11:ホラゲ実況動画を投稿しよう★

 学校が終わり、家に帰ってきた僕はホラゲ動画の編集をしながらもしかしたら来るかもしれない浮雲ふわりちゃんとのコラボについて考えていた。


「推しの配信は何度も見てきているけど、まさかこうもいきなりそんな機会が訪れるかもしれないのは流石に予想外だったなぁ⋯⋯」

 ただ、その機会を作った原因が僕自身の見た目と声が原因なのは少し複雑な気分。


「今の僕の強みってなんなんだろう?」

 考えても分からない、見た目?声?

 考えても考えても結論は出ない。

 かと言ってエゴサをするのもちょっと怖い。


「まぁ、そんな事気にしてたら意味が無いよね⋯⋯今は編集頑張らないと」

 僕は再び編集を始め、今日の夜からホラゲ実況の動画を上げていくために作業に熱中した。


 夜もいい時間になってきた頃に最初の動画が完成した。 動画を投稿した僕は今日はスマホの充電器が刺さっている事を確認して、泥のように眠りについた。



白姫ゆか初めてのVRホラゲ実況Part1(ダイオVR)


『皆久しぶり!白姫ゆかだよ!今日は超人気ホラーガンシューティングの最新作ダイオVRの実況をやっていこうと思うよ!』

 うずうずしている様子の白姫ゆかがオープニングムービーを見ながら開始の挨拶をしている。


『この動画はゲーム会社さんのほうで公開できる範囲が決められているから動画は複数パートに分けて投稿していくよ!ゆっくりになると思うけど付き合ってくれると嬉しいなー!』


『と、挨拶はここまでにしてゲームに集中していくよ!』


『映像のクオリティが前作よりも上がっているねーボク楽しみになってきたよ!』

 まだゲーム内に不穏さは無く、主人公の周りの日常が描かれていた。


『あれ?今回のダイオの主人公って警察とか特殊部隊じゃなくて一般人なんだね?』

 そう、ダイオシリーズは大体警察や特殊部隊のメンバーである事が殆どで一般人が主人公を務めた事は今までなかったのだ。

 それ故にファンからはその新鮮さがいい、と好意的な意見も多かったらしい。


『おっとそろそろ操作が出来るようになったね!』

 主人公は武器も持たずただ歩くだけではあるが地面を歩く時の音や地面の土や砂の表現が細かく、その音などを聞いて更に白姫ゆかはテンションを上げていく。


『土や砂の表現のクオリティ高いなぁ⋯⋯』

 白姫ゆかはそのクオリティの高さに感嘆していた。


 そして最近主人公の娘が学校への通学路で何か怖い雰囲気があるから着いてきて欲しいと言われ、主人公は娘に着いていく。

 その際に主人公は自分の銃を手にとり、娘と手を繋ぎながら歩いていく。

 片手には銃をもう片方の手には娘の手を握っている主人公が娘の通学路を進んでいく。


『おっ!銃がきた!これがメイン武器かな?M16っぽいような?』


『おぉ!凄いねこれ!!!ボク銃持ってるよ!!!感触まである!やば!!!!

ただ軽いからリアリティが少ないのがネックかな?』

 銃を持ってテンションが上がっている姿は無邪気で、見ている人をほっこりとさせる。

 ただ、持っているのは銃器ではあるが⋯⋯


 そしてこの動画の見所でもある場面に入る。

 主人公が何かを感じ取り、娘に離れるように言い、路地裏へと足を進めた。

 そこには、1体のゾンビが佇んでいた。


『ゾンビ!来たね!』

 白姫ゆかは臨戦態勢に入り、いつでもゾンビを倒せるようにしていた⋯⋯のだが、ゾンビが近付いてきた瞬間白姫ゆかに異変が起きた。


『ふわああああああああああああ!!!!!!』

 ゾンビがよく見える範囲に入った瞬間白姫ゆかが悲鳴を上げた。


『やだやだやだ気持ち悪い!!!!こっちこないで!!!!!』

 画面の中では主人公がソンビに向かって銃を連射している。


『死んで!!!!なんで!?当てたじゃん!!!!!いっぱい当てたじゃん!!!!』

 実際には全く当たっていなかったのだが、ゾンビから撒き散らされる血液のせいで当たったと錯覚してしまったようだった。


『いやこないで、いやああああああああああ音が!!!!ぐちゃって!!!』

 ゾンビが近付くほどに、音量が少しずつ上がり、ゾンビから内臓の脈打つ音やぐちゃりとした音が聴こえてくる。


『こない!!!で!!!!ああああ!!!!』

 発狂しながら銃を連射する白姫ゆか、そんな彼女に不幸が訪れる。


『弾切れ!?いややる!!!!ほら!ほら!ほら!ほらぁ!!!!!!!』

 弾切れだ。

 まるで不良の喧嘩のかけ声のように彼女は銃床でゾンビを殴り始めた。


『なんでしなないの!!!!金属だよ!!!来るなっていってるじゃん!!』

 主人公の使っている銃はアメリカでは実際に一般人でも購入出来る銃器で金属ストックのため打撃武器としても使用する事も不可能では無いのだが、銃によるダメージを与え切れていなかったがために武器での殴りではゾンビを倒しきれなかったのだった。


『あっ⋯⋯』

彼女はゾンビが腕を振り上げたのを見た瞬間に諦めたような表情をした。


『ぁぁぁぁぁぁっぁぁぁ○○のバカああああああああああ!!!!!!!!!』

 誰かの名前を叫んでしまったのか、彼女は編集でピー音を入れていた。


 そしてゾンビの攻撃を受けた彼女はゲームオーバーになっていた。

 それから数十秒の間彼女はぼーっとしていた。



『⋯⋯ぁ、いきてる。』

 意識を取り戻した彼女は涙声になっていた。


『怖かった⋯⋯何がホラゲは大丈夫♪だよぉ、死ぬほど怖かったよぉ⋯⋯』

 リアリティが高すぎるゾンビのせいで彼女はボロボロだった。 だが、それだけで終わるほど彼女は弱くなかった。


『絶対に倒す、ボクを怖がらせた事後悔させてやる!!!!!』

 そう言った彼女は次からは冷静にゾンビにHSヘッドショットを決めていく。


 ただ、ゾンビに出会う度に彼女は


『アレハCG、アレハCG。』

 とうわ言のように呟いていた。


 キリのいい場所で動画は終わったが、彼女の目は死にかけていた。


♢(掲示板の反応)


283:名前:名無しのお兄ちゃん

はい、昨日あった伝説の配信見た人集まれー


284:名前:名無しのお姉ちゃん

>>283

あぁ、ふわちゃんでしょ?

本当かどうかはわからないけど、ガチだったらやばそうよね。

私と代わって欲しいわ。


285:名前:名無しのお兄ちゃん

>>284

いやアンタも十分やばいじゃないか


286:名前:名無しのお姉ちゃん

>>285

ゆかちゃんが可愛いのが悪いのよ。


287:名前:名無しのお兄ちゃん

>>286

くそっ否定できねぇ


288:名前:名無しのお兄ちゃん

>>286

>>287

その話題もいいけどもっとあるだろ


289:名前:名無しのお兄ちゃん

>>288

ダイオVRだな!


290:名前:名無しのお姉ちゃん

>>288

ダイオVRね!


291:名前:名無しのお兄ちゃん

悲鳴がたまらねぇんだ


292:名前:名無しのお姉ちゃん

途中の涙声とか正直、興奮しない?


293:名前:名無しのお兄ちゃん

>>291

>>292

お前達はゆかちゃんをそんな邪な目で見ていたのか?


294:名前:名無しのお姉ちゃん

>>293

いや違う、これはあの、あれよ。

あれ!


295:名前:名無しのお兄ちゃん

>>293

正直すまんかった。


296:名前:名無しのお兄ちゃん

ごめん正直に言うと後半の目が死んだゆかちゃんもありだと思ってしまった。


297:名前:名無しのお兄ちゃん

>>296

わかる


298:名前:名無しのお姉ちゃん

>>296

わかるわ


299:名前:名無しのお兄ちゃん

そういえばコミケの話とかもそうだし、今日チャンネル登録者2000人超えたじゃん?

記念配信とかやるのかな?


300:名前:名無しのお姉ちゃん

私は常に待ち続けているわよ。


301:名前:名無しのお兄ちゃん

次は水曜日って言ってなかったっけ?


302:名前:名無しのお姉ちゃん

>>301

そう言われると言ってたような気がするわね。


303:名前:名無しのお兄ちゃん

>>301

あぁ、言ってた言ってた。


304:名前:名無しのお兄ちゃん

最近ゆかちゃんが生きがいになってきてるから毎日更新して欲しいけど、学生らしいから無茶だけはしないで欲しいな。


305:名前:名無しのお兄ちゃん

>>304

わかる、俺は地味にふわちゃんとのコラボも実現してほしいな。


306:名前:名無しのお兄ちゃん

俺はゆるママのV参戦を待ってる。

リアルタイムでゆるゆかてぇてぇさせてくれ。


307:名前:名無しのお兄ちゃん

>>306

お前、天才か?


308:名前:名無しのお姉ちゃん

>>306

貴方、天才ね。


 今日もまた、ゆか推し達は語り合っていた。

 最近は少しスレの消費速度が速くなってきているのだとか。

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