119:風邪を引いちゃったよ
ハロウィンの配信も終わり十一月に入った月曜日、僕は少し身体に異変を感じた。
「なんか、寒気を感じるような⋯⋯」
学校へ行く準備をしているとぶるっと身震いしてしまった。
「風邪かな?」
酷くなるといけないし、栄養価の高いものをとっておいて、帰ったら早めに寝ようかな。
その後準備を終えた僕は学校に向かった。
♢
「裕翔おはよ⋯⋯」
僕は移動中にどんどんと怠くなっていた。
「おう優希おはよう⋯⋯って大丈夫か?顔色悪いぞ?」
「うん、多分風邪引いちゃったみたいで⋯⋯」
「大丈夫か?無理はすんなよ?」
「ありがと、ヤバいと思ったら早退させてもらおうかな⋯⋯」
「優希くん大丈夫?」
クラスメイトの天音さんが僕を心配する様子で話しかけてきた。
「うん、今はなんとか」
「最近色々頑張ってるみたいだけど無理しちゃダメだからね?」
「うん、ありがと」
出来る限りの笑顔で返事をするも少しボーッとしてしまいちょっと素っ気ない返事になってしまった気がする。
「いや絶対大丈夫じゃないやつじゃないかな?せめて帰りに病院行ったほうがいいと思うよ?」
天音さんが僕にそう忠告する。
確かに酷くなる前に病院に行っておくのもいいかもしれないかな?
「うん、帰りに病院行ってくる⋯⋯」
その後授業が始まり、怠いまま過ごしていたら熱も出てきたようで帰りに病院へ行く事にした。
帰り道にある病院へ寄ってみると案の定風邪とのこと。
最近忙しかったと言うと、睡眠時間はしっかり取っていても疲労が抜けきっていなかったんじゃないかと言われた。
ちょっと思うところもあったので栄養ドリンクと風邪薬、解熱剤を貰って帰宅した。
解熱剤は熱がどうしても酷い時だけ飲むように言われたので出来る限り飲まないで済むようにしないと。
帰り道でインスタントのお粥や果物の沢山入ったゼリーも買っておいたので多分大丈夫だよね。
家に到着した僕は軽く体を拭いてすぐに暖かい格好になりお粥とゼリーを食べて薬を飲んだ。
次の日には良くなってるといいんだけど⋯⋯
♢
完全にダメだった。
想像以上に熱が上がって来ていた。
体温計で測ってみると39℃とかなり体温が高いみたい。
とりあえず学校へ連絡して今日は休むことにした。
ついでにピヨッターでも今日の配信はお休みにする事を報告しておこう。
皆を心配させる訳にはいかないからね。
♢
白姫ゆか
@Shirahime_yuka
リス兄、リス姉ごめんなさい!
ボク、熱が凄く出てきちゃって今日は配信出来そうにないの...
熱が下がって元気になったらまた配信頑張るから少しの間待ってて欲しいな!
♢
投稿もしたし、今日はもう⋯⋯寝よ⋯う
♢(13:32)
『ん⋯⋯からだ⋯⋯あつい⋯⋯』
『からだうごかないよ⋯⋯』
『だれか⋯⋯いないのかな⋯⋯』
ぼくはめがさめるとカーテンのしめきったくらいおへやのなかにいた。
おかあさんもおとうさんもいない。
からだはあつくてうごかないし、あたまもぼーっとする。
だれか⋯⋯
♢(14:40)
『ぐすっ⋯⋯ぐすっ⋯⋯さみしいよぉ⋯⋯』
さみしくてないているぼく。
おふとんのなかでねころんでいるとまくらもとにおいたてになにかがあたった。
『ぴよったー?これでさみしいっていったらだれかきてくれるのかな?』
♢
白姫ゆか
@Shirahime_yuka
からだあつくてあたまもいたくてさみしいよだれか
♢
「!?」
私はたまたまおやつを食べながらピヨッターを見ていた。
すると優希くんが風邪を引いて寝込んでいると書いてあった。
「た、たいへんだ!?」
しかもトランス状態のような甘えん坊さん状態になっている。
もしかすると本当に体調が酷いのかもしれない。
私はすぐにDMを優希くんに送った。
けれど返事は来ない。
既読にもなっていない。
私は不安になってどうすればいいのか必死に考えた。
「そうだ、先輩なら!?」
私は先輩に事情を話し、悪用しない事を誓い優希くんの家を教えてもらった。
待っててね、今私が行くから。
♢
こんこんとのっくのおとがへやにひびきわたる。
『だれか、きてくれたのかな?』
でもおかあさんがへやをあけるまえにだれがきたのかかくにんしなさいっていってたような。
『んしょ、んしょ』
ふらふらするからだをがんばってうごかしていんたーほんをみるとそこにはかおるおねえちゃんがいた。
『かおるおねえちゃんだ!』
ぼくはうれしくなっていそいでへやのかぎをあけた。
「優希くん!?大丈夫!?」
おねえちゃんがぼくにかけよってくる。
「凄い熱、今冷えピタとか持ってきたからね。お布団いこ?」
『かおるおねえちゃん、ありがと⋯⋯』
ぼくはあんしんしておねえちゃんにだきついていた。
「ゆ、優希くん!?」
『ぼく、さみしくて、かおるおねえちゃんがきてくれなかったら⋯⋯』
「うん、一人暮らしだと不安だよね。私が来たからもう安心だよ」
『うん、かおるおねえちゃんありがとう⋯⋯』
「ほら、このままだともっと酷くなっちゃうから、お布団いこ?」
『うん⋯⋯』
お布団に連れていってもらったぼくはそこからの記憶はなかった。
♢
先輩に教えてもらった住所へ向かい、インターホンを鳴らしても返事がない。
こんこんと何度かノックするととてとてと歩く音が僅かに聞こえた。
「とりあえず無事なのかな?」
そう思っていると鍵の開く音が聞こえた。
するとドアが開いたと思ったら今にも倒れそうな優希くんが。
ねこさんパーカーが可愛いとか言っている場合じゃない、本当に辛そうだ。
「優希くん!?大丈夫!?」
私は思わず駆け寄った。
「凄い熱、今冷えピタとか持ってきたからね。お布団いこ?」
『かおるおねえちゃん、ありがと⋯⋯』
そう言いながら優希くんは私に抱きついてきた。
まるで子供が母親に甘えるように。
「ゆ、優希くん!?」
『ぼく、さみしくて、かおるおねえちゃんがきてくれなかったら⋯⋯』
今にも泣き出しそうな顔で優希くんは私を見上げながらそう言った。
「うん、一人暮らしだと不安だよね。私が来たからもう安心だよ」
頭を撫でてあげながら言うと優希くんは辛そうにしながらも微笑んだ。
『うん、かおるおねえちゃんありがとう⋯⋯』
「ほら、このままだともっと酷くなっちゃうから、お布団いこ?」
『うん⋯⋯』
まずは私は優希くんを寝かせてあげる事にした。
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