体育館裏の怪異④
学校のお昼休みにスナカケと会うようになって、ひと月ほどが経った。
相変わらず人間の友達は出来ない――どころか、廊下でぶつかっても気付かれないくらいだけど、僕はちっとも寂しくない。
だって僕には、体育館裏の秘密の友達がいるから。
「……じゃ、ないんだわ。さすがにおかしいとか思わんの?」
「おかしいって?」
「いや、あのな。毎日聞いてたらソレ、存在感が薄いで片付くような感じじゃないじゃろ。周囲の人間全員で口裏合わせるにしたって、規模が大きすぎる」
「そう、かな」
「そうじゃろ。この辺りの人間全員が、見るからに平凡で地味でぱっとしないお前のような子供を覚えているとも思えんし」
ひどいな……。
炊き込みごはんブームが到来したらしい兄さんに頼んで普通の白米に変えてもらったごはんが、今日はちょっと塩辛い。
「町の外ではどうなんじゃ」
僕のごはんの上にキラキラした塩粒を足しながら、彼は訊ねた。
「えと……わかんない、かな」
「は? わかんないってなんじゃ。まさか町の外に出たことないとか言わんだろうな」
「実は、そうなんだ。僕さ、小さい頃に勝手に町の外に出て……すごく危険な目に遭ったみたいで。僕自身は覚えてないんだけど……それ以来、町の外には出るなって、きつく言われてるんだ」
「人間の家庭事情にとやかく言うつもりはないが、禁止されていたのはお前がまだ小さな子供だったからじゃろ? 今出るぶんには問題なかろう」
「ダメなんだ」
「訊いてみたのか」
「ううん。けど、毎朝兄さんに釘を刺される」
真心こもった手作りのお弁当を渡しながら。
僕の返答に、スナカケは
僕は不安になった。
過保護だとかブラコンだとか、親はどうしたなんて言われるんじゃないかと思ったからだ。
なにより、彼に意気地なしだと思われるのが嫌だった。
スナカケはしばらく動物みたいに唸った後に、『ふむ』と納得したような声を上げた。
「……スナカケ?」
「これは想像の域を出ないが……お前のその高山の上の空気みたいな存在感は、お前自身が原因ではないのかもしれんな」
さらっと酷いことを言われたような気がしたが、もう慣れた。
スナカケはけっこう毒舌だ。
「僕が原因じゃないって、どういう意味?」
「うーむ。あんま軽はずみなことは言えんが……おお」
「なに?」
「喜べ、
<⑤へ続く>
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