第6話
「皆、揃っておるな」
当たり前だろ。
一番遅く入ってきたくせに偉ぶんなよコノヤロー。
九郎の前方に腰を掛けた老人は、口周りを覆う白髭を撫でながら細い目を円卓に向けて一周させる。
「火ノ杜と浜渡。今朝方はご苦労であった」
「別に苦労なんてもんでもなかったです」
全執行部で統一された黒色の上着に赤の差し色の入った隊服を着た女は垂れ目の奥にある赤黒い瞳を天井にむける。
「・・・」
何いってんだコイツ。
苦労したに決まってんだろ。
こちとら2時起きだぞ?
みんな動かない体に鞭打って戦わされてキツイに決まってんだろ。
「・・・」
火ノ杜と総代。
こっちずっと見てくるんですけど。
圧がすごい。
何もありませんでしたって言えよ。
って目が訴えてるぞ。
「・・・今朝から部下たちはよくやってくれましたよ」
朝っぱらから苦労したしな!
「そうか、浜渡所には期待している。今後ともよろしく頼む」
おいって、おいおい。
こっちの抵抗スルーすんなよクソジジイ。
そこの火ノ杜の!
笑ってんじゃねぇぞ!
あぁ、やっぱり来るんじゃなかった。
「して、今回はどのようなご要件で?」
口火を切ったのは天岩だ。
「うむ。皆も大方予想はついとると思うが、今回も『カルミア』についてじゃ」
え?まじかよー。
また強制執行の命令?
頼む!今度は俺達に当たりませんように!!
「アレックス商館の強制執行執行で何か見つかったのですか?」
やめろ・・・余計なフラグを立てるな・・・。
意と反する展開が見えてきた九郎は目を細めて卓に重ねた両手で祈る。
「浜渡所が強制執行に当たった商館の本家地下室より増幅薬が見つかった」
ア"ァ"ッ!!
何かきっと良からぬものが見つかったことは面々を見ることで察することができたが、九郎はそれをすることはせずに正面を見据えたまま思考することを投げ出す。
昔教わったことのある何も考えたくないときに、それっぽく雰囲気を醸し出しながら黙る方法を実行する。
後ろに控えていたスミレは、主の脱力し肩の落ちた後ろ姿の変化に気が付き九郎の伝えんとすることが分かってしまう。
後は・・・頼んだ。
目にかかる髪のお陰で気づかれずにすんだが、放心状態となった九郎であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます