97:文化祭初日!③
朝九時になり文化祭の始まりを告げるチャイムが鳴ると、学校全体が賑やかになり始めた。
この学校の文化祭は昔から規模が大きいと有名で市内に住んでいる人が沢山訪れる。
特に模擬店においては毎年内容が変わるのでそれを楽しみにしている近所の人達も多いのだとか。
「賑やかになってきたね」
「だなー」
「だねーこれから忙しくなるかな?」
「結構校門見てると人入ってきてるねー」
「さーてこっちもそろそろ準備しないとだね!」
クラスメイト達が外を見ながらそんな事を言っていると続々と人が学校内に入って来た。
すると、僕たちの模擬店の前にメニューなどを見に来る人達が出てきた。
メニューを見て結構高いなとか、でもいい匂いがするとか色々な声が聞こえてくる。
そんな中で初めて僕達の模擬店に入って来てくれた人が。
「いらっしゃいませ!お一人様でよろしかったでしょうか?」
「あっ、はい!」
中に入ってきたのは二十代くらいの男の人。
メニューを見て首を傾げているようだ。
「あの、ミートソースとボロネーゼって何が違うんですか?」
「ミートソースはトマト缶を使って煮込んでいて、色々な具材の味が楽しめます!ボロネーゼは材料こそは似ていますけど、お肉のおいしさが詰まったソースになっていますよ!」
最初に対応したのは香月さんで、率先してお手本になる為にソースについての説明をしている。
この説明は試食した僕達が教えたよ。
「な、なるほど。
それじゃあミートソースを一つお願いします」
「ミートソースですね、かしこまりました!」
「ミートソース一つ入ったよー!」
「了解ー!」
ホールを担当している人が注文を提供する側に伝えると、予め硬めに茹でておいたパスタをさっとお湯で温める。
そして茹で上がったパスタをお皿にもって盛って上からミートソースをかける。
そして完成したパスタをお客さんに提供する。
「お待たせしました!こちらミートソースパスタになります!」
「どうも」
そしてパスタソースを作った僕達は影からこっそりと様子を伺う。
「あっ、美味しい」
「「「「(やった!!!!)」」」」
僕達は陰でガッツポーズをしていた。
実際に自分の作ったものが評価されるのは非常に嬉しい。
「いや、まじでうまい!」
お客さんは味わいながらぺろっとパスタを完食してしまった。
そして食べ終わったお客さんはお会計を済ませて帰っていった。
ちなみにお会計は学校内でのみ使える商品券という形をとってお釣りの問題が無くなるように工夫されているよ。
材料の買い足しを行ったりする際はお客さんから受け取った商品券を生徒会に持って行く事で現金に変えて貰える事になっている。
そしてそんなパスタを食べていたお客さんの姿を見ていた周りの人達がぽつぽつと模擬店内に入ってきた。
「私、これから一人では対応出来ないから皆もよろしくね!」
「オッケー!任せろ!」
「任された!」
「私たちも行くよ!」
「「「おー!!!」」」
「それじゃあ僕もいくよ!」
そして僕達の戦いが始まった。
「ボロネーゼとペペロンチーノですね!」
「ミートソースが二つとボロネーゼを二つですね!」
「ボロネーゼ三つですね!」
教室内を僕達は駆け巡りパスタをどんどんと運んでいく。
最初こそ少なかったお客さんだったけど、時間が経つにつれ、口コミが広がっていったのか人がたくさん増えてきた。
中にはお客さんがコスプレはあれだけど、パスタはとても美味しいよ!と言う人が居たり、同じ学校の知り合いが茶化しにやってきたりと結構な騒ぎになっていた。
その中でも、僕は大変なことに。
「君かわいいね、この後暇な時間ない?」
「いや、あの、僕男なんです⋯⋯」
「え」
「おぉ、めんこいのう、この飴ちゃんでもあげるからよかったらお食べ」
「おばあちゃんありがとう⋯⋯」
「きゃー!ゆかちゃん風のコスプレだー!」
「あははは⋯⋯」
「君は男の子なの?女の子なの?」
「い、一応、男です⋯⋯」
「似合ってるねー!それにパスタ美味しかったよー!頑張ってね!」
「あ、ありがとうございます⋯⋯」
「(なんでみんな僕に話しかけてくるの!?)」
クラスの女子達もコスプレしてたりするし、男子はうん、まぁ。
でもお世辞ではないけどクラスの女子達も結構可愛いコスプレだしもっと話しかけられてもいいと思うんだけどなぁ。
なのに結構色んな人が何故か僕に話しかけてくる。
嬉しいんだけど、男の人は大抵僕のことを女の子だと思って話しかけてくるんだけど、そこまで女の子に見えるの?
お化粧もしてないのに⋯⋯
そして午前中の人たちはお昼になるとお昼からのメンバーと交代し、自由時間になったので、僕は他の模擬店を巡る為に学校内を探索することに。
⋯⋯コスプレをしたままで。
「えっ、ちょっ!ちょっと優希くん!?」
「あっ、行っちゃった⋯⋯」
すると、教室から出ていった僕はふとスマホを見てみると薫さんからメールが来ていることに気が付いた。
「えっ、薫さん本当に来たいの?」
僕は教えるかどうか少し迷ったけど、どうせお祭りみたいなものだし気にする必要もないかと思って学校を教えることにした。
「楽しんで貰えたらいいな」
僕はそう思いながら他のクラスに向けて歩きだした。
♢
「あ、連絡来た! そっか、行ってもいいんだ⋯⋯よし、仕事は後回しにして、華さんにも教えてあげよう!」
私は早速華さんに教えてあげると、直ぐに返事が返ってきた。
「華さんも優希くんの事好きすぎでしょ⋯⋯」
まぁ、私も人の事は言えないんだけどね。
間に合うとは思うけど、私は急いで準備をして、優希くんのいる学校へ向かった。
華さんとはその学校の校門前で待ち合わせをする事にしたから、早めに合流出来るといいんだけど。
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