148:男子会と女子会?
お父さん達が急にイチャつき始めたと思えば、今度は急に冷静になったようで家の中に入った。
流石に寒いからありがたいね。
「⋯⋯なんかすまん」
「優斗さんってばいつもの事じゃないですか」
お父さんは家に入ると恥ずかし気に謝った。
「え? 何? いつもって僕の知らない所でめっちゃイチャイチャしてたの!?」
「優希くん、よく毎日こんなの耐えられたね?」
「私でも、これが毎日だとお砂糖口から吐きそうになるかなー」
僕は思わずツッコミを入れると薫さん達は同情するような言葉を僕にかけた。
「流石に優希のいるタイミングは避けてた⋯⋯よな?」
「仲が良いのは知ってたけど毎日あのレベルしてるとまでは知らなかったよ?」
「さ、流石に毎日じゃないよな!? な、なぁ母さん?」
「ほぼ毎日してた記憶が私にはありますけど?」
「嘘だろ?」
無意識だったんだね、お父さん⋯⋯
「まぁ私からすればご褒美みたいなものなんで問題ないですけどね」
「ほっ、嫌だったなんて暴露されたらどうしようかと思ったぞ⋯⋯」
「ほらまたイチャついてる」
「「えっ、これでも?」」
このレベルで? といった顔で僕を見るお父さんとお母さん。
「薫さん、由良さんもそう思いません?」
「口の中が甘いよ?」
「お姉ちゃんに同じく」
「薫さん!? 由良さん!?」
微笑ましい顔をしながら目が死にそうになってる薫さんと由良さん。
流れを変えないとまずいかも?
「それで、お母さんが会ってみたいって言ったんだったら何か用でもあったんだよね?」
僕がそう言うと——
「用⋯⋯? 特に無いんですけど、どうしましょう?」
「俺に聞かれても困るぞ母さん」
お父さんにそう言われたお母さんはハッとした様子で何かを思い付いたような顔をしていた。
「あっ、だったら良いものがあるので良かったらちょっと二人とも来てもらえます?」
「え? 私ですか?」
「私も?」
「じゃあちょっと二人を借りていきますねー」
そう言ってお母さんは二人を連れて二階へ上がっていってしまった。
「⋯⋯何だったんだろ今の」
「俺にもわからん」
僕とお父さんは突然の事態に困惑するしか出来なかった。
「まぁいいや、とりあえず優希あけましておめでとう。
それとおかえり」
「うん、お父さんこそあけましておめでとう。
それとただいま」
新年の挨拶を済ませると、お父さんが先に口を開いた。
「なぁ優希、ずっと気になってた事があるんだけど、少しいいか?」
「ん、何?」
「年末、コミケに優希も来てたらしいじゃないか、それでな、その、ふわりの奴に何かされなかったか?」
「ふわちゃんに?」
何かって言われても特に何かあった記憶は⋯⋯間接キスくらいかな?
でもあれは、事故みたいなものだし⋯⋯
でもお父さんが気にするって事は何かあったんだっけ?
僕は華さんに抱きしめられ続けた事に違和感を覚えなかったせいか、その事を口に出す事は無かった。
慣れって怖いよね。
「⋯⋯」
「ゆ、優希!? あったのか!? 何かあったのか!?」
「あっ、違うの、何かあったっけ? って考えてただけ」
「そ、そうか、てっきり⋯⋯」
「てっきり?」
「⋯⋯いや、なんでもない」
「お父さん、逆に気になるんだけど!?」
僕が思わずツッコミを入れると——
「優希にはまだ早い」
「コミケの時からそのセリフ何回も聞いてるんだけど!?」
「いやコミケの本は実際まだ早いだろ」
「まぁ否定はしないけど⋯⋯特に自分がモデルになってるなんて思わなかったし⋯⋯
「は? 読んだのか? あのSAN値直葬の本を?」
「いや、表紙で察しただけだよ?」
「あっそうか、表紙でわかるよな!」
「まるでお父さんも読んだことあるような言い方だけど?」
僕がそう言った瞬間——
「やめろ! それは言わないでくれ!
同じ事務所の男と自分が絡ませられる同人誌とか本当誰得なんだよ!!!!」
「な、なんかごめん⋯⋯」
「しかもな、相手の男が嬉々として俺に見せて来たんだよ⋯⋯貞操の危機を感じたぞ流石に⋯⋯」
「え、えぇ⋯⋯」
「優希いいか、自分をネタにした同人誌には気をつけるんだぞ、いいか? 絶対だぞ?」
「う、うん⋯⋯」
そんな必死そうな顔をして言われると説得力が段違いだよ。
♢
「はい、この部屋に入ってくださいねー」
「お、お邪魔します?」
「おじゃましますー」
私は優希くんのお母さんに案内されるがまま部屋に入っていった。
「えーと、確か⋯⋯あったあった」
「えーと、私達は一体なんでここに?」
「ちょっと気になるよね」
「前、配信の時に私も見てたの、優希ちゃんの小さい頃見てみたいって言ってたから⋯⋯ね?」
「ま、まさか!」
「優希くんのちっちゃいころの写真!?」
優希くんのお母さんが手に持っていたのはアルバム。
そう、優希くんの小さい頃の写真が詰まった、思い出のアルバムって言う物。
「これが優希ちゃんが幼稚園の頃で⋯⋯」
「ち、ちいさい、滅茶苦茶可愛いです⋯⋯」
「なにこの尊い生き物⋯⋯」
「ほっぺ柔らかそう⋯⋯」
「それはそれはもちもちだったのよ?」
「くぅ、羨ましいです⋯⋯」
それから私達は優希くんの写真を見ては悶絶していた。
幼稚園、小学生、中学生の優希くんの写真はどれも破壊力抜群だった。
「ふふっ、優希ちゃんの事本当に好きなのね?」
突然写真を見ていると優希くんのお母さんからそう言われた。
「ふぇっ!?」
「まぁ、お姉ちゃんの場合隠してないからすぐにバレるよね」
「えっ、そんなに分かりやすかった!?」
「バレバレだよお姉ちゃん」
「バレバレねー、でもうちの二人は気付いてないようだったけど」
自分では気付かなかったけど、そんなに分かりやすかったかな⋯⋯
気を付けないと!
「ほっ、優希くんにばれてないならよかった⋯⋯」
「あら、なんで?」
純粋に気になったと言う顔をしながら優希くんのお母さんに聞かれた。
「いや、その、一目惚れだったんです。
でも一目惚れって言うの少し恥ずかしいじゃないですか。
それに私が好きだって事がばれて今の関係が変わるのが嫌で⋯⋯」
「気持ちは分かるわ⋯⋯」
「確かに一目惚れって言うのってなんか恥ずかしいよね」
「だから、今私は優希くんの活動を助けられたらそれでいいかなって思うんです⋯⋯」
「私も同じ気持ちかなぁ」
「ふふっ、随分慎重なのね?」
「急がば回れって言いますからね。
焦らずゆっくり行こうかと思ってます」
「ライバルも多いのに?」
「うぐっ、それは⋯⋯」
分かってはいる事だけど、私の性格的にグイグイ行くのは結構難しい部分もある。
「まぁ、私から言えることはあんまり無いけど、一つ言わせてもらうと⋯⋯」
「は、はい」
どんなアドバイスが飛び出すのかドキドキしながら待っていると——
「優希ちゃんは押しに弱いわ」
「え?」
飛び出したのは想定すらしていなかった一言だった。
「何言ってるのって顔してるけど、本当の事なのよ?
それじゃ、あんまり長く待たせてもあれだし、一旦戻りましょうか」
「は、はい⋯⋯」
「はーい!」
私は優希くんのお母さんから聞いたアドバイスの意味を考えながら下へ戻っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます