109:初めて企画系コラボに参加したよ!

 文化祭も終わり、気付けば10月も中頃、そんなある日に華さんから一通のメールが届いた。


「コラボの誘い⋯⋯?」

 どうやらとあるゲーム企業がVtuberを集めてゲームの配信をするらしい。


 このゲームのコラボで司会者を華さんがやる事になったらしく、僕にこうして声をかけてくれたみたい。


 参加条件はVtuberである事のみで、他事務所からの参加、個人勢もOKなんだとか。


「どんなゲームをやるんだろう?」

 気になってゲーム名を見てみると⋯⋯


「おえかきの大森林?」

 かなりの有名ゲームだった。


 このゲームはお題を一人が出されてそのお題に沿った絵を描く。


 そしてそれを見ている人が想像して答えを入力するというシンプルなゲーム。


 かつてあった物がアップデートで大森林になって帰ってきた大人気リメイクゲーム。


 そしてゲーム性がシンプルであるが故に難しく、お題を描く人の絵のセンスが問われるゲームでもある。


 僕は全く自信がないけど。


「これ僕にお題当たったら終わるよね⋯⋯」

 でも楽しそうだしなぁ、と考えた僕は参加してみる事にした。


「配信日は来週の土曜日かぁ、ちょっと楽しみ!」


 その後、楽しみに待っているとあっという間に土曜日がやってきた。



「はーい、皆さんこんふわりん。浮雲ふわりとー」

「聖曽なのなの」

 司会を務めるのはふわりお姉ちゃんとなのさんの二人で、今ボクはVtuber達を集めたバーチャル空間の中に紛れ込んでいた。


 そして肝心のゲームへの参加者は三十人で、しかもVtuber限定だから全員が配信者。


「まず参加してくれてるVtuberの人の紹介から行きましょうかー」

「それがいいの」


「まず一人目はバーチャルおじさん受肉Vtuberことまねおじさんですー」

「よろぉーしくぅーお願いしますぶるぁぁぁぁ!」

 ○本さんの声真似をしながらまねおじさんが挨拶をする。


「この声で中身が女の子ってありえないの」

「ちょ、ちょっとなのさん!?」

 なのさんがかなりぶっちゃけた事を言ってふわりお姉ちゃんが慌てている。


「あはは、バレてるなら別にいいですけどね。リスナーさんも知ってて配信見に来てくれてますし」

「いいんですか!?」


「という事で次へ行くの、人数多いから紹介も大変なの」

「うぅーわかりましたー」


「それでは次は⋯⋯」

 そう言って何人ものVtuberの紹介をしていく。


 一人当たりは少しの時間なので紹介しきれない人も多いみたいだね。


 大体はVライブといまなんじの所属Vtuberが多いけれど、少しだけ個人勢が混ざっていて、個人勢の人はある程度紹介してあげているあたり優しさを感じるね!


「それでは最後に、今期待の新人Vtuberかっこ私のお気に入りかっことじるの白姫ゆかちゃんですー!」

『ふわりお姉ちゃん今かっこいらなかったよね!?』

「気のせいですよ気のせい」

『絶対違うよね!?』

「と言う訳でゆかちゃんでした!」

『そんなさらっと流しちゃうの!?』


「と言うわけで、メンバーも揃った事ですし、私達も参加しながらおえかきの大森林やっていきましょう!」

「そうなの、今日はどんな画伯が飛び出すか楽しみなの」


「ちなみにVライブ側からはシュバルツさんの代わりに今回はゆりさんが入ってくれています!」

「あの、私、司会で呼ばれたんですけど。それに絵は⋯⋯」

「入ってくれているの」


「あの⋯⋯」

 慈悲は無かった。



『うぅ、緊張する⋯⋯』


:ゆかちゃんきちゃあああああ

:この子がゆかちゃんですか

:ふわちゃんお気に入りの子だっけ

:なのちゃんも結構気に入ってるっぽいよ

:というか個人勢結構おるのな


『こ、コメントの動きが早すぎてよ、読めないよ!?』


:ははは、そらそうよ

:当たり前だよなぁ

:なんたって同時視聴者50万だからな!

:追いつけたらやべーよ


『は、反応できなくてごめんねお兄ちゃんにお姉ちゃん!』


:うっ

:くはっ

:んっ...

:かわ...

:いい...


「なんかゆかちゃんのお兄ちゃん呼びに多くの人がやられちゃってますけど、一問目行ってみましょうかー」

 そしてお題を描くVtuberがランダムに選ばれた。

 その人がお題の絵を画面内に描き始めた。


『なに、これ?ねこ?』


:なにこれ

:犬じゃね?

:いや待て、なんか持ってね?


『ねこ、小判?はっ!?』

 ぴんぽーん!

 答えが思い付いたその瞬間に誰かが正解した音が流れた。


-A.猫に小判


 答えは予想通り猫に小判。


『あああああ!!!!間に合わなかったよおおお!!!!』


:今のは素振りみたいなものだな

:ヤバいやつだと一筆目で分かるんだろ?

:なにそれエッグ

:ゆかちゃんの一般人アピール...


 それから何度か問題が出るも無惨な結果に⋯⋯


 そして20問目になった瞬間、その時がやってきた。


-お題はタイタニックです-


 た、タイタニック!?

『えっ、どうしようこれ⋯⋯』


 まず僕は船を描いた⋯⋯つもりだった。


:なにこれ

:??????

:これは、うん

:画伯・・・だな


『だ、誰も正解出来ない!?』

 あっ、そうだ、船の先に二人が立ってるんだっけ、それを付け足せばいいんだ!


『えっと、ここに人を立たせて⋯⋯』


:ん?

:なんか見たことあるような...

:いやでも...

:万歳してるよな...

:というかあれはなに?


『なんで!?めっちゃ表現出来てないかな!?』


:ごめん、わからん...

:なるほど、わからん

:長方形っぽいやつの上に棒人間っぽいのが乗ってる...


『そうか!あれも足せばいいんだね!』

 そう言ってボクは青色のペンで船の半分を水の下に沈ませた。


 そうすると残り10秒になってボクは更に焦り始めた。


 ぴんぽーん!

-A.タイタニック


『うわぁぁ!!危なかったぁ!!』


 ギリギリで正解してくれたおかげでなんとか少しポイントをゲット。

 ドベは、回避出来るよね?


 そして終盤になり、ボクもたまに正解を出して安心しているとお題を描く人が見覚えのある人に。


『あれ、お父さんだ⋯⋯』


:草

:画伯候補きた

:どんな絵が飛び出すのか

:お題次第じゃろ

:ゆりちゃんの絵気になるw


 そして絵を描き始めたお父さん。

 なにこれ。


『なにこれ』

「なんですかこれ」

「えっ何これ」

「何すかこれ」

「一体これはなんなの」

「これは、マジでわかんない」

「先輩wwwこれはwww」

「うぇっひっひっひwwwなにwwこれwww」

「こwれwはwひwどwいw」


 目の前に映し出されたのは


 ぐにゃぐにゃしたものに目が付いた謎の生物だった。


:なにこれ

:神話生物か何か?

:SAN値下がった

:でもちょっと可愛いかも

:何だろうゆるきゃらの失敗作というか

:うん、やばい

:あばばばばばばばばば


「ふぅ、力作です」

 そう言いながら成し遂げたような表情を見せるお父さん。


:力作!?

:これで!?

:???????????

:何か全くわかんないけど!?


『あっ、分かった』


:ゆかちゃんさん!?

:アイエエエエエエエエエエ!?

:わかった!?わかったん?なんで!?


『みみず、っと』

 ボクがそう答えを書くと正解音が鳴った。

 ぴんぽーん!

-A.ミミズ


「わかるわけないやん!!!!」

「ミミズにw目www」

「流石先輩www」

「ミミズに目は流石に草っす」

「草なの」

「おハーブ生えましたわ」

「ちくわ大明神」

「誰だ今の」

「流石ゆかちゃんですね」

『お父さん、ボクじゃないとわかんないよあれは⋯⋯』

「そ、そんなに酷いですか?」

『昔描いてくれたやつにそっくりだったよ⋯⋯』

「そ、そんな理由で当てられたんですか⋯⋯」


:過去の記憶との一致は草

:結局普通じゃわからねーじゃねぇかwww

:だめだこのゆりちゃん

:ミミズwww

:目のついたミミズwww


 そんな感じで進んでいき、とうとう最終問題の時間に。

 今度は三人選ばれて一緒に描くという協力プレイ。


 誰が選ばれるのかな?


-お題はパンツです-


『ってボクなのおおおおおお!?!?!?』


:草

:またゆかちゃんか


「いやああああああああ!!!!」


:ゆりちゃんもかwww

:草w

:もう一人は誰だ!


「おや、私の出番のようですね」


:○リーザ様!?

:いや違う!!!

:まねおじだ!!!

:とうとうきたのかw


「って、このお題⋯⋯なんなんですかっ!」


:おっさんアバターで女の子の声出しながら恥ずかしがらないでwww

:絵面がひでぇwww

:草不可避


『と、とりあえず描いていこう⋯⋯』

 ボクはパンツの種類であるショートパンツを描く事にした。


 普通に服のことだろうし、問題ないよね。


 さらさらっと描くとまぁまぁ見えるレベルのものが出来たと思う。


『よしっ!』


:うん、あんまり上手ではないけどまだ見える...かな?

:ズボン?

:何だろう服系かな?


「とりあえずこれを描いておけばいいですかね⋯⋯」


 そう言いながらゆりはトランクスのような何かを描き始めた。


:なにこれ

:四角形に線?

:トランクス?

:いやトランクスなら繋がってないでしょ

:まじでなんだこれ


「うぅ、お題出した人恨みますよ⋯⋯」

 さらさらっとショーツを描くまねおじ。


:あぁ!!!そっちか!!!

:というかまねおじ勘違いしてるぞ...

:パンツはパンツでもそっちではない...

:まねおじ、お題を出すのはシステムなんや...


-A.パンツ(衣服)


『なんで二人とも下着の方描いてるの⋯⋯』


「⋯⋯」

「⋯⋯」


:効いてる効いてるw

:そりゃ恥ずかしいわなw

:パンツルックって言うのにwww


 そのまま二人が恥ずかしがったまま配信は終了の時間を迎えた。


「それではお疲れ様でしたー」

「なかなか上位は接戦だったの」


「画伯は、言うまでもないですね」

「ゆりちゃん一択なの」


「優勝者の紫電の秋夜さんには後ほど景品の画伯の絵をプレゼントしますね!」

「ぶっちゃけいらないの⋯⋯」

「え?僕がもらうんですか?先輩のミミズ」

「よかったですねー!」

「おめでとうなの」

「いらないんですけど!!!!!!」


:マジでいらなくて草

:いらねぇwww

:いらなさすぎるwww

:秋夜くんやったね!!!



「それでは皆さん、おつふわりんー」

「おつかれなの」

『お疲れ様、お兄ちゃん、お姉ちゃん!』

「⋯⋯お疲れ様でした。」

「おつかれさまでした⋯⋯」


-この配信は終了しました-

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