第9話 休戦創造
人には相性がある。誰だって1度くらいそう思ったことがあるのではないだろうか
俺は、相対する天使と悪魔にそう思うのであった。
取り乱した様子のミカエルとガブリエル。
好敵手が現れたとニヤリと笑うメフィスト。
サタンは眠そうにあくびをする。
ルシファーは俺の隣で眠っているのか目を閉じたまま、ただじっとしている。
「落ち着いて、話をしよう」
俺は思わずそう発言したのだった。
一体どれほどの時間が経ったのだろうか。
どこからともなく、出してきた少し大きめな四角いテーブルに腰かける6人。
俺の両隣には悪魔の2人が腰かけている。右側にサタン、左側にメフィスト。
対面には左から順にミカエル、ガブリエル、ルシファーが腰かけている。
それぞれで睨み合い、発言することもなくただ時間だけが過ぎて行く。
我慢ならずに俺が口を開く。
「とりあえず、皆言いたいことはあると思うけど、冷静になってほしい。
まず、言いたいことがある人は挙手してから言うように」
「はい」
そんな俺の発言に痺れを切らし、一番最初に手を挙げたのがミカエルだった。
俺は、そんなミカエルの発言を許す。
「神様は何をお考えなのでしょうか。地形を創り変えたのは、とても素晴らしいものですがしかし、この方達は…」
確かに、設定上は、どちらも見下し、出会えば殺し合いをするくらい仲が悪いとは書いたが…そこまで鬼の形相をしなくてもいいのではないでしょうか?
「それに答えるとすれば、ガブリエルのせいかなぁ」
「オレ!?」
思ってもみない俺のセリフにガブリエルが驚く。
「だって、悪魔がほしいなぁとか言ってたじゃん。俺、ガブリエルのために悪魔を創ったと言っても過言ではないよ」
責任を全て、ガブリエルに押し付ける形にしてしまったことは反省しているが、事実、悪魔がいたほうが面白そうと発言していたガブリエルに問題があると俺は考えた
「ま…待ってください!神様!あれはなんかちょっと敵っぽいのがほしいなぁって思った発言で…ここまで憎くてここまでクソみたいな連中を創れとまでは…」
「ガブリエル。口が悪いですよ」
唯一、無表情であったルシファーがガブリエルを注意する。
そんなルシファーの発言にしゅんとするガブリエル。
犬が落ち込んだようなそんな可哀想な様子を見て、少し同情の気持ちが沸く俺であったが、そんな時にメフィストが手を挙げる。
「我、こいつら殺す。殺して神様奪う」
手を挙げながら、目の光を失い、機械のようにメフィストが発言した。
うーん。確かにそういう風に設定してたけど…ちょっとこの幼女は怖いなぁ。
禍々しいオーラを放つ幼女に声がかけずらくちょっと引き気味でいると…
「別に天使と戦う理由も今はないんだから…喧嘩は…よくないんじゃないかしら…」
ルシファーをちらちら気にしつつ、サタンは怯えたように発言をする。
そんなサタンにルシファーが口を挟む。
「挙手もなく主様に発言をしたこと…それが今戦う理由になるのではないですか?姉上」
ルシファーが冷たく言い放つと、サタンはひっと俺に身をくっつける。
目を瞑り、細かく震えながら俺に助けを乞うその姿は、子犬そのものだった。
まさに一触即発の雰囲気に耐え兼ね俺は本を開きペンを取り出す。
「何をするおつもりですか?」
ミカエルが手を挙げながら、俺に問いかける。
「ん?あまりにも長引きそうだし。手っ取り早く仲直りっていうか休戦させるためには、描き込んだほうが早いかなって…さ」
俺は軽く描き込む
”天使と悪魔は敵対しているが、人間がいない今は休戦中。
ルシファーが堕天使となるまでは、抗争は起きない”
よしこれでいこう。
俺は描き込み本を閉じる。
ルシファーを起点にしてしまったのは、なんとなくだが、まあいつか堕天使になるのであれば、これがいいだろう…
俺は目を瞑り、一息吐くと、一人が発言をする。
「…あなた達、悪魔のことは物凄く憎いですが、争いは何も生みません。
今は休戦といきましょう」
「…そうだな」
まあ上出来だろう…俺はミカエルとメフィストの様子が元に戻ったことを見て、改めて本の凄さを思い知る。
その様子を見て張り付いていたサタンもほっと胸をなでおろす。
「ご飯にしよう」
俺は皆の顔を見渡し、そう言うと、ルシファーが立ち上がり自分が料理をすると立候補する。
俺はルシファーに料理を任せることにし、部屋についている風呂に入ることにした。
俺は、いつの間にか沸いている湯舟に身を全身まで浸からせる。
「こういう時、異世界の主人公ってどうするんだろう…」
俺は、自分が描いてきた異世界の話やラノベに書かれていた異世界の主人公達を思い浮かべる。
(きっと順応力が高いんだろうな…若い人達は…
俺にはあんな風に、無鉄砲に振る舞えないわ…)
そんなことを考えつつ、今いる5人のことを思い出す。
女の子ばかり創造してしまった俺だが、その理由は女の子のほうが描きやすいから。
ただそれだけの理由であった。
「こうも女の子ばっかりだとこう…窮屈だし…ムラムラするよなぁ」
そう独り言をぼやいていると、一人の女性が更衣室から話しかけてくる。
「神様。少しよろしいでしょうか?」
「うぇ!?はい!?なんでしょうかあ!?」
その声に至極驚いた俺は、思わず湯舟に浸かっていた全身をビクっと震わせ、思わず背筋をピンと立てながら正座していた。
そうしていると、一人の女性が風呂場に入ってくる。
「し…失礼しますぅ…」
恥ずかしそうに身をくねらせながら、入ってきたのはミカエルだった。
とても透き通った白い肌と、その放漫に実った局部に思わず唾を飲み込む。
「あの…?どうされたんでしょうか?ミカエルさん…」
「いえ…お疲れのご様子でしたから…お背中でも流そうかと…」
「よし…わかった頼む」
なるほど。まあ女の子ばかりもいいもんだな。うん。
俺は物怖じすることなく、浴槽から上がると風呂場に置いてあった木の椅子に腰かける。
背中をとんとんと叩き、ミカエルに指示を促すと、ミカエルは局部を隠していたタオルでごしごしと俺の背中を洗い始める。
「ミカエル?そうじゃないだろう?お前には、違うタオルが体についているじゃないか」
俺は精一杯のイケボでミカエルに、指示を出した。
「はっはい…申し訳ございません…」
ミカエルはそう謝ると、手に持っていたタオルをどかし…自分の胸を俺の背中にくっつける。
(天地創造の答えはこれだったんだ…)
俺は訳の分からないことを考えつつ、背中に感じた胸の感触を味わう。
あんなに苦労したんだ、これぐらいのご褒美はあってもいいだろう。
俺はミカエルのなすがままになり正面の鏡を眺める。
(へへっ…ミカエルめ…すっかりメスの顔をしてやがるぜ…)
自分の中のゲス心が顔に出てしまう。
それも無理もない、恥ずかしそうに背中で胸を動かすミカエルの顔は、だんだんと自分も気持ちよさそうな顔になっていっているのだ。
「ミカエル…?そろそろ前を洗ってくれないか?」
「わ…わかりました。神…様…」
はぁはぁと息を切らしたミカエルは口を手で隠しながら答える。
従順っていいことだよな。うん。俺は好きだよ。
ミカエルは何も隠さないまま、俺の前まで来ると、俺の開いた股の間に入ってくる。
「ど…どこから洗えばいいでしょうか…」
ミカエルの問いかけに、俺は悪人面を浮かべつつ言い放つ。
「わかっているだろう?」
そう答えると、恥ずかしそうになりながらも俺の…
「おーい!我も一緒にっ!」
せっかくのいいところにメフィストが風呂場のドアをバンッと開いて侵入してくる。
空気が読めない幼女だ…
そう思っていた矢先、ミカエルが立ち上がり、メフィストの顔面を掴む。
ミカエルはそのままメフィストのことを持ち上げると、風呂場を後にする。
ミカエルが風呂場のドアを閉めると一言
「申し訳ございません。私は用事を思い出したのでお先に失礼致します」
と言い、去って行った。
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