東京観光?

42:いざアキバ!

 朝になり、僕は目が覚めた。

 昨日はもやっとしていたけど、今の僕に何か出来るわけでもないし、今すぐにどうかしなければいけない事って言うわけでも無いから今は考えない事にした。


 え?現実逃避?⋯⋯違うよ!


 そんな事は置いておいて今日は本来なら帰るところだったんだけど、撮影が早くに終了したおかげで二日間も自由に出来る日が出来たんだ。


 個人的にはアキバとかもいいよなぁとか考えていると僕のピヨッターにDMダイレクトメッセージが届いていた。


 送信者はどうやら先輩のようで、先輩も予備日のおかげで暇が出来たらしくアキバに行こうと思っていたらしい。


 どうせなら一緒に行かないかとの事だったので薫さん達に用事が無いのなら一緒に行こうかなと思い薫さんたちの部屋に向かった。


 軽くこんこんとノックをして少し待つとドアが開いた。


「優希くん、何かあったかな?」

 薫さんがどこかに出かけるような格好で出てきた。 何か用事があるのかな?


「えっと、薫さんたち今日予定とかあるのかなと思って一応聞きにきたんですけど、その様子だと何か用事でもある感じですか?」

「そうなんだ、今日はちょっと外せないから優希くんは自由にしてて大丈夫だよ!」


「あ、それともしお金が必要になっても大丈夫なようにコミケの売り上げは口座に入金しておいたから確認しておいてね!」

「わざわざありがとうございます!」

 売り上げかぁ⋯⋯どれくらいあるんだろ?


 そして自分の部屋に戻っていった僕は、先輩に行けると返信をして部屋でのんびりしていた。


 そしてふと、自分の口座に振り込まれた金額の確認をしていた。


「えっ、何これ」

 ちなみに言っておくと、シリアルコードを発行してそのコードを入力してダウンロードするサービスは一回きりで十万円で一定期間の間何人でもダウンロード出来る様になっている。

 ただ人数が多すぎると高くなってしまうんだけど、人数が今回は決まっているのもあってそこまで高額じゃなかったんだ。


 つまり、僕の手元にはそのサービス代金を抜いた金額、まるっと五百円×販売部数が入ってきてたわけだね。


 そして、販売部数が五千部。


「二百四十万円⋯⋯?」

 その金額を見た時の僕の心境をはっきり言うと


「税金どうしよう⋯⋯」

 僕、何も知らないよ。


 実家に帰った時に家族に相談しようと心に決めた。 登校日の後に、絶対帰ろう。


 そんなこと考えている間に先輩から返信も来てた、僕もささっと準備してアキバに行こうかな。


♢(遊佐薫視点)


「よかったのお姉ちゃん?」

「うん、今日はいいよ」

 私は優希くんが誰と行動しようとしているのか知っている。


 だって先輩がわざわざ教えてくれたんだもん。私のコーディネートをする代わりに一日あのモデルの子、遥ちゃんに優希くんがOKを出したら時間をあげて欲しいって言われたから。


 理由を聞いて断るなんて事はしない。

好きな人の側にいれないのは寂しい事だから。

「私が逆の立場だと思うと、ダメって言えないもんね」

「そっか、お姉ちゃん大人だね」

「そう、かな?」

 せめて、楽しんできてくれると私も嬉しい。



「先輩お待たせしました!」

「ううん、わたしも今来たところだよ」

 駅に居た先輩に声を掛けると普段見ていた先輩とは違い、モデルをしていた時のように綺麗で、でも派手じゃない格好をしていた。


「学校とはイメージが全然違うんですね、ちょっとびっくりしました」

「ふふっ、どうかな?似合ってるかな?」

 そう言ってスカートをふわりとさせながら一回転して僕に見せる先輩。

 白のシャツと清潔感のある水色のスカート。

 とても似合っているけど、そのまま褒めるのは少し恥ずかしくて少し遠回りに言ってしまった僕に直接似合ってるかを聞いてくる先輩。


「凄く、似合ってます⋯⋯」

「ちょっと顔赤くなってるよ、褒めるの恥ずかしかったのかな?」

「そ、そんなわけないですからね!」

「そう言う事にしといてあげる、それじゃどこいこっか?」


「僕実は行ってみたいところがあって⋯⋯」

 そう言って僕は行きたい場所を伝える。


「なるほど、確かにわたしも気になるねそこ」

「ですよね!どうですか?」

「うん、いこっか!」

「はい!」


 そして僕たちはアキバの中にある大きな複合施設、U◯Xに向かった。

 駅から歩いてすぐの場所にあるから嬉しいよね。


 そしてその施設内ではコミケ後一週間の間イベントスペースを借り切り、Vライブといまなんじの二大Vtuber事務所がイベントを行なっていた。


「うわぁー!凄いですね先輩!色んなVtuberの人達のグッズがありますよ!ふわちゃんのもある!」

「本当だね、あっ!白猫Vtuberのしろさぶろうだ!」

 先輩が指差した場所には見た目が好きな動物系Vtuberのしろさぶろうの姿が。


「おぉ!ぬいぐるみ、ふわふわで気持ちよさそう⋯⋯」

 袋に入っていて触り心地はわからないけれど、きっと触ったらもふもふなんだろうなぁ⋯⋯


「あぁ!!!狼女Vtuberのうるちゃんもある!!」

 先輩は先輩で、好きなVtuberのグッズを発見して嬉しそうにしている。


「先輩!」

「優希くん!」

 僕達はお互いに笑顔で向かい合うと

「「来て良かった!!!」」

 と笑い合った。


 ちなみに僕たちはこの後滅茶苦茶買い物した。

 僕はしろさぶろうのぬいぐるみがあまりにも気になったのでつい買ってしまった。

 家に発送してもらう事にしたので荷物も大丈夫!


 するとお会計の時に⋯⋯

「あの、対象の商品をお買い上げ頂いているので、もしお時間あるのでしたら抽選でVtuberの人と数分お話出来るサービスがあるんですけど、抽選に参加されますか?」

「えっ!?そんなサービスが!?」

「お買い上げ一万円以上の方限定になりますので、割と当たるんですよ?」

「「応募します!!」」

 僕と先輩は当たる事を祈りつつ応募した。


♢(???視点)


「な、なんでこんなところに優希が⋯⋯しかも一緒に歩いてるあの女の子は一体⋯⋯いや、見間違いの可能性も⋯⋯」


 彼はU◯X内にあるカフェからぼーっと外を見ていた。

 すると、視界に優希達が入るのをふと、目にしてしまう。


 男は急いでコーヒーを飲み干してお会計を済ませ、優希の後を追いかける。


「やっぱり、優希だ⋯⋯俺、自分の仕事言ってないから何て言えばいいんだ⋯⋯」

 黙っていればなんとかなるか、と思いながら彼は休憩時間を終え、再び自分のスペースに戻っていこうとしたその瞬間。


「やっと見つけましたよ、姫村さん」

「うぉぁ!?」

「もうすぐ時間なのにこんなところで何をやっているんですか!」

「いやね、まさかこんなところで名古屋に住んでるはずの息子を見ると思わないだろ普通!?」

「えっ?息子さん!?どこですか!」

「えっ、あそこ、今スペースで買い物してる二人組のちっちゃい方」


「息子⋯⋯?娘の間違いじゃ?」

「ふっふっふ、可愛いのは認めるが歴とした息子だぞ」

「あー、姫村さんの姿見たら納得しちゃいますね」

「俺だって、この見た目地味に気にしてるんだぞ、未だに年齢確認されるんだからな⋯⋯もうあと数年で四十路になるってのに」

 どこか遠くを見ながら彼はそう言うと、ため息を吐いた。


「ははは⋯⋯戻りましょうか」

 彼のマネージャーを名乗る女性からそう促された彼は視界に映る優希を見ながら名残惜しそうに

「そうだな⋯⋯」

 と呟きながら戻っていった。


 そして彼は自分の持ち場に戻ると、ヘッドセットを着けて大きく深呼吸をした。

 目付きが変わり、声も大きく変わった彼はイベントに参加してくれた人と会話を始めた。


 そして、人は彼の事をこう呼んだ。


 閃光のシュバルツと。

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