30:スイーツ好きだっていいじゃない!

 目的地である東京のホテルに着いた僕達、さぁ明日からコミケだ!⋯⋯という訳は無く、早めに乗り込んだので明日は自由日だったり。

 今日も着いたのは夕方だったから、何か美味しい食べ物が食べれるお店が無いか探す事になった。


 色々東京の飲食店について書かれたパンフレットを見ていると、何処も彼処も美味しそうに見えてくる。


「優希くんは何が好きなの?」

 うーん、と僕が悩んでいると薫さんがそう聞いてくれた。


「僕は苦いものじゃなければある程度食べられますけど好きなものと言われると⋯⋯あ、甘いもの、ですかね?」

 でも夜ご飯じゃないから甘いものは今度で、と言おうとすると⋯⋯


「いいね!甘いもの!私も好きなんだー!」

「私も好きだよ!優希くん、今日はスイーツ三昧しちゃおっか!」

 なんて言ってくれた。


「え!? いいんですか⋯⋯?」

「もちろん!!東京のスイーツのレベルの高さ、見せてもらおうじゃないか!」

「私もあんまり東京ではスイーツ買わないから楽しみかな⋯⋯」


「それならここ、とかどうですか?」

 僕はそう言いながら気になったお店を二人に見せる。


「おぉ、いちごを使ったスイーツの専門店⋯⋯営業時間は⋯⋯うん、まだ余裕あるね」

「確かに美味しそう⋯⋯あっ待って!近くに他にも美味しそうなお店あるよ!」

「本当ですね!ここも美味しそう⋯⋯」

 僕達はわいわいとどこに行こうか話し合った。


 結果として最初に言っていたいちごスイーツの専門店と近くにあったスイーツとパスタの美味しいイタリアンのお店に行くことになった。

 普通逆なんだろうけどいちごスイーツのお店の営業時間の方が短いので仕方ない!

 そう、仕方ないんだよ!


 そしてホテルから十分ほど歩くと、そのお店が見えてきた。 お店もゆっくり食べられる時間ではないからかそれなりに空いていた。


 席に案内されメニューを見ると、ミニサイズのケーキが数個並べられたミニケーキプレートというものが目に入った。


「これ、何種類も味わえるみたいですよ!」

「おぉいいね!流石優希くん!」

「私もこれにしようかな?」

 折角なので皆で同じプレートを選び飲み物をセットで注文した。

 全員アイスティーを選んだんだけど、やっぱりケーキには紅茶だよね!


 そして数分待つとプレートとアイスティーが運ばれてきた。


 中に入っていたケーキはショートケーキやレアチーズケーキなどの王道やサクサクとしたタルト生地の美味しい苺のタルト、あまり聞き慣れないフレジェというケーキが入っていた。


 まずはショートケーキをぱくりと頂くことに。

「んー♪やっぱりこの味♪」

 思わず素の自分が出てしまった。

 それくらい美味しいんだから仕方ないよね。


「うっ!うん!美味しいね!」

「っ!このフレジェっていうのも美味しいよ優希くん!」

 二人とも顔が赤くなってるけどどうしたんだろう?


「これがフレジェですか?はむっ」

 その瞬間僕の中に衝撃が走った。

 カスタードのように見えたこのクリームはバタークリームで、でもただのバタークリームじゃない。


 カスタードのような味も感じられるのでミックスされてるのかも。

 そんな濃厚で、でもあっさりと感じられるクリームといちごの相性は最高の一言。


「わぁぁぁぁぁ♪」

 僕の顔には溢れんばかりの笑顔が。


「きっ、気に入ったみたいだね!」

「凄く幸せそうな顔してる、かわいい⋯⋯」


「はむっ!」

 僕は夢中になって次はレアチーズケーキを頬張った。


「これも美味しいー♪」

「あぁ、優希くんかわいい⋯⋯」

「あれ、おかしいな、死ぬほど甘いよ、このケーキ」

何故か由良さんの目が遠くを見ているような気がするけど気にしている余裕は僕には無かった。


 その後ケーキを食べ終わった僕達はそのままの足で次の目的地のパスタとスイーツが評判のイタリアンレストランへ向かった。


 そのお店で僕はローマ風カルボナーラとスイーツはオススメされたティラミスを注文した。

 どちらも濃厚な味で僕のお腹はもう一杯。

 二人も満足したようで僕達はホテルへ戻っていった。


 あっでも流石に部屋は別々だよ!



 朝になり起きた僕は由良さんに呼ばれたので一階にあるレストランでモーニングを食べながら話を聞く事に。

 なんでも薫さんはやる事があるらしく朝早くにここを出て行ったんだとか。

 僕に出来る事なら手伝ったんだけど大丈夫なのかな。


「それでね、話なんだけど⋯⋯」

「僕に出来ることならなんでもいいですよ!」

「な、なんでも!?

 い、いや言葉の綾ってやつだ落ち着け私⋯⋯

 ふぅ、とりあえずね明日の優希くんのコミケの時にするお化粧の練習のために少し時間が欲しいんだよね!」


「なるほど、そういう事なら大丈夫です!」

「ありがとう!それじゃこの後の優希くんの時間なくなっちゃうのもあれだし今からやっちゃう?」

「そうですね、お願いします!」


 そして部屋に戻って道具を持ってきた由良さんはゆっくりと僕にメイクを施していった。


「よし!出来たよ!どうかな?」

 そう言われて僕は鏡を見た。

 うん⋯⋯可愛い⋯⋯

 悔しいけど可愛いんだ⋯⋯


「ねぇ、優希くんこれ着てみない?」

 そう言って由良さんが色々服を渡してきた。

 あ、これ着せ替え人形にされるやつだ。

 案の定この後滅茶苦茶着せ替えさせされた。


「ねぇ、優希くんはこの後何処か向かう予定はあるのかな?」

「僕は特に決めてないですけど⋯⋯」


「じゃあさ、有名なスイーツのお店行ってみない?私色々食べたかったんだよね!」

「えっ⋯⋯でも流石に有名なお店に男が入るのは気が引けると言いますか⋯⋯」

 昨日みたいに色々な客層の人がいる店はともかく女性に人気の有名店に男が入るのは勇気が必要なんだよね。


「何言ってるの?今の優希くんなら平気じゃない?」

「はっ!!!」

 その手があったか!!!!


 ⋯⋯その後滅茶苦茶もぐもぐした。

 お昼ご飯もスイーツだったのは内緒。



 私は朝から別行動をして急ぎで作ってもらった優希くんが明日から着る衣装を受け取りに向かっていた。


 途中から企業としての意向も入ったので完成までギリギリまでかかってしまったのが原因。

 でもそのおかげでとてもクオリティの高いものに仕上がっていた。


 初日用の白姫ゆかの元々の衣装に近く、そしてリアルで視聴者の人に人気の高かった衣装を更に改良したこの一着。


 Alice of Darknessというブランド名で販売する予定らしく、某不思議の国の衣装を現代風にそしてゴスロリ感を増やしたこの衣装。

 ただ、ブランドの名前が中二病感満載なのはどうなのだろうか。


「早く着るところ見たいなぁ⋯⋯」

 私のワクワク感は高まっていくばかりだったけどまだあと二着もある。


 外で着るのには勿体無いけれど黒のドレス。

 脚のラインがしっかり見えるようになっているけれど可愛さも感じるふっくらとしたデザインが特徴的。


 そして最後の一つ。


 これは、その時のお楽しみで、私的にはかなり大好き。 

 許されるなら抱っこして寝たい。


 うん⋯⋯明日のコミケ、頑張ろう。

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