大化の革新政権

 いしかわノは、はたとこんわくした。ぶんとしては蝦夷えみしいる鹿のぞき、ってわることしかかんがえていなかったのに、なかノおおかまたりたからノにまでやいばけて、じっけんばなさせるというだいそれたことをした。そのかたぼうかついでしまったのだから、つぎぶんたからノものあんさつされぬでもない。ざいさんもかなりのぶんりょうなかノおおぼっしゅうされて、たいしたほどははいらなかった。しかもしま殿どのかりおうきゅうとしてほっそくするしんせいけんでは、おおおみくらいふたつにかたれ、へノうちというひとひだりノおおおみぶんみぎノおおおみになることとされた。むさぼることのけんえきはんぶんというわけである。

 さてしま殿どのあらたなくんしゅとなるかるノに、なかノおおかまたりは、

こうてい

 というしょうごうほうけんしようとした。いしかわノからすると、それはぎることである。こうていといえばうみえたはる西にしなんだかえらかたであると、だれもがそんなふうっている。それをこのやまとノくにおうじゃがにわかにしょうしてみたところで、やくしゃでもあたらしいえんもくをやっているのかな、とでもおもわれるのがせきやまではないか。

 いしかわノがそれとなくさとすと、かまたりすこかんがえをあらためるところがあった。たしかにこうていというのは、りつりょうというほうてんがあってこそのそんざいで、ほうりつこうりょくげんせんとしてみとめられるものである。いまこのやまとノくににはおびただしいぶんりつほかめいぶんほうとしてはかつてしょうとくたいそうしたじゅうしちじょうけんぽうがあるのみであった。

 とうりつりょうというのは、こまごまけいばつせいていしてぼうだいりょうおよび、しかもおのおのじょうこうたがいにさんしょうしてせいごうせいつように、かんがかれたはんほうてんなのである。それをやまとりつりょうとしてなおすには、まだだいろうりょくかんひつようとする。それまではすこしずつほうれいはっしていかねばならない。

 そこでかまたりはのだいあんでは、てんのうぜんでんとうてきな、

やまとノきみ

 というしょうごうせいしきには、ひとまずあまんじてけてもらうこととする。かいがいしょこくへはどうせてんのうというのもあまりとおっていないから、やはりじゅうらいおう使つかう。ちくなどのどうめいしょこくふくおおしまへのはつれいには、

やまとノくにきみにしてくにぐに統主すめら

 としょうすることとする。いっぽうしんからのびかけには、

おおきみ

 という使つかふるされたものではなく、

みかど

 をあらたにもちいることとし、かならずしもこう退たいではないことをしめす。ぶんしょによるほうれいはっには、ここではきょうせずこうていといういておき、ただげるあいにはくんててろうしょうする。またなかノおおおおしら、そのきんしんおうぞくも、あらためておうおうじょしるすこととする。ただしくんどくのままでわらない。

 なかノおおはこれをりょうしょうした。かるノにはぞんなにく、

はかりごとさだまりければようにせよ」

 とうのみである。

 おうきゅうはいずれちかうちに、このやまと国内くぬちから西にしけて、なにみなとろすだいに、いままでにないりっなものをけんせつするつもりである。しょえることでろうしゅうち、まったあらたなせいおこなうことがるであろう。

 なにわノみやみやこすることがていされたかるノは、なにわノみかどばれることになる。いまはまだかりしま殿どので、なにわノみかどきゅうごしらえのそくしきげる。

 ここにたからノしょうせいだいねんあらためて、

たいがんねん

 とごうした。

 ないていとおり、うちひだりノおおおみいしかわノみぎノおおおみにんじられた。かまたりには、

うちツおみ

 というれないかんしゃくさずけられたが、これはまノくにれいさんこうにしたものである。そうみんたかむくノふびとげんくにノはかとして、せいさくもんけることとされた。

 なかノおおは、こうたいめる。そのためのせいけんなのだ。みかどにはうちむすめたらしひめとのあいだに、ありまノまれていたのに、かれるかたちになる。

 がいにもたからノより、はしひとノきさきとしてらせる、という使つかいがる。はしひとなかノおおいもうとで、みかどにはめいたる。これはたからノみかどそくいわうというを、すくなくともおもてきにはしめしたことになる。いしかわノはひとまずむねでおろした。

 しかしかまたりはまだ、たからノたいうたがっている。なにみやこくと、西にしからものむかしからそのみなとはいることになっているからいが、東方諸国あづまノくにぐにからの使つかいはいたぶきノみやしょうされてしまうおそれがある。もしちくなど、西にしどうめいこくからのぜいおさめることがても、ひがしからのねんうばわれてしまうと、ざいせいじょう不利ふりになる。そこでかまたりせんって、あづまさえておこうとかんがえた。

 たいがんねんあきはちがついつづみノおみくいせノとこねノおみきノたノおみはちにんを、あづまつかわす持節みこともちとしてし、みかどいて、

あまツみことさせたまいしままに、まさにいまはじめてくにぐにおさめむとす」

 うんぬんみことのりして、しょこくくべきせいさだめ、せきつくでんはかることなどをめいじる。かまたりがそのみことのりかみいてなかノおおたせ、なかノおおのきのぞんでくだし、にわひかえるはちにんかせる。みかどかげくらおおわれたしきおくで、そのようものつめている。わると、しょうしょうつしをはちにんわたす。

 こまったのははちにんほうである。いままでめいれいけるときは、こうとうのみによるのがほとんどで、ぶんしょることはかった。このかんというむずかしいものがまったぶんを、どうかいしゃくすればただしいとえるのか、またげられたないようかれているものと、どちらがせいしきなものなのかもわからなかった。それにぞうせきといいこうでんといい、どうごとをするものなのかほうほうらない。しかしともかくもめいれいけたことだから、げんくにノみやつこなどとそうだんしてどうにかすればかろうとかんがえて、ひがししてたびってかねばならなかった。

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