111:ハロウィンコスプレイベント!(前編)
今月ももうすぐ終わりを迎える頃、薫さんから一通のメッセージが届いた。
「ハロウィンの衣装について?」
そういえば今月の末はハロウィン、特に何も予定を考えていなかった僕はメッセージをよく読んでみると衣装は3Dモデルと同じデザインのコスプレの2つが用意出来たって書いてある⋯⋯ってコスプレ!?
「コスプレ?まさか⋯⋯」
勿論、コスプレイベントに行かないかとのお誘いもセットになっていた。
「流石に大きなイベントには行かない⋯⋯よね?」
出来れば人の少ない所がいいと思い、薫さんにそう返信した。
返事が戻ってくると、岐阜の規模の小さなイベントはどうかな?と書いてあったので、僕も調べた感じ規模がそこまで大きくない事もありここなら、と了承した。
申し込みの期限もあるのですぐに申し込みしておくねとメッセージがきたのでお願いすることにした。
実はハロウィンのコスプレイベントって行ったことがないから少し楽しみだったり。
今週末の土曜日にイベントがあるのでそれに合わせて配信の時間も変更しておかないとね。
そして時が経つのは早く、気付けばもうハロウィンの日になっていた。
♢
今日は朝少し早めに家を出て名古屋駅の金時計で待ち合わせをすることになっているので僕は八時前に着くように金時計に向かった。
「薫さん、由良さんおはようございます!」
「優希くんおはよう」
「優希くんおはよ!」
僕が到着したのとほぼ同じタイミングでやってきた。
「今日は岐阜のメディア○スモスに向かう感じで良かったんですよね?」
「うん! そこで大丈夫だけど、私はあんまり岐阜に詳しくないから案内お願い出来るかな?」
「はい!任せてください!」
そして僕達は岐阜行きの電車に乗り岐阜駅へ向かった。
三十分も経たないうちに電車は岐阜駅に到着し、僕達は駅内から出てバスターミナルのある場所へ歩いて行った。
バスターミナルの近くには金色に輝く織田信長の像が。
その像を横目に見ながら市内ループ線に乗り、メディア○スモスへと向かった。
メディア○スモスに到着するとまだ早かったらしく人の数は少なかった。
先に着替えを済ませる事にした僕達は着替えを薫さんから受け取り、更衣室へと向かった。
♢
「今回の衣装は⋯⋯猫耳?」
前のパーカーとは違い、頭に直接付けるタイプの黒の猫耳カチューシャと、猫の手の手袋、そして黒いフリフリのドレス。フリル部分は白で出来ていて、ドレスのお尻の近くから尻尾も生えている。
しかも中に何かのスイッチが入っていてそれを押すと耳と尻尾がぴょこぴょこと動き始めた。
「なにこれすごい!」
僕は思わずテンションが上がってしまい、急いでこの衣装を着た。
衣装を見た僕は鏡を見ながらスイッチを入れた。
少し機械音がするけど、ぴょこぴょこと動く耳と尻尾に僕は感動を覚えてしまった。
「何これ可愛い⋯⋯」
着ているのが自分だということも忘れクルクルとポーズを取ってしまう。
猫の手袋を手にはめて、鏡の前で一言。
「にゃ、にゃーん」
そこで一瞬で我に返った僕は何をしているんだろうと一瞬頭を抱えた。
でも、似合ってるとは、思う。
着替えが終わった僕は更衣室を出ようとした時に他の人がちょうど入ってきた。
僕はすれ違いで更衣室を出て行ったが何故かその男の人はフリーズしていた。
「えっ?男?えっ?」
その男の声が優希に届くことはなかったが、その男の人は一度入り口に戻って入る更衣室が間違っていないかを確認していた。
♢
「お待たせしました!」
「あっ優希く⋯⋯」
「優希く」
「「(これはだめだ可愛すぎる⋯⋯)」」
「?」
僕は何故かフリーズした二人の前で首を傾げると二人のフリーズが解けた。
「す、凄く、似合ってるね。」
「うん、やばい⋯⋯似合いすぎてる」
「これ凄いんですよ!見ててくださいね!」
僕は手袋の中に仕込んでおいたスイッチを入れる。
すると耳と尻尾がぴょこぴょこと動き始める。
「「んんんんんんんん!!!!!!」」
二人は僕から顔を背けて何か話しはじめた。
「(お姉ちゃん!これはやばいって!死人が出るよ!?)」
「(お持ち帰りしちゃダメかな⋯⋯)」
「(お姉ちゃん!?)」
「(だって可愛いんだもん・・・)」
「に、似合って無いですかね?」
僕は少し不安になり二人に聞いた。
「ににににあってる!!もう!やばいくらい!」
「す、凄く、似合ってるよ⋯⋯」
「えへへ、良かったです」
僕は嬉しくなり笑顔でそう言った。
「「(オイオイオイ、死んだわ私)」」
「でも、薫さんと由良さんも似合ってますよ!
薫さんと由良さんの魔女と言うか魔法少女?衣装、凄く可愛いです!」
「う、うん、ありがと⋯⋯」
「優希くんありがと⋯⋯」
それからイベントの開始まで少し時間があったのでメディア○スモス内にあるすたあばっかすでコーヒーを飲みながらイベントの開始を待っていた。
♢
「ふふふ、今日もわたしが一番可愛いんだから!!」
鏡の前で自分の可愛さを再確認するわたし。
わたしはいつもこのメディア○スモスで定期的に行われているコスプレイベントに参加している。
最初の頃はあまり注目されなかったわたしだったけど、ちょっと悔しくて、可愛くなる為に努力を始めたの。
そうしたら少しずつわたしに注目が集まるようになった。
楽しかった。
正直、注目を浴びるのが気持ちよかった。
そして注目を集めたわたしはいつも会場に足を運んでくる沢山のオタクたちを夢中にさせる。
夢中になったオタクはそれからわたしの事を撮りに来てくれるようになる。
化粧して可愛い子ぶるだけでほいほいと釣れるオタク達、単純でおバカさんだけど、わたしは嫌いじゃないよ。
「ふふふ♪今日も会いに行かないとね♪」
「ざこオタク達に❤︎」
意気揚々と更衣室を出て行ったわたし、でもそのテンションが続いたのは⋯⋯この時までだった。
♢
「⋯⋯ふふっ、あの子は今日も可愛いなぁ」
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