150:何かがおかしいお買い物準備
薫さん達が帰った後、夜ご飯を食べた僕は思っていたよりも疲れていたのかぐっすりと眠り、気が付けば次の日の朝になっていた。
普段よりも安心して眠れたのは実家だからなのかも。
起きてリビングへ行くとお母さんが既に起きていて朝ごはんを作っていた。
「お母さんおはよう」
「あら、優希ちゃんおはよう。
早起きなのは変わらないのね」
「最近ずっとこれくらいに起きる事が多かったから慣れちゃったのかも」
「早寝早起きが一番ですから、そのリズムを崩さないようにしないとですね?」
「うん!」
前に帰って来た時も同じくらいに起きていたせいか、お母さんにそう言われた。
でも、たまに夜更かししても同じくらいに起きちゃうあたり習慣になってるんだろうなぁ。
「母さんおはよう、おっ、優希ももう起きてたんだな」
「お父さんおはよう」
「あら、優斗さんおはようございます」
そして家族全員揃ったので皆と朝ごはんを食べ始めた。
「そうだ、優希。
今年もマレーラの初売りに行く予定なんだが、優希も一緒に行くか?」
ごはんを食べ終わったお父さんが僕にそう提案してきた。
今年はお小遣いに余裕もあるし、色々見てみるのもいいかも!
それに、久しぶりにゲームセンターに行ってみるのもいいかもしれないね。
ちなみにマレーラって言うのは僕達の住んでいる場所から車を十分ちょっと走らせた場所にある超大型のショッピングモール。
田舎にあるおかげなのかかなりの大きさを誇っていて、地元の中高生のお出かけスポットで、高校生ではアルバイトをする人も多いんだよ。
ちなみに数年前までは一日から営業してたんだけど、最近は元旦は休むお店も多くて、その流れに乗って営業は二日からになってるんだ。
「うん! もちろん行く!」
「あいよ! それじゃご飯食べたら早めにあっち行っておくか。
どうせ今年も人沢山来るだろうしな」
「ですね、去年も沢山でしたしその方がいいと思います」
そして食器を片付けた僕は着替えようと思って自分の部屋に入ろうとしたら——
「そうだ優希ちゃん、昨日言ってた服だけど、箪笥に仕舞ってあるから好きなの着ていいですからね」
「うん! お母さんありがとう!」
僕はどんな服があるのか少しワクワクしながら箪笥を開けた。
「⋯⋯?」
僕は目を疑った。
どうして女性物の服が入ってるんだろう。
しかも可愛い服。
「お母さん?」
「⋯⋯」
僕は気配を部屋の外から感じたので声をかけた。
「いるよね? そこに?」
「どうしてわかったんですか⋯⋯」
「な、なんとなく? 気配がしたと言うか⋯⋯」
「ニュータイプってやつですか」
「それで、あの服は?」
「似合うと思って買ってきたんですよ?」
お母さんは悪びれる様子も無く、そう言った。
「うん、僕は男だよ?
お母さんもそれは知ってるよね?」
「勿論です!
でも最近ゆかちゃんとしてコスプレとかいっぱいしてるらしいじゃないですか!
私だって可愛い格好をした優希ちゃんが見たいんですよ!!!!」
お母さんは凄い剣幕で僕にそう言った。
「良いですか!
優希ちゃんは自分が男だから似合わないって思ってるんでしょうけど、お母さんは昔から本当は着せたかったんですよ!
優斗さんに止められただけで!」
「えっ、そうだったの⋯⋯?」
も、もしかして、髪の毛伸ばした方が似合うって言ったのも⋯⋯?」
「そうですよ!
優希ちゃんの可愛さを活かす為です!
今の髪型なら男の子の服でも可愛さを感じられますし、私の目に狂いはありませんでした⋯⋯」
突然の暴露に僕は衝撃を受けた。
「そ、そんな⋯⋯」
「と言っても流石にロングヘアーだと違和感凄そうなので今の髪型にしてもらいましたけど、予想以上にしっくり来すぎてて⋯⋯
「うん、僕も否定しないよ。
この髪型に慣れすぎて変えると違和感しか無さそうだもん⋯⋯」
「ふふふ、そうでしょうそうでしょう?」
「ところでお母さん」
「はい、何ですか優希ちゃん」
「僕の男物の服は?」
「ありませんよ?」
「なんでさあああああああああ!!!!」
♢
「それで結局着たのか、凄いな優希は⋯⋯」
「ははは⋯⋯お父さん、僕もう慣れてきたよ⋯⋯」
「んんんんん!!
やっぱり似合いますねぇ!!!!」
僕は遠い目をしながらお父さんと話していたんだけど、お母さんのテンションがもうやばいくらい高い。
よっぽど着せたかったのかな。
喜んで貰えて嬉しいけど、複雑な気分だよ僕。
「そ、それで優希はいいのか?
その格好で出かけて」
「うん、もう諦めたよ。
せめてお母さん、帰りに着ていきたいから昨日着てきた服は洗わせてね? 捨てないでね?」
「⋯⋯はーい」
「何で嫌そうなの!?」
「ちょっと残念だなって⋯⋯」
「何が!?」
そんなこんなで僕達はマレーラに向けて出発した。
十分ほど移動すると大きな茶色の建物が見えて来た。
「久しぶりに来たなぁここ」
「優希はほぼ年一回しか来ないもんな今は」
「うん。
昔は良く遊びに行ってたんだけどね」
「だな、やっぱ中高生の遊び場みたいな所あるもんな」
「だね。
今年の初売りは何があるかなぁ、実況用にゲームの福袋とかもいいかなって僕は思ってるんだけど」
「それはありかもしれんな」
「私は優希ちゃんに似合いそうな服⋯⋯」
「も、もう服はいいから!
お母さんは自分の欲しい物を探した方がいいと僕は思うな!」
僕はそうお母さんにツッコミを入れると——
「優希ちゃんの服ですね」
「何で!?」
「ブレないな母さんは⋯⋯」
お母さんは何か考えるように俯くとボソッと言った。
「⋯⋯優斗さんもしてみます? 女装」
「え、遠慮しておきます⋯⋯」
「遠慮しなくても良いんですよ?」
お母さんは何か凄い迫力でお父さんにそう言った。
「ゆ、優希助けてくれ!」
「⋯⋯(にっこり)」
「優希いいいいいいいいい!!!!!!」
僕はお父さんに微笑むと目を逸らした。
そして寒い中待っているとそろそろ開店の時間が近付いて来た。
何を買おうか迷っちゃうね。
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