113:ハロウィンコスプレイベント!(後編)
ありすちゃんと言う女の子が走り去っていったのをボクは見ていたけれど、何て声をかければいいのか分からなくて後を追えずにいた。
「んんwwwありすちゃんがどこかへ行ってしまった様子www」
「うわっ!マジじゃん!どこ行ったんだろ⋯⋯」
「あぁ⋯⋯私ったらありすちゃんの撮影に来てたのに本命を疎かにしちゃうなんて⋯⋯」
ありすちゃんのファン?オタク?の人達があたふたとしながら姿を探しているようだった。
『えっと、ありすちゃんってあのお姫様みたいな格好の女の子だよね?』
「そうでござる!」
「そうそう!」
「その子です!」
『それだったら向こうの方に走っていったよ!』
ボクはその女の子の走って行った方を教えてあげた。
「ありがとうでござる!」
「ありがとう!」
「助かります!」
そう言うとオタクの人たちは走っていった。
そしてしばらくするとありすちゃんと一緒になって帰ってきた。
『あれ?戻ってきた?』
「どうしたんだろうね?」
「良い感じの雰囲気になってる気がする!」
そしてありすちゃんはボクの前に来ると一言。
「さっきはごめんなさい!
わたし、皆を取られたと思って、あんなこと⋯⋯」
そう言ってボクに謝ってきた。
『大丈夫、ボクは気にしてないよ』
そう言いながらボクは頭を撫でてあげる。
「ほんと?」
『うん、ほんとだよ』
「ありがとう、お姉、ちゃん?」
ちょっと恥ずかしそうにありすちゃんはボクの事をそう呼んだ。
『!?』
お姉ちゃん⋯⋯ボクが?
「ゆかちゃんをお姉ちゃん呼び⋯⋯新しい」
「新しい⋯⋯」
「これが姉妹百合ですか?」
「新しい道が開けた気がする」
「待て、片方は男の娘だぞ!」
「それがいいんじゃないか!」
「おうふwwwこれは新しいですぞwww」
「うん、てぇてぇ⋯⋯」
『うん、お姉ちゃん!いい響き!ボクはお姉ちゃんだから!』
「⋯⋯でもお兄ちゃんの方が良かった?」
『知ってたの!?』
「さっき、教えてもらったから⋯⋯」
『うーん、ボクのことは好きなように呼んでくれたらいいよ?』
「じゃあお姉ちゃん可愛いからお姉ちゃんで!」
『うん!分かったよ!』
「それで、お姉ちゃんにお願いが一つだけあるんだけど、いいかな?」
『ボクに? 何かな?』
「い、一緒に撮影させて欲しいな!」
『うん、いいよ!』
そしてボク達はオタクの人達やカメコの人たちに囲まれて撮影会を始めた。
その撮影会はお昼過ぎになるまで続いて、結構疲れちゃった。
♢
ボクは運命の出会いをした。
ボクにはひっそりと推していた可愛い女の子、ありすちゃんと言う子がいる。
そしてその隣に物凄く可愛い子がいた。
周りの喧騒に耳をすませてみれば彼女は白姫ゆかちゃんと言うらしい。
ボクはスマホを手に取り検索するとどうやらVtuberをしているらしい。
おまけにとんでもない情報が入ってきた。
「男の子⋯⋯? あの可愛さで?」
何か運命めいた物を感じたボクは、即座に知り合いがやっている探偵へ依頼して、その子の情報を得る事に決めた。
♢
俺の名前は世界の予言者、と言っても本名じゃない。
掲示板でのコテハンだ。
元々予言者って名前でやってた訳じゃ無くて、たまたま言った一言が当たってこうなってしまっただけなんだが。
そしてそんな俺は実は今岐阜にいる。
というか俺の住んでる場所が岐阜なんだけど。
夏コミの時も初日から休みはあったけど移動日にせざるを得なくて、なくなくゆかちゃんのブースに行けなかったっけか。
こう言う時地方民は辛いんだよな。
まぁ、ボイスはネット販売してくれたから助かったけど。
そして俺は今散歩がてら図書館へやってきた。
図書館っていいよな、無料で一日過ごせるんだからな。
と、思ったらどうやら何かイベントをやってるらしい。
そうか、今日ハロウィンだっけ。
夜にゆかちゃんもハロウィン配信やるって言ってたし、それまでの時間潰しのつもりで来たけどなかなか運が良かったらしい。
「まぁ、岐阜だしそこまでレベルの高い人はいないか⋯⋯」
ノリでコスプレしてる人や友人に罰ゲーム代わりでやらされてるとかそう言うノリのコスプレが多い。
もちろん、コミケにいるレベルが高すぎるだけなんだけどな。
と言っても酷いわけじゃない。
普通に見れるレベルではある。
ただ、ゆかちゃんのコスプレを見ると⋯⋯な?
そして妙に人だかりが出来ている場所を見つけた。
あそこの人は人気があるのかね、ちょっと見てみるか。
そう思い俺はその集団の中に入っていった。
「うわっと、人多いな」
俺は何とかコスプレイヤーの前に来ることが出来た。
「うわっ、レベル高っ」
思わずそう呟いてしまうのも無理は無いくらいの子がそこにはいた。
まるでゆかちゃんみたいな女の子とお姫様と呼ぶのがよく似合う小さな女の子。
なんだこのてぇてぇ組み合わせ。
『あれ?そこにいるのって⋯⋯』
ゆかちゃんみたいな女の子が俺を指さしながら声をかけてきた。
『コミケで会った人だよね?』
「え?まさか、本当にゆかちゃん?」
『そうだよ♪』
「うわあああああああああまじかああああああああ!!!!!!」
俺、なんて運がいいんだよ!
昔福岡か岐阜のどっちか好きな方に転勤って言われた時は死ぬかと思ったけど岐阜にしてよかったあああああ!!!!!!
あの時の直感はこの時の為だったのか!!
『お、お兄ちゃん?』
「もう、俺の人生に悔いは⋯⋯ないぜ⋯⋯」
『死んだらだめだよ!?』
「わかった」
スッと立ち上がる俺。
推しに最期を看取ってもらうのも悪くはないと思ったんだが⋯⋯
「それにしてもなんでこんなところにゆかちゃんが?」
『えっとね、名古屋とかみたいなとこだと人が多いから恥ずかしいのもあるけど、知ってる人の多そうな場所はちょっと迷惑になるかなって⋯⋯』
「なるほど、またたまにこっちには来たりするの?」
『来ても不定期⋯⋯かな?』
「そっか、また来てくれたら嬉しいな」
『うん、その時はまたピヨッターで言うね!』
「待ってる!あっ、そうだちなみにこの情報は言わない方がいいよね?」
『そうだね!お兄ちゃんとボクの秘密!』
「!!??」
「わかった⋯⋯とりあえず写真だけ、いいかな?」
『うん、いいよ!あっ、ちなみに写真は夜になったらあげてもいいよ!』
「本当?それは嬉しい!」
そして俺も他のカメコと同じようにゆかちゃんを撮影して邪魔にならないうちに退散することにした。
「それじゃ、ゆかちゃんまたコミケで!」
『うん!お兄ちゃんまた会おうね!』
今日は最高の一日だったな。
そう思いながら俺は家に帰っていった。
♢
夕方になりそろそろおしまいの時間がやってきた。
ありすちゃんはまだ歳もいってなさそうだけど、大丈夫なのかな? もう結構良い時間だけど。
『ねぇ、ありすちゃんってお家に帰らなくて大丈夫なの?』
「おうちに?大丈夫だよ!ママとパパがここにいるから!パパなら⋯⋯あそこにいるね!」
そう言ってありすちゃんが指差すと物陰に隠れた男の人が。
あれ、逆に怪しく無いかな⋯⋯?
「ママは⋯⋯そろそろ来ると思う」
そう言うと、ちょうどこちらにやってくる人が。
「ありすちゃん、お待たせ!」
「ママ!」
ありすちゃんのママは、銀色のコートのような服を着ていて、コートで顔も隠れていた。
頭には銀色のテンガロンハット。
縁は青色になっている部分が見える。
これ、何のコスプレだろ⋯⋯?
「あら、もしかしてありすちゃん、お世話になってたの?」
「うん!お姉ちゃんが一緒にいてくれたの!」
「そうなの、よかったわね」
「うん!」
『ええと⋯⋯』
「えっと、んっ、あー」
『俺の名前は
ありすちゃんのママが突然クオリティの高い声真似を始めた。
『お、おぉ、凄い⋯⋯』
「なにこれ、凄い⋯⋯」
「というか懐かしすぎるよ。
私下手すると生まれてないんじゃないかな?」
ゆるお姉ちゃんもそう言うくらいだから相当古い作品なのかな?
「いやー知ってる人なかなかいないんですよ、○装錬金。だって二十七年くらい前に連載始まった作品ですからね」
「本当に生まれてなかった⋯⋯」
「曲だけは有名な作品って感じですよね」
『もしかして、真っ赤な○い?』
「「「そうそうそれそれ!!」」」
「一時期のゲラゲラ動画で話題になったんですよね、私黄金期世代だったもので⋯⋯」
「私は有名になった後でしたね、十周年とかそのあたりに見たことあるくらいでしたかね?」
「例のアレとか酷かった時代だね」
「例のアレはヤバいですねー」
『例のアレ?』
「うん、ゆかちゃんは知らなくて良いと思う」
「あれ覚えると大変なことになっちゃう」
「私も人にはあれ勧められませんね」
『ぎゃ、逆に気になるんだけど⋯⋯』
「今でも使われる言葉の元ネタとだけ言っておくかな⋯⋯」
「言葉は良いとしても元ネタは知らない方が幸せですよ」
「私もそう思う⋯⋯」
『うん、聞かないでおくね⋯⋯』
「ママ、わたしその話わかんないよ」
「あちゃーいけない、どうしても懐かしいネタが来ると、ごめんね?」
「それにしても凄い声真似でしたね」
「ありがとうございます。
声真似だけは自信あるんですよ」
『まるでまねおじさんみたい!』
「ぶふぇっ!」
「「『?』」」
「え?どうして私の名前を?」
「ママ!?」
「あっ」
「ママ、自分でバラしてどうするの⋯⋯」
「あ、あははははは⋯⋯」
『え?本当にまねおじさんなの?』
「そうですよーまねおじとか言ってますけど中身はただの人妻ですよー⋯⋯」
『それだったらお久しぶりだね!ボクは白姫ゆかだよ!』
「へっ?」
「え?ほんとに?あの時のお絵描きの大森林の時のゆかちゃん?」
『そうだよ!』
「凄い偶然ですねぇ⋯⋯」
『だね⋯⋯』
「とりあえず更衣室の利用時間もうすぐ終わっちゃいますし、移動しましょうか」
『うん!そうだね!』
そしてボク達は着替えをするために更衣室へ移動を始めた。
ボクが中に入る頃には人は殆どいなかったのでゆったりと着替えをする。
そして外に出て皆が出るのを待っている間に白姫ゆかから僕に戻った。
「お待たせ優希くん」
「お待たせ!」
薫さんと由良さんが先に出てきたようだ。
「大丈夫ですよ!」
すると、少し経ってありすちゃんとまねおじこと汐音さんも出てきた。
「お待たせしました。」
「うわー本当にお兄ちゃんなんだ⋯⋯でもお姉ちゃんぽい?」
ありすちゃんが僕を見ながらそう言った。
「それは昔から言われてます⋯⋯」
「男の子なのに可愛いってずるいと思いません?」
薫さんまで⋯⋯
「「「ずるい」」」
「うぅ⋯⋯」
恥ずかしくて俯いているとそれも可愛いと言われる。
どうすればいいの⋯⋯?
「と、とりあえず今日は僕配信があるのでそろそろ帰ろうと思うんですけど、汐音さん達は?」
「私達は今からご飯を食べて帰るつもりなのでここでお別れですかね?」
「お兄ちゃん、またね!」
「うん、またね。ありすちゃん」
そう言って僕達はこの場所で別れた。
ありすちゃん達は車で来ているようで、駐車場へ向かって歩いていった。
僕達は行きと同じく、バスに乗って駅へ向かい名古屋へと帰っていった。
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