146:初詣に行こう!(後編)
お詣りが終わった僕達は参道にあるお店に行く事にしたので僕は二人に何が食べてみたいか聞く事にした。
「薫さん、由良さん、何か食べてみたいものってありますか?」
「うーん、どうせなら名物とか有名なやつがあるなら食べてみたい⋯⋯かな?」
「私は串カツかなー? 有名らしいって聞いたし!」
僕がそう聞くと、名物を食べたいと二人が言ったから、どうせなら立ち食い形式の串カツ屋に案内する事にしたよ。
その串カツ屋さんは神社から近い場所にあって、店内は金色で彩られていて縁起がよさそう。
更にお店の中にはちゃんと飲食スペースもあって、ゆっくり座って食べたい人や、地元に住んでいる人なんかがお酒を飲みに来たりしているみたい。
外から見ても分かるくらい満員で、座る場所の無いような盛況ぶりだった。
だけど、僕達みたいに外で食べる人からすれば中の混雑は関係無くて、外では串カツがどんどんと揚げられ店員さんの横に並べられていく。 それを外で食べている人が手に取り、次々と食べていっているのがパッと見て分かる。
「ここです!」
「す、凄い人だね⋯⋯」
「流石有名店って感じ⋯⋯」
二人とも人の多さに少し戸惑いつつもコミケを経験しているせいか抵抗感無くその人混みの中に突っ込んでいった。
「えっと、ここは後で串の本数を見せてお会計をするので食べた串は持っててくださいね!串カツはあそこの横のやつからで、どて串はお鍋のところから手で取ってく感じです!」
「なるほど、セルフサービスなんだね」
「串カツは味付けどうするの?」
「串カツはあそこにあるタッパーの中のソースか、どて串の入ってる味噌の中に串カツごと突っ込んで食べるんですよ!ただ二度漬けは禁止なので先っぽだけ漬けちゃうと味が寂しくなっちゃいます⋯⋯」
「やっぱり東海人の私としてはお味噌かな⋯⋯」
「私もだねー」
説明も終わったところで僕達は串カツに手を伸ばした。
揚げられた串カツを手に取り、どて煮の鍋の中に突っ込んで味噌のたっぷりついたアツアツの串カツを一気に頬張る。
サクサクとした食感が残った串カツは熱いけれど、味噌だれの甘じょっぱい味付けとカツの相性は最高。
よくある玉ねぎが間に刺された串カツとは違いここの串カツは全てが豚肉なので食べ応えも十分。
「やっぱり串カツと言えばこれですね!!」
「美味しい、やっぱりカツと味噌の相性は最高だね」
「サクサクしてて、美味しいね!」
「あと、他にも串カツのお店って色々あるので他も行ってみませんか?」
「食べ比べってやつだね、楽しそう」
「いいねいいね! いこいこ!」
僕が小さな声で提案すると二人とも乗り気になっている様子。
「あ、でもその前に」
「「どて煮だね!」」
そう言って僕達はどて煮も堪能してお会計を済ませた。
「優希くん、次はどこにいくのかな?」
薫さんは、お店から離れると僕にそう聞いてきた。
「んーそうですね⋯⋯串カツ二店舗目でもいいですし、甘い物も近くにありますけどどうしますか?」
「しょっぱい系の次は甘い物もいいかも、その次に串カツ二店舗目いっちゃお!」
「私もそれで大丈夫だよ」
「それだったらまずはオススメのところ行きますね!」
「何だろ、楽しみ!」
「ちなみに、何かな?」
「大学いもです!」
僕がそう言うと、薫さんは少し首を傾げた。
「だ、大学いものお店があるの?」
「あんまり見ないよね?」
「僕もここくらいでしか見た事無いんですけど、家で作るよりかなり美味しいんですよ!
ただ、ちょっとお高めですけど⋯⋯」
そう言いながら少し人気の少ない場所に入っていくと鉄板の上で大学いもを作っているお店に到着した。
「こ、こんなところにあるんだ⋯⋯」
「しかも結構本格的だよお姉ちゃん」
「カリッとした食感が美味しいんですよ!」
僕は店員さんに小サイズの大学いもを頼んで、それを購入したよ。
お店の横には食べやすいようにつまようじが用意されているのでそれを取ってお店を出た。
「それじゃあ、ここなら人少ないですし食べちゃいましょうか!」
「うん、そうしようか」
「楽しみだね!」
そしてパックを開けて、まだほのかに温かい大学いもを食べ始めた。
「んー!自分では再現出来ないこのパリパリ感クセになります!」
「確かに美味しい!」
「甘すぎないから食べやすいねこれ!」
ぱくぱくと食べ進めるとあっという間に大学いもは無くなってしまった。
「これはお持ち帰りも検討しちゃうね」
「お姉ちゃん、買って帰る?」
「あっ、お持ち帰りするなら帰る時の方がいいですよ!湿気ると美味しくなくなっちゃうので⋯⋯」
「うぐっ、それは困るかも⋯⋯」
「どうせなら美味しい状態で食べたいもんね⋯⋯」
「本当は買った後に冷凍庫に入れて保存するのがいいんですけど、僕は出来れば買ったらすぐに食べ切るのをオススメします⋯⋯美味しいんですけど保存にはそこまで向いてないんですよね⋯⋯」
僕が残念そうに言うと二人も少し残念そうな顔をしていた。
「そうだお姉ちゃん、だったら食べながら帰ればいいんだよ!」
「何言ってるの由良!?
これからまだ食べるのにそんな余裕あるの!?」
何を血迷ったのかと言わんばかりの勢いでツッコミを入れる薫さん。
「だって、こんなに美味しいんだよ、別腹じゃん!」
「き、気持ちはわかるけど⋯⋯」
「よ、喜んでもらえて嬉しいですけど⋯⋯?」
「お姉ちゃん、また来よう」
「う、うん⋯⋯と言うか由良ってこんなに大学いも好きだったっけ⋯⋯?」
由良さんの見たことない一面を見て、薫さんは少し困惑してる様子だった。
それからは別の串カツ屋さんに行ったり、わらび餅のお店や、たい焼き屋さんなんかも行ったりしているともうお腹一杯になっていた。
「いやー、沢山食べちゃったね!」
「僕はもう結構厳しいです⋯⋯」
「私もこれ以上は厳しいかも⋯⋯」
車に戻りながら話していると、由良さんがハッとした様子で言った。
「はっ!? 優希くん、お姉ちゃん、先に車戻って待ってて!」
「由良、どうかしたの?」
「どうかしたんですか?」
「大学いも忘れてたから買ってくる!」
「い、行ってらっしゃい」
「気を付けてくださいね?」
大急ぎで大学いもを買いに走った由良さん。
僕と薫さんは車に乗って由良さんが戻って来るのを待っていた。
「ねぇ、優希くん。
今日は色々と案内してくれてありがとう。
普段は普通の神社しか行かなかったから凄く新鮮だったよ」
「いえいえ! 楽しんで貰えたなら嬉しいですし、僕としても久々にここに来れてよかったです! こうやって車まで出してもらって僕からもありがとうございます!」
薫さんがお礼を言ってくれたけどこうやって車まで出してもらったので思わず僕もお礼を言っていた。
「そんなに気にしないでいいのに。
でも、また、ぃ⋯来たいね」
「そうですね!」
一瞬口が詰まったように聞こえたけど僕の気のせいかな?
それから少しすると大きなサイズの大学いものパックを手に持った由良さんが戻って来たので、僕の実家に向けて出発した。
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