103:文化祭三日目!①

 目覚ましもセットせずに疲れ果てて眠ってしまった僕はふと、夜中に目が覚めた。


 まだ起きるにも早い時間で、意識がぼーっとしていた。


 ただ、目覚ましをセットしていない事を思い出した僕は寝ぼけ眼を擦りながら目覚ましをセットした。


 そして直ぐに二度寝した僕が次に目が覚めたのは目覚ましの音が鳴った時だった。


「ふわぁ⋯⋯」

 疲れがまだ残っているのか普段と比べると目覚めがあまりよくないから、とりあえずシャワーを浴びる。


 シャワーから出る頃には意識もだいぶはっきりしてきたので朝ご飯を用意しようと思ったんだけど、今日は少しだるくて面倒に感じちゃった僕は結局シリアルを食べることに。


 時間が経つにつれ体調は元に戻っていったけれど、ふと洗濯した衣装を取っていない事を僕は思い出した。


「あ⋯⋯どうしよう」

 そして僕は盛大に勘違いしていた事を知らされた。


 回しておいたと思っていた洗濯機が回っていなくて、洗濯物は全部かごに入ったままになっていた。


「うわぁぁぁ!!どうしよう!!今日の衣装どうしよう!!」

 思わずテンパって小声で叫ぶ僕。


「そ、そう言えば今日早めに来る人多いからクラスメイトの誰かに聞いたら教えてくれないかな⋯⋯」

 僕はそう考えて、文化祭の準備が始まる際にクラスメイト全員が参加したメッセージアプリのグループにメッセージを送った。


 すると、昨日も何人か同じことやってる人いたから持ってる衣装持ってこればいいよと返信が。


「持ってる(コスプレ)衣装!?」

 僕が知らなかっただけで最近は普通に持ってるものなの!?


 ただこれは優希が勘違いしただけで実際は持っている服をと言いたかっただけなのだが、相手もまだ寝起きで衣装と書いてしまったのが決め手となり、優希は持っている衣装から見繕う事に。


 洗濯済みで着ても暑くない衣装⋯⋯

 ふと目の前に入ってきたのは僕もお気に入りのあの衣装。


 うん、これでいいかな?

 一般販売もされているし、バレないよね。


 そして準備を終えた僕は学校へと向かって行った。


 学校へ到着した僕は昨日一昨日と同じようにパスタのソースを仕込む。


 今日はペスカトーレを仕込むけどこれは正直言って結構面倒だったり。


 使う材料が結構多いから僕がこれを担当する事になった。


 にんにくはみじん切りにして、オリーブオイルを入れたフライパンに鷹の爪と一緒にいれて弱火で炒める。


 ここに解凍したシーフードミックスを入れて軽く炒めたら料理用の白ワインを投入して蒸し焼きに。


 汁気が無くなってきたらトマト缶とローリエを入れて塩胡椒で味を整えたら完成!

 あとは茹でたパスタを入れたらオッケーだね。


 これを大量に仕込むだけなので時間はかかるけど、美味しく出来たからよしとしようかな。


 そして仕込みを終えると時間が少し余ったのでまた机で仮眠を取る。


 不思議と机に上に突っ伏して眠ると十分二十分でもスッキリとする。

 何でなのかは分からないけど、スッキリするなら理由は何でもいいかな。


 そして午前中は模擬店のお手伝いをするためにまずは着替えて来ることに。


「これしかなかったけど、大丈夫だよね?」

 そう言いながら僕はお気に入りのねこさんパーカーを着る。


 そして教室へ戻るとクラスメイト達がフリーズした。


「えっ⋯⋯なにそれ⋯⋯かわっ⋯⋯」

「やばい⋯⋯なんかうん、やばい」

「かわいい⋯⋯」

「本当に姫村って男だよな?俺自信無くなってきたんだけど」

「わかる」


 クラスメイトからの反応はよかったみたいで一安心。


「変じゃないならよかった⋯⋯」

「それって最近Glory cuteから出た新作だよね?」

「うん、そうだよ!」

「これ可愛いから欲しかったけど似合わないかなって敬遠してたんだー!」


「それにしてもそれ本当に可愛いし、優希くんによく似合ってるね⋯⋯」

「あ、ありがとう!」

「それじゃ最終日も頑張っていこっか!」

「うん!」

 そしてその後は模擬店の手伝いをやってお昼くらいになると教室に僕を呼ぶ人が現れた。


「えっと、あれ?優希くんがこのクラスにいるって聞いて来たんだけどどこにいるのかな?」

 そう言ってやって来たのはミスコンの予選の時にいた司会の人だった。


「えっと、呼びましたか?」

「??」


「えっと、僕が優希ですけど⋯⋯」

「格好が違う⋯⋯」

「今日は衣装持ってこれなかったので自前の物を持ってきたので、ウィッグも付けてないんですよ」

「いや、むしろありだな⋯⋯」

「へっ?」

「お昼の十三時から本戦が始まる予定だからちらっとでいいからステージに立って欲しいんだけど、時間は大丈夫だったりするかな?」

「ま、まぁ少しなら⋯⋯」

「ありがとう!いやー今年はいい子が多くてなかなか面白くなってきたね!」

「は、ははは⋯⋯」

 僕はもう笑うしかなかった。

 流石に、優勝はしないだろうし、大丈夫だよね⋯⋯?


 そして司会の人に連れて行かれた僕は出番が来るまで待機する事に。


 待機する場所は体育館のステージ袖でそこに着いてみたらなんと先輩の姿も。


「先輩も来てたんですね⋯⋯」

「あっ、優希くん。

 というか本当にミスコンに参戦しちゃったんだね⋯⋯」

「それは言わないでください⋯⋯僕もまさかこんな事になるとは⋯⋯」

「優勝しちゃったりしたら面白いのにね」

「やめてくださいよ!縁起でもないです!!」

「わたしは結構似合ってると思うし、なくは無いと思うんだけどなぁ⋯⋯」

「ま、まぁ投票するのは他の人なので、結果は分からないですけどね⋯⋯」

「わたしは結果はどうでもいいかなぁ⋯⋯」

「先輩もあんまり興味無さそうでしたもんね」

「まぁ、Haruとして出るならこういうのも本気を出すんだけど、流石にここでそれをやるのは大人気ないなって思うからいまいち燃え上がらないんだよね」


「なるほど、確かに僕もここでゆかとしてやっていいって言われたら本気で行こうかなって思いますけど」

「その姿は見てみたいかな、わたしは」

「流石にクラスメイトにバレるくらいはいいですけど、外部に漏れるのはちょっと、抵抗感ありますね」

「だよね、わたしもそう思う」

 そんな話をしていると他の人もちらほらとこちらに来始めたので話は一旦中断。

 流石にお互いバレたくない話もあるので聞かれない為にもね。


 人が集まってきたところで司会の人が再び登場してきた。


「お待たせしました、本戦出場が決定した女の子達の再度紹介を始めようと思います!」


 そして僕は再びステージに立つことに。


 紹介自体は前にしてもらった時と同じだったけど、違うのは今日の衣装でダークアリス風衣装からねこさんパーカーに。


 印象が変わりすぎてびっくりしている人もいるみたいだったけど紹介自体はすぐに終わったので僕はまた舞台袖へと戻っていった。


 すると次は先輩の紹介が始まり、この紹介も僕と同じくらいの長さで終わり、皆同じくらいの紹介時間になっている事に感心した。

 よくこの短い間にここまでしっかりまとめてあるな、と思ったよね。


 そして先輩も舞台袖に戻ってくると、先輩はこれから模擬店のお手伝いが待っているらしくこの場で分かれる事に。


「それじゃ優希くんまたね!」

「先輩も頑張ってください!」


 そして僕は結果発表があるまで暇なので学校内をぐるぐるとする事にした。



 優希がステージに立ったまさにその時、観客席には薫と華の姿があった。


 二人とも優希がステージに出た瞬間に顔を見合わせて驚いていた。


「優希くん、こういうの絶対出ないと思ってた⋯⋯」

「確かにそうですね⋯⋯」

「とりあえず」

「まずは」

「「投票してきますか?」」


「だね⋯⋯」

「ですね⋯⋯」


 そして二人は一緒になってミスコンの投票をする場所を探す為に会場を後にした。

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