なんか魔導書が作れました。
世間的には社会勉強という体その実追放されて、今後の住居となる別邸にやって来たんだが…
「うわぁ…これは」
「かなり汚れていますね。一体いつ頃から放置されていたんでしょうか」
「さあ」
恐らく僕が生まれる前から役目を終えている気がする。
「取り敢えず掃除からかな」
「はい、お任せください」
「いや、僕も手伝うよ」
「いえ、セピア様は…」
「特にやることも無いし。そもそも、僕の家だしね、僕にも手伝わせて」
「分かりました。では、サクッと終わらせてしまいましょうか」
**********
などど言ったは良いものの…正直かなり大変だった。長年の汚れが溜まっており、二人で終わらせるのは尋常じゃない時間がかかった。
「なんとか終わったね…」
「はい…久しぶりに掃除でこんなに疲れました」
恐らく本職であろうアリスでさえ息が上がっている。力しごとなんてやってこなかった僕がやればこうなるのは当たり前と言えば当たり前だろう。
「セピア様、コーヒーいかがですか?」
「ああ、ありがとう」
取り敢えず生活できるぐらいには整った。
「さて、これからどうするかなぁ…」
「そうですねぇ。いずれ生活費も尽きるでしょうし」
一応最低限の生活費は受け取っているが、これもいずれ無くなる。なんとか安定した収入源を確保したいが…
「僕がまともに働けるとは思えないんだよなぁ…」
今日の今日まで実家を継ぐつもりだったので、社会で使えるスキルなんて覚えてない。
「最悪、私が水商売で…」
「いや、それはダメだ」
「でも、そうでもしないと…」
「水商売はリスクが高すぎる。まともな雇用者とは思えないし、収入も安定しないだろうし。なによりアリス自身の体に異常をきたす可能性がある」
「セピア様…」
こんなことを言ってるが、これ以外に単純にアリスを他の男に抱かせたくない、という独占欲も混じっている。本人には伝えてないが、僕はアリスにだいぶ依存している状況だろう。
「セピア様、ユニークスキルはあったんですよね?」
「うん…でも、ろくなスキルじゃないと思うよ」
「でも、試してみましょうよ」
「まあ、そうだな」
最悪魔導書が複製できるなら魔導書職人として稼げなくもない。試すだけの価値はある。
「取り敢えず、初級の魔導書を買って来ますね」
「うん、お願いするよ」
**********
「セピア様、使ってみましょう」
「うん…」
あくまで聞き齧った知識だが、複製元の魔導書にペンを通して魔力を通し、新しい本にペンをかざすと複製されるらしい。この作業を繰り返して魔導書を複製していくんだろう。
「魔力を込める…」
ペンに魔力を流すイメージ。すると…
「うぐっ…!」
「セピア様!?」
まさか、こんなに早く魔力切れするとは思っていなかった。魔力量Eってこんなに余裕ないんだな…
「一応、魔力回復のポーションも買って来ましたので…」
「ありがと」
初めてなので魔力の込め方が下手というのもあるんだろうが、それにしたってこれはお話にならない。
「やっぱり使えないのかな」
そう言って火属性初級魔導書、『火球ファイヤーボール』をめくっていると…
「あれ?ここ…」
無駄が多くないか?魔力をやたら消費するようになってるし、この文章は必要ないし。
「セピア様…?」
「っ、僕、なんで今のが分かったんだ?」
「セピア様、あくまで予想なんですが…そのユニークスキルは、魔導書を作成できるんじゃないですか?」
「作成?嘘だろ…」
そう、魔導書は複製されることはあれど作成されることは現代において無い。なぜなら、魔導書自体が太古の文明で、それをなんとか絶やさないようにしているのが現状だ。噂では昔の人間は優れていたとか、神が作ったとか…それを僕が…
「騙されたと思って、今疑問に思ったことを修正して魔導書を作成してください」
「うん、やってみるよ」
魔導書なんて複製したことすらないのに、ペンに迷いが無い。
「出来た…!」
「⁉︎これは…」
僕の手元にあるのは…
「「魔力消費量が少なすぎる…⁉︎」」
ある意味僕向けの、『火球ファイヤーボール省魔力ver』の魔導書だった。
**********
作者後書き:この僕がカクヨムで連続投稿とかめっちゃ珍しい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます