第24話
翌日、ギルドまで何か依頼が無いかを確認に来た2人。扉を潜り中に入るとギルドは騒然としていた。
「あの依頼達成されたんだってよ!!」
「領主様の所の奇病は全部治ったってよ!!」
「この街の薬師が特効薬を作り出したらしいぞ!!」
「なんだよ畜生!俺が金貨5枚頂くはずだったのによ!!」
「ばぁーか、お前なんかが達成できるハズねぇだろ。」
「この為にダンジョンの奥から薬を取って来たのにぃぃぃぃ!!」
騒いでいる人達の前にはあの依頼を取り消す旨と、これ以降は薬の持ち込みを拒否する旨が掛かれた告知が出ていた。
「無事効果が有ったみたいだね。」
「これで大金が入るな。やっと訓練場作って貰えるぜ。」
「しばらく訓練できなかったもんねぇ。」
騒いでいる人達を後目にグロウス達は街中の清掃と下水の清掃の依頼を受けてギルドを後にした。
その後の話をしよう。
薬の話題はすぐに王都にまで届いた。国王の后の1人に奇病の発症者が居た為、すぐに薬は届けられその効果を発揮した。
薬を服用してすぐに鱗は消え、変わっていた種族が戻ったのだ。これには国王が大層喜び、薬を作り出した薬師を貴族にしようとした。
だがネルダはそれを辞退。1人の薬師として国の権力に取り込まれたくないと宣言した。
これには周りの貴族が憤り、不敬だ粛清だと声を上げるが魔女の制裁を知っている者達が時には話し合いで時には武力を持ってこれを制圧した。
他にもこの奇病の犯されている者の調査と薬の増産、治療に3年の月日が掛かった。そしてやっと根治したのである。
その間薬の利益の一部はシンク達の孤児院に寄付されることになり孤児院の修繕や食事、生活環境の改善等が行われて過ごしやすくなった。
ラブニエルの提案で他の孤児院にもこの薬の利益が一部配られ、困窮していた孤児院が立ち直る一助になった。
もちろんこの薬の出所を調査する者も居た。だがどう辿っても薬を持ち込んだ薬師までで痕跡は消えてしまっていた。
特効薬を持ち込んだ薬師が言っていた旅の薬師が見つからなかったのである。その後も旅の薬師を探し続けるも結局は見つかる事は無く調査は中止された。
その間にニアの正式な弟子入りも決定した。
孤児院を出た後、ネルダの元で薬草の栽培に挑戦したニアは見事に薬草を増やして見せたのだ。
ニアの能力を確認したネルダはすぐに動き始めた。ネルダの弟子で子供が欲しくても出来なかった夫婦をイナッカに呼び、ニアをその夫婦の養子にしたのだ。
夫婦はニアの事を実の子供の様に可愛がり、ニアもすぐにその夫婦に懐いていった。
ニアがネルダの元で生活を始めて2年後、正式な弟子となった事で薬草の栽培に成功した事も発表した。
この発表は薬師のみならず国をも揺るがす発表になった。
今まで栽培は不可能とされていた薬草の人口栽培成功を受けて多くの人がニアの身柄を欲した。
時には権力で時には闇に潜む者からも狙われたニア。だが悉く失敗、もしくは手が出せなくなった。
薬師達が寄り集まり出来た協会、薬師ギルドがニアを薬神認定したのだ。
修業を始めて1年足らずでニアはネルダの教える調剤の技術を全て吸収し、さらには膨大な知識まで蓄え症状を聞くだけでどんな薬が必要かを口にできるまでになった。
さらに薬草の他に薬効のある植物の栽培にも成功し、その栽培方法を惜しげも無く薬師達に広めた。
その事に感動した薬師達はニアの身柄について話し合い、満場一致で最重要保護の対象にしたのだった。
薬神認定された者を害した、もしくは害そうとした者は薬師達から苛烈ともとれる報復を受けた。
何処からか確実に情報が洩れ、粛々と報復が実行された。手を出した者は毒や病気を貰い地獄の苦しみを受けた。中には神隠しに合う者達まで居た。報復される事に恐怖を抱いた者達はニアに2度と手を出す事は無かった。
こうしてニアの安全は保障された。その後、成長したニアは今まで治せないと言われていた病気の治療薬の開発や、土壌を改善する薬剤を作って貧困を救う等多大な貢献をして国も民も認める薬神として認められていく。
だがそれは別のお話。
話を戻して奇病の薬の利益を孤児院に寄付した事でシンク達が求めていた訓練場が作られた。
場所は今まで訓練していた林を切り開きそこに作る事になった。
大量の石で出来た壁や結界を張る魔道具を購入して作られたそれは、シンクの出来心による魔改造を受けて国の訓練場以上の性能を誇る場所になってしまった。
だが、おかげで全力を出せるようになったシンクとグロウスは暇があれば訓練場に入り浸り特訓を続けた。
ギルドの救済依頼も引き続き受け、手に入れた報酬の一部は貯金して一部は今まで通り孤児院に渡した。
ラブニエルはもう必要ないからとそれを固辞しようとしたが、子供たちの小遣いに使ってくれと言われて渋々受け取る事にした。
こうして訓練を続けながらもギルドからの依頼をこなし、その態度や実績を評価されて13歳で正式にギルド員として認められるまでになったのである。
正式にギルド員になった後も、2人は修行と依頼を積極的に熟していた。
「ふぃ~終わったぁ~。」
「今回も無事終わったね。」
ハンターギルドの扉をくぐる2つの影、1人は金髪碧眼の少年で腰には光輝く剣がぶら下がっている。身に纏っているのは白い皮鎧。動きを阻害しないよう考えられたその鎧は最低限身を守る部分のみを覆っていた。背中には鎧と同じ素材で作ったのか真っ白なマントが翻っている。その顔は柔らかく、見る者全てを魅了するような気品があった。
もう1人は茶髪で緑の目をした少年。背はもう1人よりも高く、その体は鍛えているのかがっしりとしている。身に守っているのは上下真っ黒な服装。少し光沢のあるその服は見る人が見れば「道着」と呼ばれている物に酷似していると気付く物だった。眼は細く釣り上がり、表情は硬い。傍から見れば不機嫌そうな顔をしているが当人はいたって普通にしているつもりだった。
言う間でも無いが1人は成長したシンク、もう1人は成長したグロウスである。
グロウスが担いでいる袋からは生臭い匂いが漂い、2人が何かの討伐依頼を終えて帰って来たのだと周囲には簡単に解った。
受付まで進んだ2人はそこで依頼の報告を行った。
「お帰りなさいませ、討伐依頼の報告ですね?」
「おう、畑に悪さしてたダッシュボアの討伐終わったぜ。」
「依頼より多く居ましたので全て討伐してきました。これが討伐証明の牙です。」
受付嬢はグロウスから袋を受け取り、証明部位を確認する職員に渡した。その間にグロウスは受付嬢に声を掛ける。
「何か変わった事はあったか?」
「遠くの地でとても強い魔物が出たと話が回って来ました。軍が出動して追い立てる計画している様です。」
「魔王か?」
「わかりません。ただその可能性は高いかと。」
蛇魔王を倒したあの日から世界各地で魔王と呼ばれる強力な魔物が発生し始めた。国は軍を派遣して魔王をもう一つの大陸に追い立てる作戦を実行している。
魔王を討伐出来るのは勇者だけ、人々の中には勇者の出現を願う者が多く現れ始めていた。
「グロウス・・・。」
「しょぼくれんなって、成人したら。そう言う約束だろ?もう少しじゃねぇか。」
2人のそんな会話に疑問符を浮かべる受付嬢。グロウスとシンクは成人である15歳になったら魔王討伐の旅に出る事を決めていた。
逆に言えば15歳になるまではその正体を明かさず自身を鍛える事に集中する様にラブニエルにきつく言われていたのだ。
そして15歳の成人の儀式は明後日に迫っていた。
受付嬢は2人の様子が気にかかるものの自分の職務を全うしようと動く。
「お2人に指名依頼が入っております。」
「「指名依頼?」」
これが2人で行う最後の依頼になるとは思いもしなかった。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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筆が進まなくてストック切れたぁぁぁぁ!!しばらく書き溜め期間に入ります!!
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