149:四面楚歌?
「優斗さん、優希ちゃん、待たせてごめんなさいね」
「いや、大丈夫だぞ。
俺も丁度優希と話したい事があったからな」
「それでお母さん、薫さん達に何見せてたの?」
僕は気になったのでお母さんにそう聞いた。
「あら? そう言えば言ってなかったわね
優希ちゃんの小さい頃のアルバムを見てたのよー」
「へっ? 小さい頃?」
何でそれを薫さん達に見せたんだろう?
嫌って訳じゃないけど、なんか恥ずかしい写真が無かったか、とか気になっちゃうんだけど、大丈夫だよね?
「そうなの、ねっ、良かったわよね?」
「ゆ、優希くんの小さい頃の写真凄く可愛いかったよ?」
「今も十分すぎるほど可愛いけど違った可愛さがあったよねー」
お母さんだけじゃなく薫さんに由良さんまでそんな風に言っている。
「か、可愛いって⋯⋯」
「男に言う台詞じゃないと思うんだが⋯⋯」
お父さんもそう言ってくれてる。
そうだそうだ! と心の中で思っていると——
「優斗さん、優希ちゃんを見て可愛く無い、なんて感想が言えるんですか!?」
お母さんが凄い勢いでそんな事を言い始めた。
僕が男だって事、お母さん忘れてない?
大丈夫?
「ぐっ⋯⋯優希⋯⋯すまん⋯⋯」
「お、お父さん!?」
何で!? 何で謝るの!?
「母さんの良いところを受け継いだ優希が可愛く無いわけが無かった⋯⋯母さん、俺が悪かった⋯⋯」
「分かればいいんです、ほら、お父さんも認めたんですよ、優希ちゃんは可愛いんです」
「うんうん、優希くんは可愛い」
「そうだね、お姉ちゃん。
優希くんは可愛い、世界の真理だよね」
味方はどうやらこの場にはいないらしい。
「むぅ⋯⋯皆して酷くないかな!?」
「褒めてるんですよ、優希ちゃん」
「そ、そうだよ優希くん!」
こ、これだと話が無限にループしていく気がするし、何か話を逸らさないと⋯⋯
「あっ、そ、そうだ。
お母さんは何で薫さんに会いたかったの?」
「何でって、それは母親として気になったからよー?」
「ど、どう言う事?」
僕には何を言っているのか良くわからなかった。
「自分の大事な息子がどんな人と交友関係を持っているのか気になるのは親として当然です!」
「そ、そうなの?」
「そうなんです!」
そ、そういうものなんだ⋯⋯
裕翔の所でもそうなのかな?
「ま、まぁ、なんだ。
遊佐さん達は母さんにとって問題なしだと思ったんだろう?」
「問題なしどころか近いものを感じましたよ」
お母さんが笑顔でそう答える。
「あっ、そう、そうなんだな⋯⋯」
お父さんは何か察したような顔をしていた。
一体何を察したんだろう?
「お父さん? どう言う事なの?」
「いずれ分かる⋯⋯」
「お父さん!?!?!?」
「お、お姉ちゃんよかった? ね?」
「う、うん?」
そんな話をした後は他愛もない話をして時間を潰していた。
お母さんが薫さん達と色々話をしているのは分かるんだけど、ガールズトークだから、なんて言って僕とお父さんをのけものにしてわいわい盛り上がってる。
まぁ、仲が良いのは良いこと⋯⋯だよね?
そして時が経ち、そろそろ夕食時になってきた頃——
「あっ、そうだ。
遊佐さん達はこの後予定とかはあるんですか?」
お父さんが薫さん達にふと思い出したかのような顔をして言った。
「一応夜に実家に顔を出す予定なので、もう少ししたら帰らせてもらおうかなと⋯⋯」
「あー、それなら無理に引き止めるのも失礼か。
それと、この後の仕事の話なんかは四日あたりにまた連絡するんでよろしくお願いします」
「はっ、はい!」
この時既に夕方だったのもあり、予定のある薫さんを引き止めるのもと言う事になり、薫さん達を見送る事になった。
「えっと、少しだけでしたけど、ありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
「いえいえー、気にしないで大丈夫。
またゆっくりお話ししたいですね!」
「そ、その時はよろしくお願いします!」
そして薫さんは車に乗り、エンジンをかけた。
そして窓ガラスを下げ⋯⋯
「それじゃ優希くん、またね?」
「優希くんまたねー!」
「はい! 薫さん、由良さん、気を付けて帰ってくださいね!」
「優希くんありがとう。
姫村さん、今日は改めてありがとうございました!
それと優希くんのお義母さん、優希くんの写真とても良かったです!」
「うふふ、それは良かった。
良かったら、また来てね」
「あぁ、またよかったら母さんの話に付き合ってやってくれると嬉しい」
「勿論です! それでは!」
「おやすみなさーい!」
薫さん、由良さんが最後にそう言うと、車は走り出し、僕は薫さんの車が見えなくなるまで手を振って見送った。
「それじゃ優希、寒いし家に入ろうか」
「うん!」
「優希ちゃん、今日はすき焼きですよー」
「えっ、すき焼き? やったー!」
そして僕は数ヶ月ぶりの実家での食事を楽しんだ。
♢
「そうだ、優希は今年はいつまで家にいる?」
ご飯を食べた後お父さんが僕にそう聞いてきた。
「うーん、三日か四日には帰ろうかなって思ってるけど⋯⋯」
「そうか、だったら明日一緒に配信しないか?」
突然お父さんがそう言い始めた。
「へっ?」
「いやもう優希って俺の息子である事は周知の事実な訳だよな」
「うん、それはそうだけど」
「結構親子コラボを見たいってリスナーが多くてな⋯⋯ははは」
「でも僕の配信ではあんまり見ないよ?」
「まぁ、リスナーの層が違うんだろうな。
Vtuberが一人一人違うように、リスナーも一人一人違うからな。
それに、優希が俺にコラボしたいって言い辛いだろ?」
「確かに、僕から言おうとは思わないかも。
お父さんにおんぶに抱っこみたいに思われるのも嫌だしね⋯⋯」
「だろ? でも俺から頼む分には言い訳も出来るだろ?」
「なるほど⋯⋯でもそれって僕がお父さんと配信やる理由にならないような?」
「⋯⋯」
「お父さん?」
「頼む!!ゆりで配信するか優希を出すかの二択を迫られてるんだよおおおおお!!!!」
「お父さん!?!?!?」
かなりぶっちゃけたねお父さん!?
リスナーからの声が多いんじゃなかったの!?
「優希の気持ちは分かる、リスナーの声が多いのになんで二択なんだって思うよな。
声が多いのは本当なんだが、ゆりを見たいって人も同じくらい多いんだ⋯⋯
それと今優希がこっちに戻って来てる事が思い切りネットでバレてるんだよ⋯⋯」
「生贄かな?」
「ひ、人聞き悪い事言うなよ!?」
「でも、そうだよね?」
僕はじとーっとお父さんを見つめる。
「くっ、否定は出来ない⋯⋯」
「まぁ、いいけど。
どうせ家に戻って来たって言っても特にやる事ないし!」
「あっ、それは分かるわ」
僕達が明日について話をしているとお母さんが飲み物を持ってリビングに戻ってきた。
「優斗さん、優希ちゃんと配信もいいですけど、三人でお出かけする事も忘れないでくださいね?」
「勿論、配信は夜からの予定だから心配しないでくれ」
「それなら良いですけど」
「あっ、そうだ優希ちゃん」
「ん? お母さんどうかしたの?」
「お母さん、沢山優希ちゃんに似合うお洋服買ってきたから、良かったら着てみてね?」
「お母さんありがと!」
そういえば最近自分の普段着あんまり買ってなかったから正直凄く助かるかも!
「⋯⋯ふふっ」
だけど僕はお母さんの妖しげな笑みに気付く事はなかった。
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