133:冬コミ一日目!
待ちに待ったコミケの初日がとうとうやってきた。
僕と薫さん由良さんの三人で、サークルチケットを利用し早い時間から中へ入っていく。
僕は更衣室へ先へ向かい、売り子用のコスプレに着替える事にした。
更衣室で僕を見た人が信じられないような顔をしながら口をぱくぱくさせてたけど変なところでもあったのかな?
もう女の子の衣装にも慣れたもので着るのに時間もかからなくなってきた。でもこれ、男として慣れていいものなのかな⋯⋯
まぁ、そんな事気にしても意味がないし、ささっと合流しちゃおっと。
「薫さんお待たせしました!」
「優希くんおかえりなさい。
⋯⋯やっぱり可愛い」
僕をじーっと見つめながらそう言う薫さん。
確かにこの衣装は可愛いから、否定はしないよ。
「お姉ちゃんお待たせ!って優希くんの衣装やっぱり可愛いね⋯⋯」
「だよね⋯⋯」
「あ、ありがとうございます!まだ可愛いって言われるのあまり慣れないですね、恥ずかしいです⋯⋯」
「(そういうところがまた可愛いんだよねぇ)」
「(そういうとこだよ優希くん)」
「あっ、そうだ言い忘れてた」
「どうかしましたか?」
ぽんと手のひらを叩きながら薫さんが言った。
「実はね、今日途中からになるけど私のフォロワーの売り子さんにお手伝いに来てもらえる事になってるの」
「えっ?そうなんですか?」
「本当は今すぐにでも来て欲しいところなんだけど、サークルチケットって三枚しか無いから、一緒に入ってこれなかったんだよね」
「た、確かにこの量ですもんね、三人だと厳しそうです⋯⋯」
「ピヨッターでここに来てくれるって言ってる人相当多かったから残ってもいいから大量に入れたんだけど、三人じゃ厳しいなって思ってたら、新刊セットとアルバイト代で出てくれるって話が付いてね。本当に助かったよ⋯⋯」
「それはありがたいですね!」
「今まではお手伝いなんて必要無かったのにね私達」
「優希くんのおかげだよ」
「えっ?」
そう言いながら僕を見て微笑む薫さん。
「こほん!ってことでそれまでは三人でやるから頑張っていこうね!」
「は、はいっ!」
「うん!」
流された気がするけど、大変なのは間違い無いしまずは物がちゃんと来てるかのチェックをしないと!
段ボールを開けて中に物があるかを確認。
僕の見ている場所は特に問題なくちゃんと揃っている。
「お姉ちゃん、こっちは大丈夫だよ!」
「了解!こっちも大丈夫そう!」
「薫さん、こっちも大丈夫です!」
「よし、じゃあ並べて⋯⋯」
「こんな感じですか?」
僕は新刊セットと缶バッジセットをそれぞれ取りやすいように置く。
「うん、大丈夫!あとは開場を待ってる間にお隣さんに挨拶してこよっか」
「了解です!」
そして僕達は新刊のセットを持って挨拶へ向かった。
♢
「「おはようございます!」」
僕達は隣で準備をしていたサークルの人に声をかけた。
「あっ、おはようございます!⋯⋯え?」
そこに居たのは、同じクラスの花園さんだった。
「あれ?花園さん?」
「あ、あれ?な、なんで優希くんが!?」
「優希くん、知り合いなの?」
「え、えっと、クラスメイトの花園さんです⋯⋯」
「あっ、えっと、私は優希くんのクラスメイトの花園しのです。ゆかちゃんの格好した優希くんがいるって事は、もしかしてゆるママさんですか?」
「えっと、そうですよ」
「あ、ああああああやっぱりいいいいいい!!!!!」
「ど、どうしたの花園さん!?」
「だ、大丈夫!?」
「み、見ないで!見ないでくださいいいいいい!!!!」
「な、何が!?」
「見ないで?⋯⋯あっ」
薫さんは横を見て全てを察したような顔をしていた。
「ゆる×ゆか⋯⋯」
ぼそっとそう呟いた薫さん。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!よりにもよって本人にいいいいいい!!!!!!」
「え、えっと、どう言う事ですかこれは?」
「「優希くんにはまだ早いよ!」」
二人揃って僕にそう言った。
「え、えぇ?」
「あっ、そう言えばこっちの挨拶が遅れてごめんなさい。
私は【薔薇の庭園】の姉妹サークル【白百合の園】のサークル主をやってるしのんです。よろしくお願いします。それと本当にごめんなさい⋯⋯」
「えっと、じゃあ私も一応。
サークル名は特に決まって無いですけど、柿崎ゆるです。よろしくお願いしますね」
「あ、ありがとうございます⋯⋯」
「(良かったら新刊後でこっそり頂けると嬉しいです)」
「えっ?」
「あっ、これ私のところの新刊です、良かったらどうぞ」
「えっ、あっ、ありがとうございます⋯⋯」
「?」
僕の知らない所で何かが起きているのは分かるんだけど、一体何が起きてるんだろうか。
【お待たせしました、只今よりコミックマーケットを開催します!】
コミケの開始を告げる音声が会場内に響き渡り、会場は大きな拍手に包まれた。
「それじゃ、優希くんにゆるママさんも頑張ってくださいね!」
「ありがとう、しのんさんも頑張ってね」
「花園さんも頑張って!」
挨拶を済ませた僕達は、自分達のスペースへ戻っていった。
コミケの開始が告げられると会場内へ沢山の人が入ってきた。
スタッフによる走らないで下さいの声を律儀に守り、まるで競歩を見ているかのような速度で早歩きをしている人も見られる。
そしてボク達のいるブロックへ入ってくる人達の多くは壁際に配置された大手サークルへ向かって歩いてくる。
ボク達のサークルも壁際に配置されている事もあり、サークルの待機列は外側から形成されていき、気付けばかなりの人数になっていた。
「これは忙しくなりそうだね、二人とも、応援来るまで頑張ろうね!」
「うん!」
「はい!」
それから僕は深呼吸をして、白姫ゆかとして全力で待機している人達の相手を始めた。
わざわざボクに会いに来てくれる人がとても多い事に嬉しさを隠せなくてずっと笑顔になっていたような気がする。
ただそのせいか、ボクが対応した人全員物凄い表情をして帰っていったんだけど、もしかして笑顔が怖かったかな?
「お待たせしました!」
「えっと新刊セットとゆかちゃん缶バッジセットを3つずつお願いします」
「セットを3つずつですね!合計9000円です!」
「えっと、1万円からで。」
「はい!1000円のお返しです!ありがとうございました!」
「お待たせしましたー!」
「新刊セットと缶バッジセット2つずつお願いします」
「新刊セットと缶バッジのセットを2個ずつですねー合計6000円です!」
「じゃあ、5000円と1000円出して丁度で」
「はい、丁度ですね!ありがとうございました!」
「え、えっと、その新刊セットとバッジセットを3つずつ、下さい」
『新刊セットとバッジのセットを3つずつだねっ!お兄ちゃんありがと♪』
「!?え、えっと、9000円丁度、です」
『丁度だね、うん。ありがとうお兄ちゃん♪次もあるだろうから気を付けてね!』
「あ、ありがとう⋯⋯ゆかちゃんも頑張って⋯⋯」
『うん!頑張るよ!』
こうして対応していくこと一時間、列が減る様子も無く、ずっと続いているように見え、焦りが見え始めた頃に、三人の元に来客が。
「ゆる先生!お待たせしました!」
「あっ、やっと来てくれた!」
薫お姉ちゃんがそう言うとスペースの裏側に暖かそうな格好をした人が二人立っていた。
「自己紹介したいところですけど、今相当な修羅場っぽいですね、私達すぐにでも手伝えるので何やればいいですか?」
「それじゃあとりあえず一人は待機者を捌くために対応スペースを追加するからそこをお願いするね!」
「了解です!」
「結構力持ちって聞いてたけどこの缶バッジの段ボールを皆の後ろに運んで貰ってもいいかな?」
「大丈夫ですよゆる先生!こう見えてもスタイル維持のために筋トレしてますから!」
「頼もしいね!それじゃ人数増えたし一気にいくよ皆!」
「「「『おー!』」」」
それから皆の力を合わせて待機列を捌き出すこと数時間。
前回よりもかなり多めにセットを持ってきていたけど、その殆どが無くなっていた。
「やっと、待機列が無くなった⋯⋯」
「持って来てたセット、ほぼ全滅したんだけどさ」
『余ったらネット販売するって言ってなかったかな、ゆるお姉ちゃん⋯⋯』
「これは受注販売で一定数行ったら再販の方がいいかもしれないね⋯⋯」
「そ、そうだゆる先生私たちの分のセットは残してありますよね!?」
「流石に無かったら泣きますっ⋯⋯」
「もちろんそんな非道なことしないよ、ここに二人用のセットちゃんと残してあるよ」
「「ほっ、よかった」」
「それじゃ二人ともお疲れ様、バイト代もセットの中に入れてあるから今確認しておいてくれるかな?」
「問題ないですね!」
「大丈夫です!」
「よかった、それじゃ私たちは残った時間ここでスケブやったりゆかちゃんも来てくれた人とお話する感じになると思うけど二人はどうする?」
「本当はもうちょっと居たいんですけど、友達が明日着る予定の衣装手直ししないといけなくなったらしくて今からお手伝いに行くんですよ」
「あら、それは大変だね」
「だから今日は私たちはここでおさらばするとしますね!それじゃ、ゆかちゃんにゆる先生、ゆらさんもお疲れ様でした!」
『お姉ちゃん達が来てくれてとっても助かったよ!お姉ちゃん達ありがとう!』
ボクは笑顔でお姉ちゃん二人に微笑みながらそう言った。
「あっ」
「うっ」
「二人とも死にかけてる、大丈夫?」
「な、なんとか⋯⋯それじゃ私達はここで!」
「ギリ耐えれた⋯⋯三人ともお疲れ様でした!」
そして二人はぺこり、とお辞儀をすると、さささっと早歩きで会場を出て行った。
『あっ、名前聞き忘れちゃった⋯⋯』
「あっ、そう言えば自己紹介してなかったね。
でも、多分またきっと会えるよ。
だって私のフォロワーさんだから!」
『うん!そうだといいな!』
そして頒布は終了し、残り時間は薫お姉ちゃんが抽選で選ばれた人にスケブを描く事になった。
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