10:寝坊寸前/浮雲ふわり
僕は昨日の夜ベッドの上で閃光のシュバルツさんの配信を見ていたら気付いたら寝落ちをしてしまっていた。
いつもならアラームが鳴るのに、スマホの電源が落ちてしまったせいでアラームは鳴らず僕は目が覚めた瞬間遅刻を確信した⋯⋯のだけど、運良くギリギリ間に合うタイミングだったから大急ぎで学校へ行く準備をしてバス停へ一気に走った。
スマホの充電はモバイルバッテリーがあるから、学校に着くまでの時間くらいあればスマホの起動は出来るはず。
バス停に着くと丁度バスが来たタイミングで、あと数十秒でも家を出るのが遅れていたらアウトだったと思うとヒヤッとする。
バスはぎゅうぎゅう詰めでスマホを触る余裕は無いから、充電状況の確認はまた学校に着いてからにしよう。
二十分ほどバスに揺られると学校前のバス停でバスが停車した。
そのまま学校へ入り教室に向かう。
「おはよー」
僕が教室でクラスメイトに挨拶をする。
「あっ姫くんだーおはよー!」
「姫くんおはー」
「姫くんやっほー!」
クラスの女子達が返事を返してくれた。
すると⋯⋯
「姫くん配信見たよー」
「ウチも見たー超可愛いかったよー」
「ゆるゆか⋯⋯てぇてぇ⋯⋯」
配信の感想まで言ってくれる、なんて良い人達なんだろう。
僕が白姫ゆかである事をクラスメイト以外に話している様子も無いしありがたい。
そしてクラスメイトの花園さんが僕に質問してきた。
「姫くんって⋯⋯ゆるママとリアルで会ったことないんだよね⋯⋯?」
「うん、無いよ?」
「コミケで会ったらどんな人だったか教えて欲しいな⋯⋯?」
「う、うん」
どうしてゆる先生が気になるんだろう、僕にはよく分からないや。
「応援してるから⋯⋯配信頑張ってね⋯⋯!(容姿がわかればゆるゆか本冬には出せる⋯⋯うぇへへ⋯⋯)」
「ありがと!」
そうして女子達はまた散らばっていった。
「おいっす優希ー昨日は災難だったな」
今日は少し来るのが遅かった裕翔が教室で僕を見るなりそう言ってきた。
「災難?あのゲームの事か!」
「いやゲームは知らんぞ?」
「えっ?じゃあ何の事?」
「えっ?てっきり優希の事だからもう知ってると思ったんだが⋯⋯」
「まぁ、いいか。
とりあえず、優希さ昨日俺とゲーム買いに行く時転びかけたよな?」
「うん、あったね。
あの時女の人が助けてくれたから無事だったけど」
「その女の人な、浮雲ふわりだ、いまなんじ7期生の」
「へぇぁ!?」
周りに聞こえないように小声で裕翔はそう耳打ちしてきた。
どどどどどどういう事!?
「どういう事!?」
「いやー偶然って凄いな、浮雲ふわり、面倒だしふわちゃんでいいか、ふわちゃんがさ、妙に上機嫌で配信始めたんだよ」
「うん、たまにあるよね」
「それがな、可愛い男の子か女の子か分からない子を助ける時にぎゅっとしたから幸せだったって言ってた訳だ」
「う、うん」
嫌な予感がしてきた。
「そうしたらリスナーが男の娘疑惑のあるVtuberとして優希こと、白姫ゆかを紹介した訳だ」
「それ裕翔じゃないよね!?」
思わず僕はツッコミをいれてしまった。
「んな訳ないだろ!?」
「だよね、安心した⋯⋯」
「俺だって配信見てて飲み物飲んでるときで吹きかけたんだぞ?」
「逆に裕翔のそんなシーン貴重じゃない?」
「お前は俺をなんだと⋯⋯」
「まぁそんな事は置いておいてだな、そこで速攻で調べた訳だな、ふわちゃんが」
「それで僕のアカウントにたどり着き、動画を見た、と」
「そういう事、しかも凄いぞ、一発で優希だって見抜いてたからな?」
「はい????」
「そんで最後にこう言ってたぞ、白姫ゆかとコラボ目指していくからよろしくね、ってさ」
「そんな形で推しとコラボしたくなかった⋯⋯」
「というかふわちゃん企業勢なのに僕とコラボ出来るの?普通企業勢って身内としかコラボ出来ないはずじゃ?」
「まぁ、普通そうだよな。
でもさ、この状況で浮雲ふわりっていうキャラが崩壊しかけててかなりバズったんだよな」
「逆にその方向で売っていこうって事もあり得る訳なのね⋯⋯」
推しと会える可能性があるのは嬉しいし、それがあの時の綺麗なお姉さんだと思うと更に嬉しくもなるけど⋯⋯
「ふわちゃんのストライクゾーンに入るほどなんだね、僕の容姿⋯⋯」
「あっ⋯⋯」
裕翔はやっちまったというような顔をしていた。
その後にあった今日の授業の内容は正直覚えてない。
♢(浮雲ふわり視点)
私の名前は
二十二歳の独身。
好きなものはロリとショタ。
そして浮雲ふわりの中の人をしている。
そんな私は朝一番でいまなんじの地区事務所へと足を運んでいた。
大手Vtuber事務所であるいまなんじは昔は東京にしか事務所が無かった。
それ故にライバーをしている人は大体が東京近辺に住んでいたり、わざわざ地方から足を運ばないといけなくなっており、細かい対応が出来ずに問題が起きる事が多々あった。
そんな状況を打開すべく事務所が資金を出し主要な地方の都市に地区事務所を設立。
その結果ライバーが全国から集まり、面白い配信をする人が増え、いまなんじの名前は日本全国へと広がり、1つのムーブメントを巻き起こした。
それが現在でもVtuberが流行している理由。
そのおかげで私のような地方人にもチャンスが訪れた、というわけ。
会社のネームバリューのおかげなのか
いつしか私は大物Vtuberになっていた。
何故?
確かにゲームは割と上手いとは思う、キャラデザも3Dモデルも全てが最高で私なんかがこの娘の中に入っていいのかと思ってしまうほど。
ただ1つあるなら私は人気のためにキャラを作った。
最近では驚いた事があっても素でそのキャラを演じてしまうほどにそのキャラが固まって来ていた。
語尾を伸ばして天然系の女の子を演出すると、何故かそれが世の人達に受け入れられて私の今の地位がある。
それでも私の個性が一つだけあった。
それはロリとショタが好きな事。
ゲームで可愛い子が出れば私は異常なほどにテンションが上がる。
それがウケたのも人気の要因の一つだとマネージャー含め社員の人は言っていた。
私は好きなゲームや雑談をする。
最早半分以上趣味と言ってもいい。
それで私はご飯を食べていける、普通より裕福な暮らしができる、ありがたい事に。
昨日、私は小さな男の子か女の子か分かりにくい子が転ぶのを助けた。
そうしたらとても可愛い顔と声をした子だった。 格好だけは少し男の子っぽいけれど。
そんな子をこの腕で軽く抱きしめられた事がかなり嬉しかった。またしたいな。
まぁ人にこれを言うとドン引きされるんだけど。
更に驚きなのはなんとその子が個人でVtuberをやっていた事。
更にその子の推しが私だったと言うこと。
今日早くに来たのはその子とのコラボ実現のため。
そして事務所に着いた私はマネージャーに話しかけた。
「マネージャーおはようございます」
「あら空木さん、おはよう、今日は早いのね?」
「ちょっと相談がありまして⋯⋯」
「昨日の配信の事かしら?」
「そうなんです、本人が許可を出したらになりますけど、コラボしちゃだめですか?」
「構わないわよー」
軽っ
「えっ、いいんですか? そんな簡単に」
「あなたうちの事務所でもかなり頑張っているじゃない?ある程度自由にさせてやれって上に言われてるのよー」
変に縛りつけると良さも消えちゃうし、と付け足しながらマネージャーは笑った。
「いいんだ⋯⋯やった!」
思わずガッツポーズをしてしまった私を見てマネージャーが微笑んでいる。
「今までずっとこちらの希望を聞いてもらっていたからね、多少はお目溢しくらいするわよ?
あとオフコラボとかするなら指定のカラオケ店にしてちょうだいね?そこならうちで権利取ってるからいけるわよー」
「いいんですか!?コラボ相手はそういうの気にしてそうだから助かりますけど」
「その代わり、コラボ相手の配信ではちゃんとうちのタグ付けしてもらったりしてちょうだいね? 大事だから!」
「分かりました!」
「よし、それじゃあ後は前から言っていた企画の確認なんだけど⋯⋯」
今から私はあの子とのコラボの為に頑張っていく。 他に大事な事もあるけど、今の私にとって大事なのはあの子。
ふふふふふ⋯⋯合法ロリかショタか⋯⋯楽しみだなぁ⋯⋯
♢遊佐薫(柿崎ゆる)視点
「どうしよう⋯⋯」
私は今悩みに悩んでいる。
「お姉ちゃん、まだやってたの?」
「うん、ゆかちゃんに合う衣装考えてたら何個も衣装の案が浮かんできちゃって⋯⋯」
「まぁ一つに絞るのって難しいもんね」
「ううううう⋯⋯迷うよぉ⋯⋯」
「お姉ちゃん私も一個考えてきたんだけど⋯⋯どう?」
「ああああああああ絶対これも似合うよおおおお!!!」
「だよね!!!分かってくれると思ってたよお姉ちゃん!!!」
それから一時間後⋯⋯
「お姉ちゃん、三つまで絞ったのはいいけど」
「これ以上絞るなんて無理だよぉ⋯⋯」
私は今にも泣き出しそうな声で呟いた。
そこで私は一つの光明を見出してしまった。
「はっ!?」
「どうしたのお姉ちゃん?」
「ゆら、私思うの、コミケって3日間もあるんだよ?」
「おい待て、お姉ちゃん?
流石に三日連続で着てくれるなんて思わない方がいいよ?」
正論であるのは分かってはいるけど⋯⋯
「私たちのブースは一日目」
「そうだねお姉ちゃん」
「三日間行動をともにしても問題ないのでは!?」
「もうだめだこのお姉ちゃん!!!!」
念のために連絡を入れたらあっさりOK出してくれた。
コスプレ自体には興味あるらしい。
優希くんは天使か何か?
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