第2話
黙々と通りを歩く二人。そしてもう少しで孤児院と言う所でグロウスは口を開いた。
「なぁシンク。お前何か隠してないか?」
「えっ!?どっどうしてそう思ったの?」
グロウスの言葉に動揺するシンク。
「どうしても何も俺達はずっと一緒だったんだ。そりゃわかるだろ?」
「・・・・・。グロウスには叶わないなぁ。」
そう言いながら『ステータス』と唱えて光の板取り出すシンク。そして何かを操作した後グロウスに見える様にした。その内容を見たグロウスは息を飲んだ。
名前 クーリージス・シンク
種族 普人種
年齢 10歳
職業 勇者
スキル
<聖剣召喚><聖剣術><全魔導><魔素消費量減少><魔素自動回復><魔素吸収量増加><収納><鑑定><自動回復><勇覇気><鼓舞><指導><神託><極体術><アカシックレコード(クラス1)><偽装>
ギフト
<転生者><勇者><世界を救う者><神に呼ばれし者>
「な・・・・なんだよこれ・・・。」
「ごめん、僕は神様からこの世界を救って欲しいって言われて来たんだ。」
シンクがなにか話をしていたがグロウスの耳には聞こえていなかった。自分が欲しかったスキルや職業を全部持っているシンクへの嫉妬と、大事な事を話してくれず、裏切ったという思いが頭の中をぐちゃぐちゃにしてしまった。
「おまえ・・・騙してたのかよ・・・。」
「・・・・・ごめん。」
「・・・知ってたのかよ。俺のスキルの事。」
「・・・・。うん、知ってた。」
泣き出しそうな顔になるシンク、しかしグロウスは気が付かない。それよりも感情を爆発させない様にするので精一杯だった。しかし幼いグロウスに我慢することも出来ず・・・。
「なるほどな、それで?勇者様は昔っから傍にいる道化を笑ってたわけだ。」
「っ!?違う!!」
「何が違う!!お前はなんでも出来るじゃないか!!それを出来ない振りして、俺が色々教えたり世話してるのを心の中で笑ってたんだろう!!」
「そんな事ない!!こっちに来て親に捨てられて!!それでも生きて来れたのはグロウスの「うるさい!!」・・・。」
爆発した感情はもう後戻り出来ないところまで来てしまっていた。昔から二人で協力して生きて来て、どうしようも無く孤児院に身を寄せた。孤児院でも二人で協力して下の子達の面倒を見たり手伝いをした。
だけどそれは幻想だった。やろうと思えばシンクは一人で何でも出来た。それを自分はあれはこうする、これはこうすると教えた。馬鹿みたいだ!!
「お前は俺が欲しかったものを全部持ってるんだ。良かったな?」
「グロウス・・・。」
「はっ勇者様はさっさと世界を救いに行っちまえ。二度と俺の前に現れるな!」
グロウスはそう叫びさっさと孤児院に入ってしまった。それを見送ったシンクの顔から涙が流れ続けている事も気付かずに・・・・。
その夜、グロウスは自分の部屋に戻らず屋根裏で寝ていた。孤児院の部屋は共同で使っていて今まではシンクと一緒に使っていたからだ。
「畜生・・・。」
1人になり落ち着いたグロウスは、教会からの帰りにシンクに言ってしまった言葉を後悔していた。たとえシンクが勇者であろうと今まで協力して生きて来た事実は変わらない。
少ない食事を分け合い、笑い合って食べていた時を思い出し、そしてこれからはもうそんな事が出来ないと思うと寂しさと悔しさと自己嫌悪で寝る事は出来なかった。
「明日謝ろう・・。」
そう思い寝ようとしていたグロウスの元に足音が聞こえた。その足音は静かに屋根裏に昇って来た。
「グロウス・・・。」
「シンク?」
そこには目を真っ赤に腫らし、涙でぐちゃぐちゃな顔になったシンクが居た。
「おまっどうしたんだそれ!!」
「ごめんねグロウス・・・・。僕が本当の事を話さなかったから・・・。」
そう言いながら頭を下げるシンクに気まずくなったグロウスは頭を掻きながら返答する。
「・・・・・こっちこそ悪かった。あの時はどうかしてたんだ。ハズレスキルが1つだけでこの先どう生きて行こうか考えていた時に、あんなに凄い物見せられて。」
「ううん、最初から話していたらグロウスが怒る事も無かったんだ・・・・。だからごめん。」
あたまを下げ合う二人。そしてどこからか プッ と笑い声が聞こえた。
「ハハハ、しっかしお前酷い顔だぞ!!」
「それはグロウスだって!!」
「「はははははっ!!」」
仲直りしたグロウスはシンクに詳しく事情を聴くことにした。
「で、神様から呼ばれたってのは?」
「・・・うん、全部話すね?」
シンクから聞いた話は驚くべきものだった。シンクには前世の記憶があり、そこは高度に文明が発達した場所だった様だ。そこで暮らしていたがある日突然事故によって亡くなってしまった。
しかし、この世界の神に呼ばれ世界の崩壊を止めて欲しいとお願いされた。この世界には魔王と呼ばれる魔物の王の様な存在が数多く居て人類の殲滅を狙っている。
人類の数が減れば世界の均衡は崩れいずれこの世界は消滅してしまうそうだ。
「・・・。シンクはどうするんだ?」
「えっ?」
「えっじゃねぇよ。魔王を倒すのかって事だ。」
「・・・それは・・・。」
考え込んでしまうシンク。それを見守るグロウスはため息を吐きながら呟いた。
「ハァ・・・。俺にも戦う力が在ったらなぁ。シンクと一緒に戦うのに・・・。」
「それ、本当?」
グロウスの呟きをきいていたシンクは身を乗り出しながら聞き返した。
「近いっ近いって!!あぁ戦える力が在ったらな。だけど俺のスキルは1つ、<頑丈>だけだぞ?戦えるわけ無い。」
また溜息を吐くグロウス、しかしシンクはそんな事は問題無いという様に胸を張って言う。
「グロウスが戦える方法ならあるよ!!」
「本当か?」
シンクの言葉を信じ切れないグロウス。親友の言葉だから信じたいという思いはあるが、神父から言われた言葉が繰り替し頭に響いていた。
「大丈夫、僕のスキル見たでしょ?」
「あぁ、結構な数のスキルが在ったな。」
「その中のアカシックレコードを使うんだよ!!」
手を取りながら真剣な目で訴えかけるシンク。その目は自分の事を信じて欲しいと雄弁に語っていた。
その目にグロウスは負けた。
「分かった。シンクの事を信じるよ。だから任せたぞ相棒!!」
「うん、じゃあ早速やってみるね。」
手を握りながら目を閉じるシンク。そして口からは呪文のような物が高速で紡ぎ出されて行った。
どれくらいの時間が経っただろう?すこしうとうとしていたグロウスの耳にシンクの声が響く。
「見つけた!!」
ビクッ!!「ほえっ?何を見つけた?鼠か?」
すこし寝ぼけているグロウスに苦笑しながらシンクは答える。
「グロウスが戦えるようになる方法を見つけたんだよ!!」
「ほっ本当か!!」
「うんっ、バッチリ!!」
その言葉を聞いてグロウスは飛び上がって喜んだ。
「やった!!これで俺も役に立てる!!」
「良かったねグロウス。」
そんな会話そしている二人の元に大きな影が近寄った。そして騒いでいる二人の頭に拳を振り下ろす!!
「いつまで騒いでおる!!もう夜中じゃ!!さっさと寝なさい!!」
二人を叱り付けたのはこの孤児院の院長であるアイジー・ラブニエルだった。
「「いっ院長先生・・・。」」
「まったく天井が騒がしいと思ったらお前らじゃったか、この悪戯小僧どもめ!!他の者はもう寝ているんじゃ!!部屋に戻って早く休みなさい!!」
拳を握りながら二人を注意する院長にまた殴られてはたまらないと急いで天井裏から降りる二人。
そして院長におやすみの挨拶をして部屋に戻り始める。
「方法は明日教えるね。」
「おう、楽しみしてる。」
部屋に戻る二人の顔は笑顔になっていた。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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