大丈夫!!俺は頑丈だ!!

コトスケ5

第1話

ここは異世界タートス、サイコロの形をしたこの世界は各面が地球と同じ面積を持っている。


この世界の住人は各面だけが自分の世界だと思い暮らしている。そしてその世界の1つ、大陸が二つ並んでいる面(世界)で物語が始まる。


デュアル大陸東部、辺境の街イナッカ


「とうとうこの日が来たな!!」

「うん、そうだね。」


街の中の道を二人の子供が歩いている。片方はとても楽しそうな笑顔で、もう一方は隣の子を気遣うような顔で、二人は教会を目指していた。


「いやぁ楽しみだなぁ、どんな<スキル>なのかな?」

「うーん、あんまり期待できないかもよ?」


この大陸では十歳を迎えるその日、教会にて<鑑定>を行いその子供に宿っている<スキル>と<ギフト>を調べる決まりになっていた。


この世界の人は自分でスキルを表示する事が出来る。だがそれは一度教会で鑑定を受け、神に自分の存在を知らせないと使えなかった。


<スキル>とは一人一つは持っている特別な技能の事でその人の人生を左右する物だと言われている。十以上スキルを持っている者は英雄と呼ばれ国や教会に召し抱えられる事もある。


<ギフト>とは神からの贈り物と呼ばれ称号とも言われる。その人物がなした偉業や起こした行動の結果等で授けられ。中には<スキル>が付いて来る物もある。


いま街の通りを歩いている二人は十歳。今日は国に定められた十になる子供を鑑定する日であり、教会で鑑定を受ける為に歩いているのだった。


「院長の助けになるスキルが良いな。」

「シンクなら絶対そんなスキルだって!!俺は戦えるスキルが良いな。そしたら獲物を取って来てあいつらに食わせてやれるだろ?」


この二人は孤児だった。物心つく前から一緒に過ごし、ある日飢えに苦しんでいる所を孤児院の院長であるアイジー・ラブニエルに拾われそれ以降孤児院で過ごしている。


「おっもう結構並んでる!!速く行こうぜシンク!!」

「待ってよグロウス!!」


二人はすでに並んでいる子供達の最後尾に並んだ。時間が過ぎるとさらに人は増え、最後尾が見えなくなっていた。


「うわぁ、早めに来てよかったね。」

「だよなぁ。まさか朝日が昇る前に来たのに並んでるとは思わなかった。」


その人の多さに目を見張る二人。そして教会が朝を知らせる鐘を鳴らすと同時に扉が開き、神父とシスターが出てくる。


「大変お待たせいたしました。これよりスキル判定の議を執り行いたいと思います。先頭の人から順に中にお入り下さい。」


先頭の親子が神父に連れられ中に入っていく。シスターはここで列の整理をするようだ。


「なんだか僕緊張してきた・・・・。」

「大丈夫だって!!すぐに終わるさ。ほらもう出て来た。」


最初に入った親子連れが出てくるのと同時に次の人達が教会に入る。出て来た親子は良いスキルだったのか笑顔でこれからどうするのか話し合っている様だ。


「なっ?それに変なスキルだったとしても何かしらの力が有るのは間違いない。これ以上悪くはならないんだから気楽に行こうぜ!!」

「・・・・・。うん、そうだね。」


列は次第に短くなっていく。教会から出る人の反応は千差万別だ。喜んでいる者、悲しんでいる者、挙句は人が見ている前で追放を言い渡す者まで居た。


「かわいそう・・・・。」

「そうだよなぁ、別に何か減ったわけじゃないのにいきなり追い出すとか。なぁシンク、あいつが行先なさそうだったら俺達の所に勧誘しようぜ!!」

「うん、そうだね!!グロウスはやっぱり優しいね。」

「よせよ、照れるぜ。」


どうやらその子供は親戚の家に引き取られて行った様だ。そんな風に皆の様子を見ながら過ごしていると自分達の番になった。


「じゃあ行ってくる。」

「うん、頑張って!!」

「何を頑張るんだよ。」


グロウスが中に入るとそこは幻想的な場所だった。普段礼拝で使われている椅子は片付けられ、壁には白い垂れ幕が下がり床には真っ赤な絨毯が敷かれている。


グロウスはその荘厳な雰囲気に息を飲む、だが今日は待ちに待ったスキル判定の日。覚悟を決めて奥で待っている神父の所まで歩いて行くのだった。


「名前は?」

「グロウス。」

「一人かね?」

「友達と来た。」

「そうか、では儀式を始めよう。グロウス君、君はこの水晶に手を添えているだけでいい。」


グロウスは神父に言われるまま両手で水晶に触れる。


「神よ!!今日この日十を生きた子に祝福を授けたまえ!!」


神父の言葉と同時に光を放つ水晶、そしてその水晶からグロウスの体に光が入り込み始めた。水晶はその光を徐々に失い。全ての光はグロウスの体に吸い込まれて行った。


「これで神は君の事を知った。『ステータス』そう唱えてみると言い。」

「『ステータス』」


名前 スターディ・グロウス

種族 普人種

歳 10歳

職業 なし

スキル

<頑丈>


ギフト

なし


目の前に浮かぶ光る板に映し出されたスキルを見てグロウスは頭を捻る。このようなスキルを聞いたことが無かったからだ。


「どうしたね?」

「スキルが1つしか無くて。それに聞いた事が無かった奴だから・・・。」

「見せて貰っても良いかね?」

「どうぞ。」


グロウスが光の板を神父に向ける。それを見た神父はとても悲しそうな顔をした。


「どうですか?」

「このスキルは少し体が丈夫になるだけのスキルだね。」

「何かに使えるスキルとか・・・・。」

「残念だが、戦う為のスキルでも何かを作り出す為のスキルでも無いよ。ただ自分の体が丈夫になるだけだ。」


それを聞いてグロウスは愕然とした。世の中にハズレと呼ばれるスキルは数多くあるが、まさかたった一つのスキルがそのハズレスキルの1つだとは思わなかった。


「どうにかなりませんか!!俺は孤児院の奴らを腹いっぱいにしてやりたいんだ!!」

「残念ながら我々はスキルを与えるのではなく、すでにあるスキルを見える様にするだけなんだ。だからどうしようも出来ない。すまないね。」


神父から優しく諭され教会の外に出る。そこで待っていた親友は友の顔を見て“やはり”結果が望ましい物では無かったと悟った。


「大丈夫?」

「・・・・・。」

「次の方どうぞ!」

「はいっ!!・・・・後で話は聞くね?すぐに戻ってくるから!ここで待っててね。絶対だよ?」


そういって教会に入っていくシンク。グロウスは列から離れ教会の傍で友が出てくるのを待っていた。


グロウスには夢があったのだ。強力なスキルを得て成り上がり、人々を守る“勇者”になりたいと。


この世界には魔物と呼ばれる人類の脅威が居る。人類は奴等に目の敵にされその版図を縮小する一方だった。しかし過去に人類を滅亡から救ったのがどこからか現れた“勇者”だった。


グロウスはその話に夢中になり。“勇者”に憧れる様になったのだ。


だがそれは今日この日に叶わないと知ってしまった。スキルの数はたった一つ、それもハズレと呼ばれるスキルしかない。おとぎ話や昔話で聞いた勇者に等なれるはずが無い。


グロウスの心はこれ以上ないほどに沈んだ。


その時、教会から強い光があふれ出し周囲を明るく照らした。教会の内部が騒がしくなり、外に出ていたシスターも慌てて並んでいる人に待つように伝えて中に入って行った。


「何があったんだ?・・・・・・シンク!!」


先程教会に入って行ったのは誰だ?それは彼の親友シンクだった。この騒ぎに不安は大きくなり、並んでいる人が止めるのも聞かずにグロウスは教会に飛び込んだ。


「シンク!!」

「グロウス!!」


水晶の前で神父とシスターに囲まれているシンク。無事な姿を見てグロウスは体の力が抜けていくのを感じた。


「大丈夫かよ。」

「うん、ちょっと驚いただけ。」


近づいてどこかに怪我は無いか調べるグロウスにシンクは苦笑しながら答えた。


そんな二人の行動を優しく見守っていた神父がシンクに語り掛ける。


「シンク君と言ったね?ステータスを見せて貰っても良いかな?」

「・・・はい良いですよ。」


その時グロウスはシンクが光に板を操作した様に見えた。


「どれどれ?」


名前 クーリージス・シンク

種族 普人種

年齢 10歳

職業 なし

スキル

<剣術><体術><生活魔法>


ギフト

なし


「おぉ!!戦闘系のスキルを2つも持っているとは!!しかも生活魔法が使えるというのも素晴らしい!!大きくなったら教会騎士にならないかね?」


神父がシンクのスキルを見た後すぐにスカウトを始める。その様子にシンクは苦笑しながら答えた。


「考えておきます。さっグロウス帰ろう?」

「・・・・。」


シンクに手を引かれながら孤児院に向かって歩くグロウスの顔は何かを考えている顔だった。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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