1‐4「紅魔族崩れってホントなのか」

「うーむ…こちらに進めば、シルルが言ってた一軒家が…。」

俺はシルルの手紙にあった一軒家を尋ねることにした。


「この…ピンクの照明が目立つ建物か。」

「あ、お兄さんこんばんは~!」

近くにいたサキュバスに声をかけられた。

なるほど…彼女はサキュバスと共に戦っていたのか。


「お兄さん~。紅魔族とかどうでもいいから、うちに来て~?」

「ああ、元々来るように言われていたんだ。お邪魔させてもらうな。」

「うふふ~。お兄さんははじめましてだから~初回サービスしちゃうわ~。」

初回サービス…ふむ。ここはシルルの恩情おんじょうに甘えるとするか。

なんにせよ、ここにシルルがいるのは間違いない!

そう思い、俺はシルルの家に入ることにした。



中はギルドの酒場に似たような家具が置かれている。

アイツのメイド好きも、ここまでとは思わないって。

「お兄さん。ここは初めてなの?」

「ああそうだ、ここにシルルがいるって聞いたんだが…。」

「シルル…ああ、彼女は今他の人の相手をしているのよ。とりあえず、お席へどうぞ~。」

…アイツの戦闘狂せんとうきょうなところは、変わっていないみたいだ。


「じゃあ、私があなたの相手をしてあげるね?」

ほうほう、シルルの戦闘狂なところは、他の仲間にも伝染でんせんしてるみたいだな。

「なるほど。だったら、どっからでもかかってこい!」

「ふふっ。かわいいなぁ…じゃあ横になって__。」


突然、ドアが開け放たれる。

「…ここに。ここに紅魔族の男がいるって聞いたのですが?」

「おっ、シルルお帰り。お前が遅いから、今はお前の仲間と戦おうと__」

「…なにいってるんですか?鹿なんですか?」

シルルは何故か武器を構える。


「え?だって、ここにシルルがいるって…。」

カウンターの横から顔を出したサキュバスが、怯えながら俺に伝える。

「あの…私が『ター』…です。みんなから『シルル』って呼ばれてて…。」


「…待て。ここってシルルの家じゃないのか?」

「あなたがなに考えてこんな時間に、ここにいるのかは…後でじっくり聞くとしましょう。」


サキュバスたちが目を背ける中、カウンターにいたサキュバスが口を開く。

「えっと…ここはシルルってやつの家じゃなくて…その…『サキュバス店夢心地ゆめごこち』っていう店で…。」


…聞いたことがある。確か…男冒険者たちがサキュバスを指名してあんなことやこんなことを…。

「…で、『どらど』。もう一度聞きますが…なんでここにいるんですか?」


「ま、待ってくれ…これは間違いで__」

「間違い…ですか。しらを切るつもりですか、ええそうですか。」

「ヒッ!!」

徐々に距離を詰めてくる。嫌だ…家を間違ったくらいで死にたくない!!


「じゃあ、改めて家に帰っていただきましょうか?」

シルルが武器を振り上げる。

その瞬間、俺は意識を失った。


…俺の名は『どらど』。紅魔族の概念がいねんを壊し、人々の救世主となる男だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る