127:いざ鬼畜ゲー実況! ?日目

 イワナボーイVRの実況を始めて気が付けばもう二週間が経過していた。


 毎日少しずつ進めては編集してを繰り返していたらもう今月も終わり頃で、12月が目前に迫ってきていた。


 そして、ゲームの方もようやく終わりが見えてきていた。


 だけど終盤という事もあり、難易度が桁違いに上がっていた。


『⋯⋯小ジャンプ、大ジャンプ、小ジャンプ一歩進んで針を出して二歩下がる⋯⋯』

 微調整に微調整を繰り返して進み続け、ようやくセーブポイントが見えてきた。


『やった!やっとセーブ出来る!』


 そしてそこからが地獄の始まりだった。


『いやああああああ!!!!急に視点変更しないでええええええ!!!』


『ちょっとそんなの避けれる訳ないよ!?』


『あああああああああああ後数発で倒せたのにいいいい!!!!!!!!』


『あああああ!!!!』


『えっ、倒したのに復活!?』


『ちょっと第三形態とか聞いてない!!』


『待って、どうやってクリアするのこれ?』


『あっ、また死んだ』


『あっ⋯⋯』


『⋯⋯』


『』


『あああああ!!!!!もう無理!!!!こんなの一人でやってられないよ!!!』


 そしてボクは逃げるように配信を始める事にした。



『リス兄、リス姉こんばんは!白姫ゆかだよ!』


:ゆかちゃんこんばんは!

:今日配信無いって言ってたけどどうかしたの?

:ひゃっはああああ!急なゆかちゃんだあああ!

柿崎ゆる:ゆかちゃんこんばんは、珍しいね、何かあったのかな?

:なんだかんだ速攻で来るゆるママは流石すぎる

浮雲ふわり:配信やめて来ましたー

:配信やめてまで来るの草

:流石に草


『えっとね、今日急遽配信することにしたのは理由があってね、イワナボーイVRのボス戦がどうしてもクリア出来なくて、息抜きついでに配信をやりに来たんだよ!』


:なるほど、ってことはリアタイでイワナボーイのプレイが見れるのか...嬉しいぜ

:やったわ

:見に来てよかった

:絶叫まだ?

柿崎ゆる:む、無理はしないでね?

浮雲ふわり:あのゲームは本当に人の心を折りに来ますからね...


『という事でボス戦やっていくねー!無言になったりしちゃうかもだけどその時は許してね!』


:眺めてるからだいじょぶ!

:あまり無理しないようにね!

柿崎ゆる:頑張ってねー

浮雲ふわり:応援してますー


 そしてボクはイワナボーイを起動してボス戦を始めた。


 イワナボーイでボクが詰まってるボス、それは今までのボスを強化したものを詰め合わせたようなボス。


 壁に反射する弾や、急な視点変更。

 更には視点変更で急な弾幕STGが始まったり、敵のHPが一定数減ると起きる発狂行動。

 全てがかなりの難易度で気を休めるタイミングが無い。


 ボクはそれを少しずつ確実に避け、攻略を進める。


:めっちゃ集中してる...

:というかこれでイワナ初心者ってやばいな

:イワナむずすぎでしょ

:こんなの出来る訳ないよ...

柿崎ゆる:確かにこれはゆかちゃんでも難しそう...

浮雲ふわり:これは流石の難易度ですね...


『ふぅ、1段階目終了⋯⋯』


:え?倒したんじゃ?

:こいつ形態変化系かよ

:クッソしんどくて草

柿崎ゆる:今ので終わったかと思った...

浮雲ふわり:これがあるからイワナは鬼畜ゲー言われるんですよー


『これから2段階目だねー、ふぅ、気合い入れ直さなきゃ!』


 ここからが本当の鬼畜ゲーで、敵が10パターンの攻撃を仕掛けてくる。


 そのうち2つは完全に避けることが出来ないものでほぼ死に確と言ってもいいレベル。


『うわ、また引いちゃった⋯⋯』


:死に確ルートはエグい

:こんなの心を折に来てるようなもんじゃん...

:無理ゲー...

:流石にこれを買おうとは思えない...

:ドMかな?????

浮雲ふわり:これパターン分かるまでやるとかヤバすぎですよー

柿崎ゆる:これは酷いね...


 そしてそれから2時間ずっと死に続け、2段階目の死に確ゾーンにまた入った時にふと、気付いた。


『あれ?この弾だけ、色が違う?』

 まさか、と思ったボクはその弾の上でジャンプ。

 他の弾はジャンプをしても避けられない事から諦めていたけれど、これが避けられるなら希望が見えてくる。


 そしてジャンプした結果は、見事に成功。


『ああああああ!!!!来た!!!!』


:うおおおおおお!!!!!!

:すげえええええ!!!!!

:あんな色の差わかんねぇよwww

:ゆかちゃん流石!!!!!

浮雲ふわり:あの色の差を瞬時に見抜けって無理ですよね!?

柿崎ゆる:本当に微妙な色の差...


『やったあああああ!!次は3段階目!』


:いけええ!!!

:頑張って!!!!

:出来る!できるよ!!!

柿崎ゆる:ゆかちゃんファイト!

浮雲ふわり:頑張ってくださいー!!


 そして3段階目ももう見慣れたもので確実に避けながら弾を打ち込んでいく。


 そして迎えたクリアの瞬間。


『やったああああああああ!!!!やっとクリアしたよおおおおおお!!!!』


:おめでとー!

:おめでとう!!!!

:やっとクリア出来たね!!!!

柿崎ゆる:ゆかちゃんおめでとう!

浮雲ふわり:ゆかちゃんおめでとうございますー!


『やっといけたね⋯⋯』


『皆ありがとう!気分転換に配信やって本当によかったよ!』


:こんなの一人でやったら気が狂うよね...

:仕方ないよ...

:これは無理もない...

浮雲ふわり:ですねー

柿崎ゆる:本当にお疲れ様ゆかちゃん!


 そしてボス部屋を出るとセーブポイントがあった。


『セーブして、よし!』

 そして次の部屋へ行くといきなり針が降ってきた。


『えっ!?まだあるの!?』

 そして復活すると


『えっなにこれ』

 セーブポイントだった場所が全て針で埋まっていた。


 何度リスポーンしても即座に汚い花火になってしまう。


『えっ????どういう事????』

 今までこんな事なかったのに、と呟きながら何度もリスポーンしては空中で一回だけ出来るジャンプをする。


『行ける範囲の全部の針が本物の針だ......。』


:えっここに来て詰みセーブ?

:は????!?!

:なにこれ酷い

:あーこれは心折れた

:無理ゲー!!!!!

柿崎ゆる:...なんて言えばいいのか....

浮雲ふわり:これがあるからイワナは嫌いなんですよー!


『あはははははははははははははは!!!!!!!』


:ゆかちゃんェ...

:これはしんどい

:どんまい...

:これは発狂もするよね...

柿崎ゆる:ど、どんまいゆかちゃん...

浮雲ふわり:私の胸で泣いていいんですよ?



------この配信は終了しました------


 僕は無意識に配信を切り、部屋で一人少しだけ涙を流した。

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