第16話
『小賢しい、絶対的な力の差と言う物を見せてやろう。』
蛇魔王が自分に立ち向かて来る2人に対してそう言うと先ほどとは比べ物にならない速度で尾を動かした。
バチーンッ!!
グロウスはその尾を受け止めたが、尾はそれで止まらず尾の先が後ろにいたシンクを跳ね飛ばす。
「シンク!!」
「大丈夫!!」
『小童如きが我の攻撃を止められる物か。』
その後も続く蛇魔王の攻撃に何とか耐えるグロウス、シンクはグロウスの後ろにぴったりと付き尾から身を守る。
『そらそら次が行くぞ?』
蛇魔王は次に魔法による攻撃を始めた、瓦礫が宙に浮きあがり円錐形の形に変わる。変形が終った瓦礫から順にグロウスに向かって飛び始めた。
『ぬはははは!!串刺しになって仲良く死ぬが良い!!』
迫りくる攻撃、視界一杯に広がるそれはどうあっても2人を生きて帰さないという魔王の意思の表れ、しかしグロウスはそんな攻撃を前にして鼻で笑う。
「はんっ!!そんなの効くかよ!!」
なんとグロウスは盾をシンクに渡し、その身で攻撃を受けた。シンクは自分に飛んでくる流れ弾をグロウスから渡された盾で受け流す。
『馬鹿な!?』
串刺しになり死亡すると思っていた蛇魔王は目の前にある光景に絶句する。なぜならば自分の攻撃はことごとくその体に弾かれ砕け散ったからだ。
「こんなもん、シンクの魔法に比べたら屁でもないぜ!!」
「やせ我慢しないの!!ほら回復!!」
よく見れば多少なりともダメージは入っている。攻撃の先端は刺さり内出血を起こしていた。だがそれも後ろに居る小童が即座に回復してしまう。
「しっかし身体強化様様だな!!俺の固さに磨きが掛かったぜ!!」
「油断したちゃ駄目だよ!!永続じゃないんだから!!」
「わかってるって。」
すでに脅威は去ったかの様に談笑する2人。蛇魔王はそんな2人の態度に怒り出す。
『舐めるで無いわ!!』
2人に向かって大口を開けて飛び込む蛇魔王。その牙の攻撃をグロウスは両腕で受けた。
『ふはははは!!これで貴様の命も仕舞じゃ!!』
蛇魔王の奥の手毒攻撃である。“強酸性”の毒液は注がれた物を瞬時に溶かしてしまう。
『溶けて無くなるが良い!!その姿を見て絶望した小僧を我が喰らってやる!!』
今度こそ勝った!!そう思った魔王。だがしかし。
「・・・・なんともないな?」
「・・・・みたいだね?一応回復しとくね。」
「おう頼んだ。」
『っ!?貴様は何者だ!?』
覚えているだろうか?グロウスはこのダンジョンに落ちた際、大量のスライムに“溶かされている。”
1つ1つは微々たる酸だったかもしれない。だが彼は攻撃を受ければ受ける程耐性を獲得し成長する<スキル>を持っている。
たとえそれが極小スライムの酸攻撃であったとしても攻撃は攻撃。大量の熟練度を取得したグロウスはすでに酸攻撃に対して強い耐性を獲得していたのだ。
事実攻撃を受けたグロウスの腕は、牙の刺さった辺りは少し焼けただれたようになっていたが、それ以上溶ける事は無かった。
そして牙が刺さったままの魔王はそこに大きな隙を晒していた。
「近づいてきてくれてラッキー!!」
腕に刺さった牙を掴み固定するグロウス。シンクはすでにその腕に先ほどの様な光る玉を作り出していた。
『待て!!辞めよ!!』
そういいながら慌てて口を閉じようとする蛇魔王、だが身体強化が掛かったグロウスに足で下あごを押さえつけられ思ったように閉じられない。
「よし!!準備完了!!」
『クッ!!こうなれば!!』
次の瞬間蛇魔王の体が2人を包み込み、締めあげ始めた。
「ぐぅ!!」
「うおっ!!」
『ふはははは、魔王らしからぬ攻撃故控えていたが我は蛇ぞ!!この力こそ我の根源だ!』
さらに2人を締め上げる魔王。だがそこでまたしても予想外な事が起きる。
「うーむ、マッサージみたいだな気持ちいい。」
「グ・ロウ・す、た・すけ・・。」
「おっとわりぃ。」
圧迫攻撃に次第に耐性を獲得したグロウス、魔王の攻撃は強くその分反動でかなりの耐性を獲得し、数秒で身体強化魔法込みであれば耐えられるようになった。
苦しんでいるシンクを自身の腕の中に入れ拘束の外に放り出すグロウス。シンクが用意していた魔法はすでに霧散してしまっていた。
『一匹逃げおったか、だがまぁ良い。まずは貴様からだ!!』
そのままぐいぐいと締め付ける魔王、だがグロウスは鼻をほじっていた。
「ちょっと力弱いよ。こんなんじゃ凝りが解れねぇよ。」
「君そんな事言う歳じゃないでしょうに・・・。」
『っっっっっ!?』
さらに力を入れて締め上げる魔王、そんな時グロウスに掛かっていた身体強化魔法が途切れた!!
「あっ!?」
「グフっ!!」
『今じゃ!!』
今までは自身の頑丈の能力と身体強化魔法の相乗効果によって耐えていたグロウス。だが身体強化魔法も途切れ頑丈の能力だけで耐えなければいけなくなった。
シンクも慌てて身体強化を掛け直そうとするが、魔王がグロウスの体を身の内に隠して魔法が届かなくしてしまった。
『ふはははは!!手古摺らされたがこれで仕舞じゃ!!』
勝ち誇る蛇魔王。3度目の正直と言う言葉があるように今度こそは勝った。そう思っていた。だが世の中にはこんな言葉もある。“2度ある事は3度ある。”
『ギャァァァァァァ!!』
突然叫び声を上げ始める蛇魔王、そしてグロウスの拘束を解いてのたうち回り始めた。
『我の体がぁぁぁぁぁ!!』
「もぐもぐごっくん!!うーん、淡泊で優しいお味、塩が欲しいぞ。」
「君、魔王の体食べたの?」
蛇魔王の体の一部が齧られたように抉れており、中から飛び出したグロウスは口をもぐもぐと動かして何かを飲み込んでいた。
『我の鱗に傷をつけたばかりか我が身を喰らうとは!』
「いやぁ、締め付けてくれたおかげで頑丈のレベル上がってな。お前の鱗くらいなら破壊出来るようになったんだわ。」
頑丈さは攻撃にも利用できる。固いもの同士がぶつかればより硬度の高い方が残り低い方は砕け散る。その結果が今の状態だった。
『許さぬ!!』
再度尾による攻撃を繰り出す蛇魔王。だがグロウスは腕だけでその攻撃を受けきった。
「もう効かねぇぞ?」
尾を抱え込み離さない様にしているグロウス。その体にはまた身体強化の魔法が掛かっていた。
「やっと出来た。」
「遅いぞ。」
「この魔法は準備に時間が掛かるんだって!!」
「まぁいいブチかませ!!」
「いくよ!!<神の雷>!!」
崩れた天井から見える空はすぐに曇り、そして一筋の巨大な雷を魔王の上に堕とす。
『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』「ジャァァァァァァァァァ!!」
雷を受け、叫び声をあげる魔王。そして攻撃が終ったその場には所々黒く焦げ、煙を立ち昇らせる魔王が居た。
しかし、腐っても魔王。まだ勇者として成長しきっていない10歳の攻撃等、受けきる事は容易かった。
『少々痛い思いをしたがこれが貴様らの最大の攻撃であろう!!やはり貴様らは我にもてあそばれ殺される運命なのだ!!』
ニヤリと口を歪ませる魔王。だがシンクの攻撃はこれで2度目、そして2人はまだ油断していなかった。“3度目の正直”として準備していた攻撃が今放たれる。
「いくよグロウス!!」
「よっしゃ来い!!」
「「合体奥義!!キャノンボールアタック!!」」
グロウスの背に手を当てたシンクは、そこで魔法を発動する。魔法は爆発に代わりグロウスの体を高速で飛翔させた。
グロウスも飛び出す際に自身で回転を加え、あたかも人間砲弾の様に魔王の頭に向かって突き進む。
そして、勝ち誇り油断していた魔王の顎下に命中したグロウスはその“頑丈さ”を持ってその質量と爆発の威力を十全に伝え、魔王の頭を吹き飛ばした。
「勝った!!」
その結果を見届けたシンクはガッツポーズをして強敵との初勝利に歓喜した。この技の命名はシンクである。
「んー!!んーーーーっ!!」
「あっ!!ごめんっ!!今助けるね!!」
なお勢いが止まらずそのまま飛んでいったグロウスは壁に激突し頭から埋まっていた。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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