで一緒になるとは思わなかった。
「裕翔ーあけおめー!」
「ん? あけおめ? この声は⋯⋯えっ、誰?」
「裕翔酷くない?」
「????」
僕がそう声をかけると何やら様子がおかしく、裕翔は必死に僕が誰か脳内で考えてる様子。
いやでも流石に分かる⋯⋯よね?
「ゆ、優希なの⋯⋯か?」
「それ以外誰がいるのさー」
「いやその、格好⋯⋯」
「格好? ⋯⋯あっ」
「いやな、優希がそっちの趣味があったなら俺は否定しないし、何なら下手な女の子より可愛いって言うか⋯⋯」
裕翔が何か優しい目をしながらそう言っているけれど、別に僕は女装が趣味じゃない、趣味じゃないからね!?
「裕翔、勘違いしてると思うけど、趣味ではないよ!?」
「じゃあなんでそんな格好⋯⋯」
うん、そうなるよね。
「裕翔ってさ、家に帰ってみたら自分の男物の服が全部女物になってた事、ある?」
「なんかすまんかった」
「分かってくれたらいいよ⋯⋯」
「まぁ、でもさ正直似合ってるわ。
優希のお母さんはセンスあるな」
今の僕の着ている服は、欧米系アウターって言うってお母さんが言ってたけど、全体的にブラウンで、少しスカートが短めになっていて、折り襟の部分はもこもこでクリームのような色になっていて、とても暖かい。
スカートが短い部分はタイツでカバーしてるんだけど、これが無いと寒くて仕方がなかったから僕は我慢してタイツを履いている。
「あ、ありがと⋯⋯」
「たださ優希、見た目完全に女の子だけど、やっぱり性別間違えてない? 実は女の子だったとかさ」
「⋯⋯裕翔?」
一体何を言っているのかな裕翔ってば。
僕はじーっとハイライトを消したような目をして裕翔を見つめた。
「ひぇっ、す、すまん⋯⋯」
「まぁ、もう慣れたけど⋯⋯」
「慣れていい物なのかわかんないし、複雑だな⋯⋯」
「本当にね⋯⋯」
僕は遠い目をする事しか出来なかった。
「それで、裕翔はどうしてここに?」
「あぁ、俺はイヤホンが欲しくてな。
自主トレでランニングとかしてるんだけど、イヤホンで音楽聴いたりしながらじゃないと気分的に落ち着かなくてさ」
「なるほどねー、それで良いのは見つかったの?」
「うーん、このオーディオテ○ニカのやつかソ○ーか、ケン○ッドあたりで迷ってるんだよな」
「確かにそのあたりならハズレはそうそうないかな?」
「あとはデザインなんだが、福袋だからな。
運が良ければ高額商品が安く手に入るかもしれないし、メーカーで迷ってる感じだな」
「僕はオーディオテ○ニカを良く使ってるよ?」
「うーむ、なら俺もそうしてみるか」
「んじゃ、一緒にレジ行く?」
「おう!」
そしてお互い買う商品を手に持ち、レジへ行きお会計を済ませる。
そしてお店の外に出て、マレーラの中にあるベンチに腰掛け少し裕翔と話をした。
「それで、優希はそれ何買ったんだ?」
「僕? これはゲームの福袋だね。
三万円の福袋だから開封するのもちょっと楽しみかも」
「配信と言うか動画用か」
「そうそう!」
「楽しみに待ってるわ」
「ちゃ、ちゃんと見てるの?」
「当たり前だろ?」
「う、うん、なんて言うかありがと」
少し気恥ずかしいけど、裕翔ならまぁ、いいかな。
その後もコミケの時の話とかをしていると突然、裕翔がぼそりと僕に言い始めた。
「な、なぁ優希」
「どうしたの裕翔?」
「なんか注目されてないか、俺たち」
「えっ?」
裕翔に言われて周りを気にしてみると確かに妙に視線を感じる。
「あー、そうか。
今の優希、見た目が完全に美少女だから、カップルに見られたのか」
「へっ?」
「だって周りの声に耳を澄ませると、あの子可愛いとか聞こえてきたし、あれ彼女かな?とか言ってる奴もいるぞ」
「僕が裕翔の彼女⋯⋯ないなぁ」
「気楽に話せるけど、そう言うのとは違うんだよな」
「そうそう!」
だけど、裕翔は忘れていた。
白姫ゆかにガチ恋しかけていたと言う事を。
その後は裕翔もまだ見たい物があると言う事で解散すると、僕はお母さんに呼び出された。
お店の指定もされたから勢いで買いすぎちゃったのかな?
とりあえず指定のお店に行くと、大量の荷物を持ったお母さんが。
「優希ちゃんごめんなさいね」
「ううん、大丈夫だよ!」
そしてお店の人から僕は荷物を受け取った。
「良い娘さんですね」
「うふふ、自慢の息子なんです」
「えっ?」
店員さんとお母さんが何か最後に話していたけど、僕には聞こえなかった。
お店を出た僕は、お母さんと一緒に車に荷物を置きに行き、そのままお父さんと合流してご飯を食べに行く事になった。
ちなみにゲームセンターは人が多すぎてまともに遊べなさそうだったからスルーしたよ。
♢
「店長、息子って女の子を指す言葉でしたっけ?」
「何言ってるのあなた、大丈夫?」
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