130:冬コミへ出発!

 クリスマスも終わり、そろそろコミケへ出発の時期になった。


 今回のコミケも薫さん、由良さんの二人と一緒になって車で向かう予定になっているんだけど、前の事もあり少し気恥ずかしい。


 前回は名古屋駅で拾ってもらい、そこから移動をしていたけれど、今回は僕の家の場所を知った薫さんが由良さんを案内することで直接迎えに来てくれる事になった。


 荷物が結構あるからとてもありがたいよね。


 今回出発が深夜になり、朝方に東京へ到着する予定で、お昼を食べたらホテルにチェックインしてその後は自由行動の予定になっているよ。


 でも移動の後だから眠ってしまいそうだけど。


 そして深夜と言う事もあり僕は既にかなり眠くなっていた。


「ふぁ⋯⋯眠い⋯⋯」

 そして薫さんからもうすぐ到着するとメッセージが届いたので荷物を持って部屋を出た。


 外に出て待つ事数分。


 由良さんが運転している車が僕の住んでいるアパートの前に停まった。


「お待たせ、優希くん」

「おまたせ!」

「いえ、今部屋出たばかりなので大丈夫ですよ!」

 僕はそう言いつつ、薫さんに手伝ってもらいながら荷物を車に載せた。


 そして僕と薫さんは後部座席に乗り、シートベルトをしっかりと付けた。


「一応到着は朝の予定だけど、私が眠くなったら途中で仮眠を挟むから、二人は眠かったら眠ってていいからねー!」

「うん、ありがとう由良」

「由良さんありがとうございます!」

「それじゃ、今年もコミケに向けて出発!」

 由良さんがそう言いながら車を発進させた。


 そして東名高速道路の名古屋ICから高速に乗った僕たちは東京方面へ向けて走り出した。


「ふぁー⋯⋯」

 豊田付近まで来たくらいになると流石に僕の眠気が限界に達して意識を失った。



「あっ、優希くん眠っちゃった」

「迎えに来た時から既に眠そうだったから仕方ないよお姉ちゃん」

 その時にとすん、と優希くんが頭を私の肩に預けてすやすやと眠っていた。


「本当に、可愛いな優希くん」

 自然と私の手は優希くんの頭を撫でていた。


 それでも優希くんはすぅすぅと寝息をたてながら熟睡していた。


「⋯⋯お姉ちゃん狡いよ」

「ふふ、今最高に幸せかも」

「いいもん、帰りはお姉ちゃんが運転するし、その時に優希くん堪能するから!」

「優希くん起きちゃったら意味なくなっちゃうね?」

「ぐぬぬぬぬ⋯⋯じゃんけんに負けた私の馬鹿ああああああ!」

 それから順調に車は進んでいき、半分進んだくらいで一度由良は仮眠を取る事にした。



「んっ⋯⋯」

 僕はふと目が覚めると、寝転んでいる事に気が付いた。


「やっぱり、眠っちゃったかぁ⋯⋯」

 起き上がろうとすると、体が動かない。


 あれ?これ前にも覚えがあるような⋯⋯」


「すぅ、すぅ、優希くん⋯⋯えへへ⋯⋯」

 僕は完全に薫さんの膝の上に...えっ?膝の上?


「へっ?」

 膝の上どころか完全に抱きしめられていた。

まるで抱き枕を抱えるように。


「(ま、前由良さんが言ってたハグ癖!?酷くなってないですかね!?)」

 というかベルト、シートベルトは一体!?


 何故かシートベルトを外され抱きしめられた状態の僕。

 由良さんも薫さんも幸せそうな顔をして眠っている。


 起こすのも忍びない、けれどこの状況は死ぬほど恥ずかしい。

 僕はどうすればいいんだろう⋯⋯?


 それにしても薫さん暖かくて、気持ちいいな⋯⋯


 僕はまた、気付かぬうちに眠ってしまった。



「ふぁー!よくね⋯⋯た⋯⋯?」

 あれ?なんで私優希くんを抱っこしてるの!?


「お姉ちゃん、おはよ」

「ゆ、由良おはよう⋯⋯」


「それで、そこで茹で蛸みたいに真っ赤になってる優希くん、どうするの?」

「あ、あわわわわわ」

 優希くんもほぼ同時に目が覚めたみたいで、あわわわとしている。


「ご、ごごごごめんね優希くん!?」

「だ、だだ大丈夫でしゅ!」

 あっ慌てすぎて舌噛んでる、かわいい。


「お姉ちゃん、ハグ癖治ったと思ったらなんで優希くんの前だと再発するのかなぁ!?」

「わ、わざとじゃないんだよ!?」

「寝てるのは見てるし分かってるけど!

 というか夏コミの時はそれで優希くん息できないくらいに抱きしめてたよね!?」

「あ、あれもわざとじゃないからね!?」

「ぼ、僕は気にしてませんから!」

「ごめんね、優希くん。苦しくなかった?」

「えっと、その、大丈夫です⋯⋯」

 顔を真っ赤にしながら大丈夫と言う優希くん。 ねぇ本当に大丈夫だったのかな!?


「それじゃまた出発するからちゃんとシートベルト着けてね二人とも!」

「う、うん」

「は、はい!」


 その後は皆の目が冴えて、東京までノンストップで進んでいった。


 東京に到着した私たちは郊外の喫茶店で少し時間を潰し、車をホテルに預け、ホテルのチェックイン時間までの時間を潰す為に東京の散策に出掛ける事にした。


 今回も一日早めに来ているから、コミケ前に色々楽しんでおかないとだね!

 優希くんの好きそうなデザートのお店、いくつかピックアップしてあるからそこに行くのもいいかも⋯⋯優希くんの喜ぶ顔が楽しみだな。

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