第6話 映画館

待ち合わせ時間より少し早く

シティタワーモールの映画館に着いた。

予定通りだ。

休日のショッピングモールの賑わい。

行き交う穏やかな幸せが流れている。



10分ほど経った。

人の直感とは不思議なものだ。


行き交う人混みの中から

ロイヤルパープルのワンピースが早足で

こちらに向かうのを見つけた。

予想通り、制服などより似合っている。


ここにいる。

千里の方へ手を伸ばす。

指が繋がる。


 

「ごめんね。待った?」

「いや、少し前に着いた」

ダークブルーのパーカー。

やっぱり見た目通りで分かりやすい人だな。

飾り気の無いラフさが予想通りで

少し可笑しくなった。



ポップコーンの香りが漂うエントランスから

映画館の雰囲気が好き。


寺西君がLサイズのポップコーンとコーラを買ってきた。

「定番過ぎるが、これも映画館の醍醐味だと思ってる」

「だよね。チケットを渡してスクリーンへ向かう廊下も」



予約した後ろ右端の席に座った。

まだ上映までの時間はあるみたい。



「映画は映画館の雰囲気と相まって

ひとつの思い出になるのだろうな。

映画館に来るたび、そんな気がする」


「そうかも。私も子供の頃に観たアニメを

思い出すと、家族と行った映画館の雰囲気や

その後に食事した事も一緒に思い出すよ」


「レンタルDVDや動画配信では味わえない

映画館が持つ空気感は普遍的なのだろうな」




場内が暗くなった。

いよいよ始まる、この高揚感がたまらない。

予告編が始まる。


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