120:薫さんがお見舞いに来てくれたよ
『すぅ⋯⋯』
優希くんが安心したのかベッドの上で寝息を立てながら眠っている。
「ようやく眠れたみたい⋯⋯」
どうしてこんな状況になっているのか分からないけど、とりあえず優希くんが無事で本当によかった。
「普段から頑張ってるんだから、今日くらいはゆっくり寝てていいからね」
私は自分にだけ聞こえるかどうかの小さな声で呟きながらそっと頭を撫でていた。
『んっ⋯⋯』
「あぁっ、思わず撫でちゃった」
『すぅ、すぅ⋯⋯』
「良かった、起こしちゃったかと思った」
私はほっとして胸をなでおろした。
「よし、優希くんが起きるまでにちゃんとしたお粥でも作ってあげようかな!材料は買ってきたし、小さい土鍋も買ってきたし!」
私はキッチンへ向かい、優希くんが食べられそうなお粥を作ることにした。
生米から作るお粥は美味しいし、喜んでくれるかな。
「あっ、その前に冷えピタ貼ってあげないと」
私は優希くんのおでこに冷えピタを貼ってあげてから調理を開始した。
⋯⋯流石に失敗はしないよ?普段からそこそこ料理はしてるからね?
そして料理の完成した私は優希くんが起きるまで側にいてあげることにした。
まるでトランス状態みたいだったからちょっと不安だし、仕方ないよね。
⋯⋯そして私は気付けば優希くんの隣で眠ってしまっていた。
♢
「ん⋯⋯頭が痛い⋯⋯」
目が覚めた僕はガンガンと痛む頭を押さえながら起きあがろうとした。
でも体が思うように動かない。
「相当酷い風邪ひいたのかな僕」
そして飲み物だけでも飲もうと無理矢理起き上がると僕のベッドの横に薫さんがいた。
「え?」
何で薫さんが?
「ん⋯⋯ふぁ⋯⋯私寝ちゃってた⋯⋯?
あれ?優希くん起きて大丈夫?」
「あまり大丈夫では、ないですね⋯⋯」
僕は隠す事でもないので正直に言った。
「とりあえず意識は戻ったみたいで良かった」
「あの、全く記憶が無いんですけど、一体何があったんですか?」
「覚えてないの?」
「わざわざ来てくれたって言うことは何かあったのかな、って思ったくらいです⋯⋯」
「えっとピヨッター、私のスマホからでごめんね。まだ起きるの辛いと思うから」
「ありがとうございます」
そして渡されたスマホで僕のピヨッターを見ると、どうやら僕が助けを求めるツイートをしていたらしい。
「こ、こんなツイートを!?」
「私も何かあったのかと思って先輩に優希くんのお家の場所を聞いたんだ。それで着いてみたら優希くんふらふらだったから⋯⋯」
「もしかして」
そういえば朝寝る前にピヨッターでお休みする告知をしたけど、あの時まさか脳内で切り替わっていた⋯⋯とか?
「何か思う所でもあった?」
「朝に風邪でお休みする告知をしたと思うんですけど、もしかしてその時に意識が朦朧としていたから脳内でスイッチが入っていた⋯⋯とかですかね?」
「確かに有り得そう。まぁでも体調悪いのは確かでしょ?お粥作ったんだけど食べれそう?」
「えっ?いいんですか?」
「うん、気にしないで。 今持ってくるからね」
「ありがとうございます⋯⋯」
「あっ、飲み物はお水かスポーツドリンクどっちが良かったかな?」
「スポーツドリンクでお願いします!」
「うん、分かったよ。
ゆっくりしてていいからね」
「はい! 凄く助かります!」
「困った時はお互い様だよ」
そう言って薫さんははにかみながらキッチンに向かっていった。
そしてお椀に入ったおかゆと塩、ペットボトルを持ってきてくれた。
「はい、お待たせ。自分で食べれる?」
「ありがとうございます、多分大丈夫だと思います」
僕はそう言ってお椀を受け取ろうとすると手に力が入らない事に気が付いた。
「優希くん?」
「あ、あはは⋯⋯手に力が入らなくて⋯⋯」
「そっか、じゃあ仕方ないね。」
そう言いながら薫さんは僕の横に座る。
「はい、あーん」
「え、えぇ!?」
「いいから、自分で食べれないからって食べないでいるのはあんまりよくないよ?
食欲無いわけじゃ無いんでしょ?」
「う⋯⋯そうですね⋯⋯」
それを言われると否定出来ない。
僕は羞恥心を抑えながら口を開けた。
「ん、じゃああーん」
「はむっ」
お粥の塩分が身体に染み渡る気がする。
「美味しいです!」
「そっか、よかった、じゃあ次ね」
「はい!」
僕の身体は本当にお腹が空いていたのか持ってきてくれたお粥をペロリと平らげてしまった。
凄く恥ずかしかったけど。
「ごちそうさまでした、薫さん本当にありがとうございます」
「全部食べれたみたいでよかった」
そう言って薫さんはキッチンへ行きお椀などを洗ってくれた。
「優希くん、私はそろそろ戻ろうかなって思うけど、何かあったら連絡してね。本当に遠慮なんてしないでいいからね」
「はい!凄く助かりました!」
「さっきよりも大分顔色良くなってきてるから安心したよ、普段頑張りすぎてるんだから今日みたいな日はしっかり寝ておかないとダメだからね?」
「はい⋯⋯今日はしっかり寝ておきます!」
「それじゃ、またね。」
「はい!薫さん、ありがとうございました!」
そして薫さんが部屋を出ようとした時にはっと何かに気付いたようで僕に言った。
「鍵はかけておかないとダメだったね、起きれるかな?」
「あっ、少しくらいなら大丈夫ですよ!」
僕はベッドから出てゆっくり歩きながら玄関へ向かった。
「それじゃお大事にね。」
「はい、本当にありがとうございました!」
そして薫さんが帰っていった。
「鍵は⋯⋯よし」
僕は再びベッドに戻り、寝る前にピヨッターに一言、投稿した。
♢
白姫ゆか
@Shirahime_yuka
ゆるママ、今日は本当にありがとう!
ボク、本当に嬉しかったよ!
心の中で思っていた事をそのまま、投稿した。
そのあとすぐに安心出来たのか、眠りについた。
余談ではあるがこのあとすぐに薫がゆかのピヨッターに返信し、そのてぇてぇ空間にやられる人が続出したとか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます