95:文化祭初日!①
週も終わりに差し掛かり、とうとうやってきた文化祭前日。
僕達のクラスではカトラリーやコスプレ衣装にお金を使い過ぎてしまい、結局クラス全員が少しお金を出し合う事になってしまった。
流石に食材費を出せなかったら意味が無いからね。 ⋯⋯と言っても一人2000円程度の追加で、追加したお金は全て食材費にする事に決まった。
僕は明日の朝早くに学校へ向かい、パスタのソースを作る事になっている。
明日はミートソース、ボロネーゼ、アーリオ・オーリオペペロンチーノの3種類。
次の日はペペロンチーノの代わりにジェノベーゼ。
最終日はジェノベーゼの代わりにペスカトーレの予定だよ。
本当はカルボナーラも出したいところだけど、生卵を使う関係上許可が降りないだろうという話になったので全部加熱処理出来るものに変更になったんだ。
僕は今日はかなり早めに寝て、朝早くに起きる事にした。
そして朝になり、三時頃に目が覚めた僕は準備を済ませて学校へ向かった。
流石にこの時間だとバスが出ていないから久しぶりに自転車に乗る事に。
普段家の近くを移動するくらいでしか使わない自転車だったから、空気が抜けてた。
仕方ないので空気入れを部屋に取りに行って空気を入れる。
パンクはしてなさそうで一安心。
それから三十分以上かかって学校に到着。
久しぶりの自転車だからか少し疲れたかな。
そして調理を始めるために食堂の調理場に向かうと既にクラスメイトが何人か集合場所にいた。
「みんなおはよう!」
「ん?姫くんもう来たんだ、おはよう!」
「おぉ、姫村君かおはよう。」
「姫くんおはようー!」
「よし、これで今日のメンバーは揃ったかな?」
今日の調理場担当はこの4人だけみたい。
確かにあんまり人手が多すぎてもダメだし仕方ないかな?
「それで、今日はミートソースとボロネーゼ、あとペペロンチーノだったっけ?」
「うん、そうだよ!」
「正直ミートソースとボロネーゼの違いが分からないんだけど⋯⋯」
「確かに、私もあまり分からないかなぁ」
確かに知らない人からするとミートソースとボロネーゼの違いって分からないかもしれないね。
パスタソースだとどっちもミートソースみたいな味が多いから仕方ないかも。
「ミートソースはその辺に売ってるミートソースと同じ認識で大丈夫だけど、ボロネーゼはお肉が主役のパスタなんだよ!」
僕はその違いについて説明することにした。
「お肉が主役?」
「なるほど、よくわかんない⋯⋯」
「ミートソースもお肉が主役じゃないのか?」
「ミートソースはお肉がしっかりバラバラになることが多いんだけど、ボロネーゼは逆にわざとひき肉を団子みたいにするんだよ!」
本当はもうちょっと違いがあるんだけど、それは後でいいかな?
「な、なるほど。
でも食べて見ないことには違いが分からないよなぁ⋯⋯」
「だよねぇ、完成したら私たちで少し味見してみる?そうしたらお客さんにも説明しやすいよね?」
「確かに!それは名案かも!」
「それじゃ、時間も勿体無いし作っていこっか!」
「「「おー!」」」
♢
「それじゃ、まずはミートソースを作っていこっか!煮込んでいる間に他の物も作れるから、最初に面倒なやつを片付けちゃおう!」
僕はクラスメイトの三人にそう言うと皆意気揚々と材料を手に取り始めた。
「適当に取ったのはいいけど、何を使うんだ⋯⋯」
「ミートソースは確か、玉ねぎ、にんじん、セロリとトマト缶が必要なんだっけ?」
「うん、そうだね!
ボロネーゼにも使うからまずはソフリットを作っていこうか!」
「ソフリットって?」
「玉ねぎ、にんじん、セロリをオリーブオイルで飴色になるまで炒めたやつだね!」
「き、切り方は?」
「全部みじん切りだよ!」
「おめめ死んじゃうううう!!!!」
「俺がやるよ⋯⋯」
「ほんと!?」
クラスメイトの男子が玉ねぎを切ってくれる事になった。
僕は念の為にマスクだけじゃなくゴーグルも渡してあげた。
気休めにしかならないけど無いよりはいいよね?
「俺知ってるんだ、口呼吸すると目が痛くなりにくいって⋯⋯」
「そ、それは僕も知らなかったかも⋯⋯」
「でもゴーグルは正直めっちゃ助かる、ありがとう」
「うん、大量にあるから頑張ってね!」
「おう!」
「それじゃ私たちはにんじんとセロリでいいのかな?」
「うん、これをお願い!」
そう言って玉ねぎの半分の量のにんじんとセロリを2人に渡した。
「よっしゃぁ!やってやるぞぉ!」
「私だってぇ!」
そう言って2人はにんじんとセロリを大量にみじん切りにしていく。
僕はその間にアーリオ・オーリオに使うにんにくを切るために大量のニンニクを切り始めた。
生のにんにくって地味に一個ずつ剥いていかないといけないから面倒なんだよね⋯⋯
それに、ソフリット作るときにも使うから余計に⋯⋯
あっ、そういえばボロネーゼのソフリットにはベーコン入れてたからベーコンはこっちにも使わないと。
そして全員の仕事が終わったのは二時間後くらいだった。
最初は慣れない手つきでやっていた3人も後半になればなるほど驚くべきレベルでみじん切りの速度が上がっていった。
明日はもっと早く終わりそうな気がする。
そして次は大事な炒め作業。
玉ねぎ、にんじん、セロリを2:1:1の割合で混ぜた物をフライパンで炒めていくよ。
量が大量なので4人一緒に炒める事に。
まずはオリーブオイルでにんにくを炒めていくよ。
みじん切りにしたにんにくを常温の状態で投入して弱火で炒めて、混ぜていた野菜を全部投入!
ボロネーゼ用のソフリットだけはベーコンを細かく切った物を入れていくよ。
ボロネーゼに使うソフリットの量は少なめだから、ベーコンもそんなに使わないよ。
割合でいうなら2:1:1:0.6って感じかな?
そしてソフリットはまず全体に油が回るくらいまでは混ぜながら炒めて、ある程度油が回ったら蓋をして蒸し炒めに。
十分ちょっとすると玉ねぎが透明になって野菜もしんなりとしてくるよ。
今回は分量が大量だから、少し長めに。
その後は水分を飛ばすように炒めたら、飴色になるまで炒めていくよ!
焦げないように気をつけながら炒めていって、いい感じの色になったら完成!
そして次はお鍋にソフリットを入れて、空いたフライパンでひき肉を炒めていくよ!
本当は野菜と一緒がいいんだけど、流石にフライパンがそこまで大きく無いので仕方ないね。
ちなみに調味料は塩胡椒とナツメグを入れようね。
そして炒めたお肉をソフリットの入ったお鍋に投入して、料理用の赤ワインを投入!
普通の赤ワインは未成年だと買えないので仕方ないから料理用で妥協。
塩分が入ってるから味見は必須だよ。
アルコールをある程度飛ばしたらホールトマトを入れて、沸騰したらローリエを入れるよ。
ローリエは十分くらいしたら取り除こうね。
ここまできたらミートソースの仕込みは完成!
あとは煮込むだけ。一時間弱もすれば食べられるようになるよ。
次はボロネーゼだけど、作り方は正直とても似てるんだ。
ただ違いは、ホールトマトじゃなくてトマトペーストを使うこと。
あとお肉は解さずにかたまりにして、表面をこんがりと焼いていくこと。
お肉を焼いたフライパンに赤ワインを入れて、煮立たせたものを野菜の方に入れるとお肉のおいしさを更に追加出来るよ!
お肉を焼く前に、塩胡椒、ナツメグでしっかりと下味をつけたら焼いていくよ!
「正直この時点でもう美味そう⋯⋯」
「お腹減ったぁ⋯⋯」
「まだできないのかな?」
焼き上がったら、お肉はボロネーゼ用のソフリットに投入して、フライパンに赤ワインを入れて煮立たせたものをソフリットに投入!
トマトペーストを入れたらこれも煮込んでいくよ。
こっちは三十分程度煮込んでいけば完成だね。
次はアーリオ・オーリオだけど、こっちは簡単でオリーブオイルににんにく、鷹の爪を入れるだけ。
少し加熱してすぐ混ぜるだけにしておけば後も楽ちん!
でもそれだけだと寂しいのでベーコンをたっぷり入れておこうね!
「ふぅ、今日はこんな感じかな?」
「疲れたあああ!!!」
「お腹ぺこぺこだよぉ⋯⋯」
「流石に朝ごはん食べずに来たのは間違いだったな⋯⋯」
「それじゃあそろそろ出来そうだし、少し味見してみる?」
「「「もちろん!!!!」」」
僕はささっとパスタを茹でて、器に少しずつ盛り付ける。
「はい、どうぞ!」
皆に配り、四人で一緒に味見を始める。
「「「「いただきます!」」」」
ミートソースはトマトの風味がしっかり残っているけど、その中に野菜の甘さ、お肉の美味しさが詰まっていてとても美味しい。
「あっ、美味しい。」
「レトルトのパスタソースと全然違う⋯⋯」
「野菜とお肉の旨味が段違いだ⋯⋯」
次はボロネーゼ、トマトペーストが入っているけど、案外トマトの風味が感じられなくて初めて食べると結構ビックリするんだよね。
でもトマトの酸味はしっかりあるから、お肉がさっぱりと食べれちゃう。
これはこれで美味しいんだよね!
「ボロネーゼってこんな味だったの⋯⋯?」
「私は食べたことあるボロネーゼって甘みがあったんだけど、これお肉感がしっかりしてる⋯⋯というか味はしょっぱめ?」
「うめぇ」
一人美味しくて語彙力が消えてるけど、うん、美味しくできてて一安心。
最後はアーリオ・オーリオペペロンチーノ、これはうん、安定してるよね。
これ以上無いくらいに安定してる。
味付けはシンプルに塩とにんにくと鷹の爪なのに美味しい。
ベーコンの旨味も加わってるから更に美味しい。
「あー、安心する味⋯⋯」
「パスタといえばこれってイメージかも」
「うっま」
一人語彙力が完全に消え去ってる⋯⋯
まぁいいや。
「どうだったかな?」
「うん、売れる。間違いないよ」
「というかこれいくらで売るの?」
「おかわり」
「「「いやないけど!?」」」
「そんなぁ⋯⋯」
「それでいくらで出すかだけど、ミートソースとボロネーゼが⋯⋯600円かな?」
「安くない?」
「絶対安いって」
「それなら俺昼食べるわ」
「でも量は少なめにするから妥当だと思うよ?」
「ペペロンチーノは?」
「ペペロンチーノは400円かなぁ、手間も材料費も安いし!」
「クオリティの高いものとしっかり差別化していく感じなんだね」
「これはクラスの計算担当してくれてる人とも決めてたから、利益はちゃんと出るはずだよ」
現に今作っただけでも500人分くらいはあるはず。
ペペロンチーノは作ろうと思えばもっと作れるしね。
「なるほど、全部売れるか楽しみだね」
「後は今日の販売メンバーに頑張ってもらうしかないね!」
「絶対売れる⋯⋯」
「売れ残ったら持ち帰りたい⋯⋯」
「「わかる」」
そして完成した頃にはもう朝8時を回っていて、他のクラスメイトたちも続々と登校してきていた。
「朝日が眩しいね⋯⋯」
「だね⋯⋯」
「目がしょぼしょぼする⋯⋯」
「これからがスタートか⋯⋯」
これから僕達の文化祭が始まる。
既に疲労困憊だけど。
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