第14話

スライムの誘導で進んでしばらく経った。まだ出口は見えず配管はまだまだ先に続いている様だ。


「なぁ・・・なんかおかしくないか?」

「・・・うん、僕もそう思う。」

「ピギィ・・・・。」


2人と1匹が感じている違和感、それは地上に向かっているはずの配管が地下に向かってさらに進んでいるという事だった。


「道を間違えたとか?」

「ピギッピギィッ!!」

「ん~間違えてないみたい。それに一本道だし迷う可能性は無いって。」

「お前こいつの言ってること分かるのか?」

「なんとなくだけどねぇ。でも合ってるよね?」

「ピ~ギィ。」

「ほら合ってるみたい。」

「・・・・勇者ってすげぇな。」


話ながらも進むグロウス達、現状出口に向かうにはこの配管を進むしかない。罠や魔物の警戒を怠っていないが、配管の中に罠や魔物は居ない様子でまだ遭遇していなかった。


ただ明かりに照らされた配管を通る事に飽きたのか、シンクが前世から引っ張ってきた知識を口にする。


「こういう時って何か起こるんだよねぇ。」

「何かって何だ?」

「例えば、後ろから突然大量の水が流れて来てどこかに流されるとか。配管の中に化け物が居て追い掛け回されるとかかな。」

「・・・・やめろよ、本当にそんな事が起こったら俺達一巻の終わりだぞ。」

「まっお話の中の出来事だからそんな事早々起こる事は「ピギィッ!!」?どうしたの?」


それはたわいもない会話だった。だが世の中にはフラグと言う言葉もある。シンクのたとえ話はとてつもなく大きなフラグを建ててしまった。


ドドドドドドドドッ


遠くから地響きのような音が聞こえ始め、配管も震え始める。


「なぁ、余計な事言ったからじゃねぇかこれ。」

「・・・ごめん、とりあえず息が出来るように結界貼るね。」

「ピギッ!!ピギッ!!」

「あたたた、ごめん、ごめんって!!君は僕の服の中に居てね。」


スライムの体当たりによる抗議とグロウスのジト目に晒されながら必要な事を行うシンク。


そんな2人と1匹の視線の先、丁度今自分達が通って来た場所から大量の水が勢いよく流れて来て視界を覆う。


「あえて言おう!!フラグ回収乙!!」

「お前こんな時に何わけわかんない事言ってんだ!!」

「ピィィィィギィィィィィィ!!」

「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」」


逃げ道の無い配管の中で大量の水に襲われたらどうなるか?もちろん流されるのである。それはもう容赦なく、自分がどちらを向いているのか判らなくなるほどシェイクされて。


ドドドドドド!!ザバァ!!


どれほど流されたのだろうか?グロウス達は水に飲み込まれ、気が付けばいつの間にか広い場所に流れ着いていた。そこはかなり広いスペースになっていて、配管の口も数多く見受けられる。どうやら配管の終着点の様だ。


「おぇぇぇぇ、お前等大丈夫かぁぁ。」

「うえええ、一応大丈夫・・・・・。おえっ。」

「ピギィ・・・・・。」


洗濯機の中に放り込まれたかのようにかき回されたグロウス達は、目を回してその気持ち悪さと戦う。濡れた服を乾かし、気分を落ち着かせるのにしばらくの時間を要した。


大量の水に流され、下手をすれば離れ離れになる事も覚悟していたが、どうやら運よく離れる事は無かったようだ。


「ふぅ、やっと落ち着いた。」

「ここ何処だ?解るか?」

「ピーギ。」

「分かんないって、もしかして来た事ない場所なんじゃない?」

「ピギッ!!ピーギ、ピギ!!ピギピギッ!!」

「なんて?」

「あの配管から水が出たことは無い。何かトラブルが起こった様だ。だってさ。」


トラブル、そう聞いて考え込むグロウス。そして心当たりがあったのか冷や汗を流し、話題を逸らそうとした。


「どうでもいいけどお前しゃべり方固いんだな。」

「ピギッ!!ピギィ!!」

「女王の眷属であれば当然!!だそうだよ。でグロウスは何か心当たりあるんでしょ?」


幼いころから一緒に居る親友には下手な誤魔化しは効かなかった。


「いやぁ、あはははは。俺が蹴っ飛ばしたレバーあっただろ?あれかなぁってな?」

「うん、絶対それだよ。たぶんあれ配管の切り替え装置だったんじゃないかな。なんで配管の中にあるのかは謎だけど。」

「ピーギッ!!ピギッ!!」

「お前のせいじゃないか!!だって。」

「いて!!いてて!!悪かったってだからそれやめろ!!」


スライムに体当たりされながら謝るグロウス、そんな彼にしょうがないなぁという表情を向けたシンクはとりあえず現状の確認を優先する事にした。


「とりあえず周りを調べようか。」


そこは今まで見ていたダンジョンの壁では無く、石で組まれた壁になっていた。配管からはちょろちょろと水が流れ続け、地面には石組みの通路の他は水に沈んでいる。


水は緑色に濁り、苔が大量に発生していた。通路にも所々に苔が生え滑りやすくなっている。


「なぁ、これって何か通った後じゃないか?」

「そうだね、通路の真ん中だけ苔が無いのはおかしいし。」


通路の真ん中は何かに削られたようにへこみ、苔も生えていなかった。その後は通路の先と自分達の後ろにずっと続いている。


「これたどって行ったら出口に行けねぇかな。」

「でこの痕の正体と出会って戦闘になると。」

「そうなっちまうよなぁ。」

「君は何か気が付いた?」

「ピ~ギ。」

「そっかぁ、何も分かんないかぁ。」

「まぁうだうだしててもしょうがねぇ、進むぞ。」


グロウスの言葉でまた進み始める2人と1匹。途中食事休憩を挟み進み続けると明るい場所に出る事が出来た。


「ありゃ外か?」

「そうみたい。」

「ピギッ!!」


周りを警戒しながら光の元にたどり着いたグロウス達。そこは天井が崩れ瓦礫の山を築き、空が見えている場所だった。だが見えている空に建物等は見受けられず、木々が生い茂っている。


「登れそうだな。」

「僕の魔法でも上がれるよ?」

「何かありそうなんだよなぁ、あとどれだけ魔法使えるよ?」

「うーん、大きいので5発くらいかな。外と繋がってるから時間が経てばもっと使える様になるよ。」

「体内魔素の回復だっけか。」

「うん。」


この世界には魔素と呼ばれる物質が溢れている。この世界に生きるモノには全て魔素が宿り、体内に一定量貯める事が出来た。


魔素は生き物の意識に呼応する性質があり、思いによって超常の現象を引き起こす。人々はその現象に名前を付け、総じて<魔法>と呼んだ。


生き物に宿る魔素、体内魔素と呼ばれるそれは回復に睡眠を必要とする。それは意識に呼応する魔素を効率良く吸収するには意識が落ちている時、つまり睡眠時に一番回復量が多いからである。


しかしシンクの持つ<魔素自動回復>と<魔素吸収量増加>の効果で通常の人より多く体内魔素が回復していくのだ。


「ちょっと休むか。完全に回復するにはどれくらい掛かる?」

「うーん、寝たほうが速いけどこんな場所じゃねぇ・・・。夕暮れまでにはって感じかな?」

「休めるところ探して少しのんびりするか。」


2人が周りを見回してどこか身を隠す場所を探そうとしたその時、目の前にあった瓦礫のが突然動き始めた。


「ピギッ!!」

「なんだっ!?」


身構える2人と1匹、瓦礫の山はガラガラと音を立てて崩れていき土埃をまき散らす。その中から巨大な細長い影が立ち上がるのをグロウス達は見た。


その影はこちらを見る様に動き、その赤い瞳を見た瞬間、グロウス達の体は極度のプレッシャーに晒され動かなくなる。


『約束の時は来た。』


土埃が晴れ、影の正体が露わになる。それは巨大な白蛇だった。そしてその首には今回の依頼の品である赤い宝石に蛇の装飾がされたペンダントがぶら下がっていた。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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