第21話 自分創造
朝、目が覚めると、隣に寝ていたミカエルの顔に驚き、声を挙げそうになるが、抑えると、ゆっくりとベッドから降りる。
昨日の晩のことを思い出し、ミカエルが俺の隣で寝ている理由を思い出すと、俺は窓を開ける。
外は、日の光が眩しいくらい入り、俺を照らしていた。
冷たい風が体に当たるとたまらず窓を閉める。
ミカエルの顔を眺めると、まだ深い眠りについているような寝息を立てている。
俺はミカエルが起きないことを確認すると、昨日やっとのことでほぼ完成した鑑定の魔法を、自分にかけた。
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【この世界の主】(溝辺 創一)
職業…神、創造主
HP:???
魔力:???
物理攻撃:1(+???)
魔法攻撃:???(+???)
物理防御:1
魔法防御:5
敏捷:5
幸運:2500
スキル
【創造】【魔法創造】【建築】【漫画創作】【イケメン】【身長180cm】【全知全能】【コピー】【天使愛】【悪魔愛】【不老不死】【飛翔】
【トリックワールド】
武器
【創造主の本】…全ての叡智が記載されている本。
神以外が触れると、その者にたちまち稲妻が落ちる。
特性
自分で生み出した漫画の技や魔法を、具現化することができる。
自分以外が殺すことはできず、死ぬこともできない。
人物
特になし。
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俺は自分の鑑定魔法に目を見開く。
こんなこと、俺は設定した覚えもないし、スキルを取得した覚えもない。
あと、名前が()表記ってどういうことだ。
色々突っ込みどころが多い鑑定の魔法に、寝ぼけていた俺だったが途端に目を見開く。
服をしっかりと着込んだ俺は、2階から1階へと降りていく。
いつもの席に腰かけると、自分のことが書いてあるページへと本を開いた。
確かに、自分で設定したことは、いくつかウインドウにも適用されているが、その他にも色々足されていることに気が付く。
(え?何なの?【全知全能】って…。
あと俺【不老不死】なの?もう死ねないの?
あとこの【コピー】ってなに?印刷機なんかここにないし…。
あとなんだ【建築】って…心得ないぞ)
見覚えのないスキル達に、頭を抱える俺。
【イケメン】や【身長180cm】は、確かに自分で設定したことだが、こう表示されるなんて、恥ずかしすぎる…
いや、とにかく自分に表示されてるこのスキルの意味を解明しないと…。
慌てた様子の俺に、ルシファーがコーヒーを置くと同時に話しかけてくる。
「どうされましたか?」
「いや、昨日鑑定っていう魔法を創ったんだけど、その魔法に表示されてる自分の情報がちょっと気になって…」
「なるほど。左様でございますか。では、その魔法を私にもかけてもらってもよろしいですか?」
「わかった」
俺はルシファーに手をかざすと、鑑定の魔法をかける。
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【ルシファー】
職業…熾天使、堕天使
HP:12000
魔力:4444
物理攻撃:7777(+7777)
魔法攻撃:2500(+2000)
物理防御:8000(+1000)
魔法防御:8000(+1000)
敏捷:2000
幸運:44
スキル
【重圧】【飛翔】【レイピア使い】【天使】
【堕天使】【固有結界】【煉獄】
【牢獄】【可憐】【切れ者】【悪魔】
【複数愛〇】【破廉恥】【信仰】
【風圧耐性】【風圧制御】【精神異常耐性】etc...
武器
【ルシファーのレイピア】…物理攻撃に+7777、魔法攻撃に+2000
ルシファー専用武器。
他の者が触れたり、奪おうとすると、その者にたちまち稲妻が落ちる。
特性
堕天使となった場合、全てのステータスに+4000
しかし、天使と戦う場合-5000
※天使のスキルが消えていない場合は適用されない。
人物
人に厳しく、自分に人一倍厳しい。
神様に対しては甘く、優しい部分もあり、女の子の一面を見せたりする。
神様への信仰心はミカエルより少し低いが、それでもかなり従順である。
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俺はルシファーのウインドウの項目と自分の本を見比べる。
本とはかなりの相違があるものの、ウインドウのほうは見やすく整理されているはいる。
「どうでしたか?」
「え…あ…あぁ概ね合っていたけど、俺の知らないスキルもあるな。固有結界とか…」
ルシファーのその問いに答えると、いよいよわからなくなる。
俺が混乱していると、ルシファーが鑑定の魔法の詳細を尋ねてきたので、どういったものか説明をする。
するとルシファーが理解したのか口を開く。
「その鑑定という魔法に、相違が出ている理由は恐らく、本と魔法が繋がっているにも関わらず、別々に作動しているのが原因でしょう」
「つまり?」
「ここに書かれている項目です」
ルシファーは開かれていた本のページの鑑定の設定が記載されている、ある場所を指差す。
俺はその項目に目をやると、そこにはこう書かれていた。
「設定は全て更新され、ウインドウに表示される…これが?」
「更新とは、前の状態を改め、最新の状態にするということですよね?
主様が、この前、使った魔法、覚えていらっしゃいますか?」
「う…うん。まあ…」
俺はサタンとの戦闘を思い出し、顔を赤らめる。
あんまり恥ずかしいこと思い出させないでくれ…。
「あの魔法。本来は、この本に記載されていないもの。しかし、スキルには表示されていたということで間違いないですか?」
「そうだけど…ああそういうことか…」
ルシファーの問いに答えているうちになんとなく、自分の中で答えが導き出される。
つまり、俺が鑑定魔法を創ったことで、設定の上書きが自動で行われるってことだ。
鑑定の魔法は、本に記載されていないこともわかるということだろうか。
というか本よりもその人物の正確な情報がわかるってことか?
いや、ただ単に、本には俺しか書き加えることができないから見えてないだけ?
俺は理解したつもりが、ますますわからなくなってくる。
「ま…まあいいか…」
俺は誰に向けるわけでもなくそう言うと、落ち着いて、ルシファーが淹れたコーヒーを飲んだ。
そういえば、ルシファーは自分が堕天使となる運命だということに気づいているのだろうか?
というかこの鑑定の魔法をルシファーに使われたら、俺の浅はかな設定がモロバレになってしまう。
そう考えた俺は、鑑定の魔法の余白に、小さく、ルシファーに見られたらまずいスキルの表示を、無くすよう本に書いていく。
書き記し終わると、鑑定の設定を見直しつつ、頭を落ち着けるため今まで描いてきたものをついでにパラパラと眺める。
まだ本の1/5も満たないページ達に、俺は本の余白の多さを思い知る。
この世界に来てから、もう二ヶ月ほど経っただろうか、7日間で世界を創るなど到底無理なことを実感する。
なんとなく、世界地図が描かれているページで手を止めると、俺はそのページを見て、思い立つ。
(というかいい加減、この世界の名前、決めたほうがいいな)
俺は鑑定の魔法のこともすっかり忘れ、この世界の地図が描かれている、余白の部分に世界の名前を書こうとするが、まったく思いつかず、くるくるとペンを回す。
自分がネーミングセンスがなかったことを思い出し、コップを拭いていたルシファーに問いてみる。
「なぁルシファー何かいい名前ない?」
突飛よしもない俺の言葉察しのいいルシファーは何も聞かずに答えた。
「神の世界とかどうでしょうか」
さすが、俺が生み出したキャラクター。
俺と同じくネーミングセンスがなかった。
「天界とかどうですか?」
いつの間にか俺の隣に歩み寄っていたガブリエルが俺に提案する。
ダメだ。ガブリエルはアホだった。
頼みの綱であるミカエルは、まだ俺の部屋で寝ているのであろう。
というか、ミカエルは意見を出すどころか、ルシファーの意見に賛同しそうだ。
聞くだけ無駄だ。
俺は2人の意見を無視し、1人で悩み始める。
「地球…earth…アース…」
地球って名前センスあるよな…ふとない頭で地球のことを褒める。
いや、待て待て、地球のことを考えてどうするんだ。今はこの世界の名前だ。
よしなんかファンタジーっぽい名前…。
頭を振り絞って考える。
天使、悪魔、竜、ドラゴン?うーん。
考えても、俺の脳では、いい名前など浮かぶはずもなく、ただ時間だけが過ぎて行く。
そうだ、こういうのは国名から考えたほうがいい。
そこからインスピレーションをもらってくるんだ。
俺は、となりで朝食をいつの間にか始めていたガブリエルに、何かいい国名があるか尋ねてみる。
「えー?国名ですか?そうですねぇ。ここは、寒いんで、ヒエヒエとか。あとここは暑いんで、アツアツとか」
俺の地図のページに上から指を刺しながら答えるガブリエル。
「じゃあここは?」
俺は真ん中辺りを指差して、ガブリエルに問う。
「あーそこは、真ん中なんでナカナカとか」
「ダメだ。アホだ。不採用」
「えぇ!?」
俺の言葉にガブリエルは、餌を没収された犬のようにしょげている。
ルシファーに聞くのも同じような回答が返ってきそうだと考えた俺は、実際に見て、インスピレーションを沸かすことに決めた。
俺はさっさと朝食を済ますとコートを着込み下界へと降りていく。
降り立つと、前来た時とは違う下界の香りを感じた。
俺がその香りを楽しんでいると、後ろから声がかかる。
「早く行きましょうよぉ」
「いいんだぞ。ついてこなくて」
ガブリエルだった。
俺の楽しみを奪うかのように垂れている文句に俺はイラ立ちを感じた。
ルシファーは、俺に着いてくるかとも思ったが、地界に用事があると言い、その用事を済ませたら合流すると言っていた。
しばらくは1人の時間を満喫できるかとウキウキしていた俺だが、1人にされるはずもなく、当然のように俺の後ろを着いてきたのだ。
「なんか最近冷たくないですか?」
「冷たくない。いいから行くぞ」
「行くってどこへ?」
「フフに会いに行く」
俺は、目の前の氷山を指差した。
その指差した先をガブリエルが見ると、ますます膨れるガブリエル。
「寒いですって。やめましょうよ」
そりゃあお前は薄着だからな。
俺は厚手のコートを創っておいたんだ。
そしてお前の分はない。
俺は氷山に向けて歩みを進める。
ガブリエルは文句を言いながらも一緒についてくるので、仕方なく、もう一枚コートを創ってやり、それを渡す。
寒がりながら渡されたコートを着込むガブリエル。
「それにしても、ここは寒すぎて何もいなさそうですねぇ」
「いや、俺はここら一体の生物も創ったはずだが…ほら、あれ見ろ」
「熊ですか?」
「あと、鳥。なんかファンタジーっぽくスノーバード的な名前をつけた気がする」
俺が指差した先を見ると、ガブリエルは俺よりも先に走り出し、そいつらを見に行った。
俺が歩いて、ガブリエルが走って行った先に辿り着くと、すでに、熊や鳥と仲良くなっているガブリエルの姿があった。
寒いながらも動物達に笑顔を振りまくその姿は、まさに天使のようだ。いや、天使だけど。
「ガブリエル。そろそろ行くぞ。寒い」
「えぇ…でもこの子達が…」
「またいつでも会いに来れるだろ。あと他にもいるから。動物」
そういうと熊と鳥にお別れを言いガブリエルは、さっさと俺の歩みに追いついてくる。
「他に何がいるんですか?」
「魚。あと猪とか、鹿とか狐とか、鯨とか亀とか」
「そんなに増えてるんですか?いつの間に…」
俺は、そのまま歩みを進めると、フフがいる氷山のほうを見る。
まだ距離はある。
歩みを進めるたびに積雪の量が増えてくるのを感じていた。
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