34:コミケ三日目!(前編)

 昨日は早めにホテルへ戻った僕たちは、失った体力を取り戻すかのようにゆっくりと睡眠を取り、早めの時間に起きた。

 前の二日間のように化粧を先に済ませ、僕たちは現地へと向かった。


「優希くん、今日の衣装はかなり着やすくなってるから安心してね」

 薫さんが衣装を渡す際に僕にそう言った。


「着やすい、ですか?」

「見たら分かると思うよ!」

 僕は衣装を受け取りどんな衣装なのかワクワクしながら更衣室へと向かった。


 更衣室へ到着すると周りがざわつき始めた。

「来たぞ⋯⋯」

「今日は何を着るんだ⋯⋯?」

「オラワクワクすっぞぉ⋯⋯」


 僕は気にせずに衣装を見る。

「これは、ね、ねこさんパーカー⋯⋯?」

 そこにあったのは生地が薄めに作られた尻尾まで着けられたねこさんパーカーだった。

 スカートの代わりに長めに作られており、そのまま着るだけになっている。

 パジャマのようになっていて確かに着やすい。


「ねこさんパーカー⋯⋯だと⋯⋯?」

「もう俺男でもいいや」

「待て考え直せ!結婚出来ないんだぞ!?」

「カワイイは正義だから大丈夫、それに今は結構緩いんだぜ?」

「もうだめだこいつ」


 何かまた周りが騒がしくなってきたけど今日はすぐ服を着れたのでそのまま荷物を持って集合場所へ向かう。

 その間に僕の意識も切り替えながら移動する。

 昨日と同じ場所だったので今日はすぐに二人が見つかった。


「ゆかちゃん今日も似合ってるねー!」

「うん、ねこさんもかわいいね」

『ありがと!でもこれってコスプレでいいのかな?』


「可愛いからいいと思うけどなー」

「うん、ねこさんかわいいからオッケーだよ」

「ちなみにこのパーカーモデリングするからどのみちコスプレだよ!」

 ゆらお姉ちゃんが突然そう言った。


『えっ?そうだったの!?』

「このパーカー地味にオリジナルなんだよ!」

「デザインは私と先輩でやったんだ」


『凄く可愛い衣装ありがとうお姉ちゃん!』

「その一言だけで頑張った甲斐があったよ⋯⋯!」

「私もモデリング頑張るからね!ね!」

『ゆらお姉ちゃんもありがとう!無理はしちゃだめだからね!』

「んー!やる気が漲ってきた!でも無理はしない、約束するよ!」


「話ばかりしててもあれだから、そろそろ会場にいこっか」

 薫お姉ちゃんがそう言ったから、ボクたちは会場に入っていった。


 コスプレ広場に入ると周りから声が沢山聴こえてきた。


「うわぁーかわいいねこさんがいる!」

「抱きしめたい可愛さだぁ⋯⋯」

「白猫⋯⋯」

「写真撮らせてもらお!」

「わぁーかわいい!」

「お、あの子可愛いな、撮らせてもらおうかな」

「お、いいね、俺も行く」


「「「「「「「写真いいですか???」」」」」」」

「ゆかちゃん人気者だね」

「だねー!」

『ふぇ!?だ、大丈夫だよ!』


「「「「「「「あ、お姉さん達も一緒にお願いします!」」」」」」」

「ありゃ、呼ばれちゃったね」

「ふふ、行こっかゆら」


 この後滅茶苦茶撮影された。



 ある程度撮影されたころに今日も華お姉ちゃんがやってきた。

「ゆかちゃんおはよー!今日も来ちゃった♪ 相変わらず可愛いねぇ!!!」

 初めて会った時のあの感じは一体どこに行ってしまったんだろうこのお姉ちゃん。


『ありがとう、華お姉ちゃん!』

「ねぇ、今からお姉ちゃんと一緒にお昼寝しない?」

 あ、だめだ。

 完全に錯乱してる。


「ちょいちょいちょい!」

「あなた、戻ってきなさい!」

「こんなにかわいいパジャマ着てるんだよ!お昼寝したいに決まってるじゃない!」

 ゆらお姉ちゃんと薫お姉ちゃんが必死に華お姉ちゃんを止めてる。


「コスプレ!ここコスプレ広場!」

「こすぷれ⋯⋯はっ⋯⋯」

「ようやく正気に戻ったみたいだね」

「わ、私ったらあんなはしたない事を⋯⋯」

「気持ちはわかるけど、抑えて」

「まぁ初見だとこうもなるかぁ」

 目が少し危ない状況になっている華お姉ちゃんも流石に場所が場所だっただけに二人の声かけで正気を戻してくれたみたい。


「ご、ごめんね、びっくりさせちゃったよねゆかちゃん⋯⋯」

『う、うんびっくりした』

「まぁまぁ、落ち着いたから良しとしよう、ね?」

「人とは間違えるものだよ」

 なんか悟りを開いてない?ゆらお姉ちゃん?


「ハーイ、オネエサンタチ、ワタシトシャシントッテモラエナイデスカ?」

「デキレバワタシモイッショニハイリタイデース」

突然ボクたちに海外から来てるであろう外国人のカップルが話しかけてきた。


『お、おーけー?』

「オゥ、アリガトー!」

「アナタモカモン?」

「えっ?私もですか!?」

「ミンナデシャシンタノシイネ!」


 外国人のカップルを見て察してくれたのか、近くにいたレイヤーさんが快く撮影してくれる事になった。


 海外の人結構コミュ力高くてボクもびっくり。


「オォー!アリガトネ!ミンナトッテモキュートネ!」

「センキュー!」


『せ、せんきゅー!』

 もうノリで言っておこうかな、案外それで通じたりするものだよね!


「ミナサンオタッシャデー!」

「サラダバー!!!」


「こ、濃い人たちだったね⋯⋯」

「押されに押されたね⋯⋯」

「まさか私まで巻き込まれるとは⋯⋯」

『でもこうやって仲良く写真撮ったり出来るのは平和で良いことだよね!』


「確かに、そうだね」

「日本人に生まれてよかったと思う瞬間の一つだよねー」

「ですねー」


 そんな事を話していると薫お姉ちゃんが華お姉ちゃんに提案し始めた。


「実はそろそろ暑さもピークになるからホテルに帰ろうかって話をしてたんだけど、華さんも一緒にお昼でもどうですか?」

 華お姉ちゃんをお昼に誘った。


「えっ?いいんですか?」

「ゆかちゃん、ゆらも大丈夫だよね?」

『うん!華お姉ちゃんと一緒にご飯楽しみ!』

「私も大丈夫だよお姉ちゃん」

「お、お言葉に甘えさせてもらいます⋯⋯」


そしてボク達はホテルに戻って着替えてからお昼ご飯を食べに行く事になった。



 そして僕はホテルに戻り素に戻って気が付いた。

「あれ?そう言えば、今から僕は推しとご飯食べるの?」

 いまいち実感が湧かないけど結構すごい事だよねこれ。

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