147:実家に到着!

 薫さんが僕の実家へ向けて車を走らせている途中、僕はお父さんからメールが届いている事に気が付いた。


 多分、おちょぼさんにいるタイミングに届いていたみたいだったから気付かなかったのかな?


 メールの内容は家に帰る時、何時くらいに家に着くのか教えて欲しい、との事だった。

 普段そんな事を言われないから何でなのか少し僕は気になったけど、あと三十分ほどで到着するよ、と返信しておいた。


 メールを返信してすぐに了解、と短い返事が来たから無事に伝わったようで一安心。


「優希くん、ずっと堤防走ってるけど、どの辺りで降りればいいのかな?」

 薫さんが僕がメールを確認し終わったタイミングで声をかけてきた。


「えっと、まだずっと真っ直ぐですね!

 ずっと走ってると途中で左手側に大きな運動場みたいな公園があるのでその場所が見えるまでは大丈夫ですよ!」

「うん、ありがとう。

 また近くに来たと思ったら教えてくれるかな?」

「はい!」

 

 そしてそのまま堤防を走り続けると、景色があまり変わらないから少し暇になったのか、由良さんが僕に話しかけてきた。


「ねぇ凄く気になってたんだけど、優希くんのお母さんってどんな人なのかな?」

「由良ってばいきなりどうしたの?

 ⋯⋯私も気になるけど」

「僕のお母さんですか?

 うーん、別に普通だと思いますけど⋯⋯?」


「そうなの? 優希くんのお母さんなら優希くんそっくりなのかなって気になっちゃうなぁ」

「確かに、優希くんのお母さんだったら絶対美人そうだよね」

「あまり意識した事はないですけど、見た目はまだまだ若いですかね⋯⋯?」

 僕のお母さんについての話になったけど別に普通だと思う、かな?

 普通だよね? ⋯⋯ちょっと心配になってきたかも。


「まぁ、自分の母親が美人で綺麗ですー! なんてそうそう言えないかー」

「ふふっ、そうかも」

 由良さんが半笑いでそう言うと、薫さんもつられて笑った。


「そういえば、お姉ちゃんは優希くんのお父さんには会ったんだよね?」

「うん、ゆりのデザインの関係で何度か会ってるよ」

「えっ、そうだったんですか!?」

 僕は全然知らなかったからついつい驚いてしまった。


「あれっ? 優希くん知らなかったの?」

「は、初耳ですよ⋯⋯」

「それでお姉ちゃん、優希くんのお父さんってどんな人だったの? 私聞いてなかったから気になって気になって」

 由良さんが薫さんにそう聞くと、薫さんはそのまま喋り始めた。


「んーと、身長は優希くんにそっくりだったかな? 並んでる所見たわけじゃないからなんとも言えないけど、近かったのは覚えてるよ」

「実際同じくらいなんですよ⋯⋯」

「い、遺伝って凄いね⋯⋯」

 由良さんがなんとも言えない表情でそう言った。


「それで、顔なんだけど」

「何か問題でもあるの?」

「正直20代、下手すると10代でも通用するレベルの若々しさだったの⋯⋯」

「え、えぇ⋯⋯」

「ちなみに優希くんと違って、美少年系の顔立ちだったよ。

 想像だけど、多分優希くんはお母さんの特徴を良く受け継いでるんじゃないかな?」

「ねぇ、優希くんの家族、謎が多すぎない?」

「否定は、しないです⋯⋯」

 僕も実際謎が多いなって思う部分は多いから、否定出来ないんだよね⋯⋯


「うーん、やっぱり話聞くよりも実際に見てみたいかも!」

「流石にお正月にお邪魔するのは気が引けるから機会があったらね?」

「流石に私も分かってるよお姉ちゃん⋯⋯」


 そんな話をしていると、そろそろ曲がる場所が近付いてきている事に気が付いた僕は、薫さんに場所を教えることにした。


「あっ薫さん、そろそろ曲がる場所が近いです!」

「了解したよ、もしかしてあそこかな?」

 薫さんはハンドルを握りながら指先でその場所を指差した。


「そこですね! そこを左に行ってください!」

「左だね、ありがとう」


 そしてそこから何度か曲がる場所があったのでその都度薫さんに場所を伝える事約十分、ようやく家が見えてきた。


「薫さん、あそこにある家が僕の家です!」

「け、結構大きいね?」

「豪邸までは言わないけど庭が広い⋯⋯」

 薫さん達がそう言いながら車は家の前に着き、車を一旦停めた。


「薫さんありがとうございました!」

「ううん、大丈夫だよ。

 優希くんまた何かあったら気軽に言ってね?」

「私に言ってくれてもいいんだよー?」


「そ、そんなにお世話になる訳にはいかないですよ!?」

 そんな事を言っていると——


「どうも、遊佐さん。

 優希をわざわざ送ってもらってすいません」

「あらあら、あなたが遊佐ちゃんなのねー?」

 突然お父さんとお母さんが現れた。


「えっ!? お父さん!? それにお母さんまで!?」

「まぁ、そんな直ぐに帰るなんて言わなくても大丈夫よー、よかったら上がっていって?

 流石に長時間の運転は疲れたでしょ?」

「えっ、いやっ、その、いいんですか?」

「大丈夫よー気にしないでー」

 突然お父さんとお母さんが出てきてびっくりしたのも束の間、薫さんと由良さんがうちに来る事が決まった。


「それじゃ、車はあそこに停めてもらえば大丈夫なんで、母さん、案内してもらっていいか?」

「うふふ、任せてちょうだい♪」

 お母さんはノリノリで薫さん達を車を停める場所まで案内していった。


「お、お父さん、もしかして帰ってくる時間聞いたのって⋯⋯」

「ははは、すまんな。

 どうしても母さんが遊佐さんを見たいって言うもんだから」

 お父さんがそう話すけれど、なんでお母さんが薫さんの事気にするんだろう?


「何でお母さんが?」

「何でって最近母さん、優希の配信見に行ってるんだぞ?

 しょっちゅう遊佐さんが配信見に来てるから、俺が優希と最近仲良くしてもらってる絵師さんだって教えたんだよ。

 そしたら一度会ってみたいってずっと言っててな」


「⋯⋯なるほど?

 っていうかお母さん僕の配信見てたの!?」

「突っ込むのそこなのか⋯⋯」


「いやだって、恥ずかしくないかな?

 お父さんだって僕がお父さんの配信よく見てたなんて知ったら恥ずかしかったでしょ?」

「うぐっ、それを言われると否定できんなぁ⋯⋯」


「あら?優斗さん、寒いんだから入っててもよかったのに⋯⋯」

「母さんだけ寒い思いはさせられないよ」

「もう、それで風邪引くのは優斗さんなんですからね?」

「看病されるのもそれはそれで良いけどな」

「もうっ」

 お父さんと話をしていたら、お母さん達が戻ってきた。

 そしてお父さんにお母さんが入ってて良かったのにと言うと突然イチャイチャし始めた。


「お姉ちゃん、口の中が甘いよ」

「奇遇だね由良、私もだよ」

「二人とも奇遇ですね、僕もです」

 僕達は口の中がお砂糖で溢れかえった。

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