第15話

瓦礫を押しのけ姿を現した白蛇、グロウス達はその瞳ににらまれて動けない状況が続いていた。


じっとこちらを見続ける白蛇、そして苛立たし気に尻尾を瓦礫に叩きつけ粉砕した。


『また我を裏切るかマリア!!』

「シャアアアアアアアアアアアアアア!!」


白蛇は崩れた天井から見える空に向かって吠えた。


視線が途切れ動けるようになったグロウス達は暴れる蛇と飛んでくる瓦礫の破片に対処する為に態勢を整える。


白蛇を刺激しないよう、小声でシンクが魔法を使って結界を張り、グロウスはそんなシンクを守れる位置に着いた。


そんな2人の動きに気が付いたのか白蛇がまたグロウス達を睨みつける。しかし今回は結界によって動けなくなる事は無かった。


『腹立たしい!!我との約定を2度も破るとは!!貴様等には再度見せしめとなって貰おう!!』


白蛇からの敵意が増している事に慌てたシンクは、事情を問う為に話しかける。


「待ってください!僕らは依頼でここに来ただけです!!事情を聴かせて下さい!!」

『・・・・・・。良かろう。だが貴様らの運命は変わらん!!』


どうあっても自分達に害をなそうとする白蛇、グロウスは小声でシンクに問いかける。


「おい、どうすんだよ。」

「事情を聴いてどうにか出来ないか考える。出来なくてもどうにか逃げ道を探るよ。」

「任せっぞ。」


グロウスはシンクを守る事に集中する事にした。自分の相棒ならこの状況を打開する方法を見つけてくれると信じて。


そんな2人のやり取りを気にせずに白蛇は語り始める。まるで無意味だと言わんばかりに。


『貴様等人で言う200年前、我は1人の女と契約したのだ。自分が我の物にならぬ代わりに娘を差し出すと。20年ごとに血縁の娘を我に捧げ、その間我はかの血縁に加護を与え暴れる事も無くこの場所でダンジョンの管理をし続けるとな!!』


『だが奴は裏切った!!前回我によこしたのは男であった!!だからこそ我は見せしめにそ奴を痛めつけ、外の世界に放り出したのだ!!』


『それで気が付けば良し、気が付かぬのであれば今度こそ約定を放棄しかの血族を血祭りにあげると誓ってな!!』


憎々し気な表情を浮かべる白蛇。シンクは時間を稼ぐために会話を続ける。


「契約の内容はそれで全部なのですか?」

『そうだ、我の首に下がっているペンダントの力でこの場所に来ることになっていた。だが前回も今回もペンダントのみが先に到着し、肝心の花嫁が一向に来なかった。そして来たのが貴様等だという事だ。』


怒りの感情が高まってきている事に気が付きながらも、時間稼ぎの為に今度はグロウスが白蛇に問いかける。


「どうして花嫁が来るという話になったんだ?」

『200年前、我は地上で暴れていた。だがこの場に在った国から生贄を捧げられ、暴れる事を辞める様に懇願されたのだ。最初は笑い飛ばし、話を持ってきた使者をなぶり殺しにして送り返してやった。だがある日訪れた女に我は衝撃を受けた。この世界で一番美しいと思うほどの女が姿を現し、我に取引を持ち掛けたのだ。』

「それが20年ごとに人を送るという物だったのですね。」

『そうだ!!我はマリアの美貌が気に入ったのだ!!だが奴は自分が我の元に来る事を嫌がり娘を代わりに送ると言ったのだ!!我はそれを承諾した、どの娘もマリアと似て美しかった。だから加護を血族に与え、我の物にしたのだ!!』


話ている間にまた尻尾で瓦礫を破壊する蛇、そしてとうとうその時が訪れる。


『これで事情は分かったであろう。大人しく見せしめとなって貰おう!!そして我は地上に出てかの血族全てを抹殺する!!我を裏切った罪は重いぞマリア!!』

「ジャァァァァァァァァァァ!!」


再度雄たけびを上げる蛇、容赦はしないとその様相が伝えてくる。


「おい、来るぞ!!」

「もう少しで・・・。良しっ!!」


どんな攻撃も受けきるつもりで腰を落とし、シンクに声を掛けたグロウス。その後ろでグロウスは手の中に白い球体を生み出していた。


丁度その球体を生み出していた魔法が完成したのかシンクは球体を持った手を天に掲げ、魔法名を叫ぶ。


「《永久凍土》!!」


それは絶対に溶けないと言われた氷の大地を彷彿とさせる魔法。その魔法は結界の外を瞬時にして白く染め上げ、全ての物を凍り付かせる。


極大魔法とも呼べる魔法を組み上げるには、今のシンクでは時間が掛かる。だがその威力は絶大で、白蛇も一緒に凍り付いていた。


「やったか!!」

「グロウスそれ言っちゃダメな奴!!」


凍り付き、目の光を失った白蛇に肩の力を抜いたグロウス。しかし次の瞬間、凍り付いた蛇の目が赤く輝き、グロウスは衝撃を受けて瓦礫の山まで吹き飛ばされた。


「グロウス!!」

『こんな物で我を仕留められると思ったか?片腹痛いわ!!』


あっさりと自身を覆う氷を砕いて出てくる白蛇。シンクはグロウスの安否が気がかりだったが蛇から目を離す事が出来ず、結界に力を注いだ。


『魔王の中でも<白き厄災>と呼ばれた我に立ち向かうには幼過ぎたようだな!!』

「魔王だって!?」


目の前の蛇が魔王であった事に驚いた瞬間、シンクもグロウスと同じ様に衝撃を受けて吹き飛ばされ。瓦礫の山に衝突するのだった。


『なんともあっけない、以前の者であればもう少し歯ごたえがあったが。これでは見せしめにならんでは無いか。』


ガラガラと崩れる瓦礫を見ながらそうつぶやく蛇の魔王。


『まぁ良い。久しい地上で奴の血族を皆殺しにし、大暴れしたらふく人を喰らってやろう。そうすれば少しは溜飲も下がるという物だ。』


自分の勝利を疑わず、その場を離れようとした白蛇。だがそれは出来なかった、何故なら瓦礫の下で2人共生きている事に気が付いたからだ。


「だっっっっっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


そして瓦礫の中から大声を上げながらグロウスが飛び出して来た。その脇にはシンクを抱えており、手には小さな盾が付いている。


「あっぶなかったぁぁぁ!!盾が間に合って命拾いしたぜ!!」


フゥと息を吐くグロウス。彼はあの瞬間に何かが来ると思い右手に盾を生み出していた。衝撃の大半を盾で受け止める事に成功し生き残ったのだった。


「ちょっと、早く降ろして!!まだあいつが居るから!!」

「おっと悪い。」


グロウスの脇に抱えられていたシンクが声を掛け、慌てて離す。シンクはすぐに立ち上がり戦闘態勢を取った。


シンクも結界に力を入れていたおかげで命拾いしていた。しかもちょうどグロウスが倒れている場所に突っ込んだ為、グロウスが飛んで来たシンクを受け止め怪我をすることが無かった。


瓦礫に埋もれた2人は脱出する為にグロウスに身体強化の魔法を掛けて瓦礫を吹き飛ばして飛び出て来たのだ。


『ほう?まだ生きておったか。』

「ふんっ!!あれくらいで死んでたまるかよ!!」

「僕は死にそうだったけどね。運が良かったよ・・・。」


ドヤ顔をするグロウスに呆れた顔をしたシンク。そんな2人を見た蛇魔王はニヤリと口元を歪ませる。


『ではどれほどで壊れるか試してやろう!!』


再度攻撃を繰り出す蛇魔王、だが身体強化の魔法が掛かったグロウスにはその攻撃が見え始めていた。


「ここだ!!」


ガイーンッ!!


盾によって弾き飛ばされたのは蛇魔王の尻尾、先程の見えない攻撃も尻尾を高速で動かして2人を打ち据えたのだった。


「グロウス、守りは任せるよ!!君がやられたら終わりだからね!!」

「おう任せとけ!!大丈夫だ!!俺は<頑丈>だからな!!」


2人はどうにかこの状況を生き残ろうと蛇魔王に対して戦いを挑むのだった。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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