1.異世界
家から出ると、下には黄緑色の草が生い茂り、上には、絵の具のような空色。どこまで続いているのかわからない地平線。西の方角には、円形の城壁に囲まれた街。まるで、中世ヨーロッパ。勿論、写真や本でしか見たことはない。だが、そうとしか思えないような風景であった。
——— このよくわからない世界に来て、
「雑魚いなぁ、このモンスター。もっと手応えある奴おらへんのかな。」
金髪、眼鏡、切れ物。
だが、飛び抜けた順応性や情報収集能力で、すでにこの世界の異常な力を使いこなせている。
「ははは。秀の魔法はすごいな。もうそんなに使えるもんな。」
細身で長身、色白い顔、この5人の中で最年長。
戦闘に関しては、そこまで突出してはいないが、この一週間、他の者の相談などを聞いたりと精神的な支柱になっている。
ショートヘアに快活な性格。ハーフらしい。ガルシア・ホソカワは、職業“拳闘士。スキル不明。明るく、物怖じしない性格で、戦闘に関しては、抜きん出ている。
頭は、そこまで良くないように見える。
黒髪ロングの大企業のお嬢様。
(この4人全員、一応触れてみて、俺よりもステータスは低い事はわかった。さて、これからどうするか。)
.....この世界に来て、一週間で5人は、この世界について色々と調べた。
この世界は、聖王国と魔王国という2つの国があるという事。自分たち異世界人は、この世界だと勇者という認識である事。モンスターを倒すとお金やアイテムが手に入る事。自分たちは死ぬと教会で生き返り、アイテムを全て失うという事、など。
ヒデが主体となって調べた。魔王がいる魔王国は、大陸の東側に位置している。この大陸の3分の2は、現在いる聖王国の領土であり、魔王国は、徐々に勢力を伸ばしてはいるが、まだまだ小国であった。
そんな小国の親玉を倒すなんて、少し退屈な気持ちにシンは、なっていた。
シンは、目の前の草原で動物型のモンスターを狩るヒデたち4人。それを少し離れた場所から眺めている。
織田川信も最初は、積極的にモンスターを狩っていたが、途中からは面倒くさくなっていた。
シンのスキル“上位互換”は、触れた者が、自分よりも高いステータスであった場合、自分のステータスがその者と同じ数値に上書きされるというものである。
つまり、今いる4人に触れたが、自分のステータスに変化が無いという事は、自分よりステータスが低いという証明であった。
(そもそも、俺のステータスの200という数字は、この世界ではそんなに高いものなのか?こいつらが低いという可能性もある....)
シンは、この世界への期待が大きすぎたのか、少し詰まらなく感じ始めた。
だが、まだまだ知らない事がある。元の世界よりはマシであった。モンスターを一通り、狩り終えると4人が戻ってきた。
「ほんまにシンは、やる気ないのぉー。お金は大事やぞぉ?」
「“働かざる者食うべからず”だよぉ〜。」
ヒデとガルシアが、笑いながら話し掛ける。
「まあ、お金はあるから大丈夫だよ。それよりも東に向かわないか?旅もしたいだろ?」
シンの提案に4人は、確かに!と言った様子で同意する。現在、大陸の西側『ルスト』という小さな町にいた。
「そうだね。早めに東側に向かって、魔王国にいつでも入りやすい場所に滞在する方が後々、楽かもしれないね。」
最年長の
「とりあえず、東側に向かっていけば、『アズブルグ』っていう大きい街があるみたいだ。そこに向かおうか。」
「確かにこの街、地図でも大きく書かれてるね!!ショッピングショッピング!!」
「まあ、ワイもそれええわ。大きい街行きたいと思うてたし。」
三成の提案にガルシアとヒデは、賛同している。
(まあ、行ってみて損はないな....ここに居ても退屈すぎるしな。)
「ああ!僕も賛成だよ!麗華ちゃんは?」
「はい。私もそれで異論はありませんわ。」
5人とも反対なく、『アズブルグ』という街を目指す事にした。草原の真ん中を伸びる街道をひたすら進んでいく。途中、街で買ったテントなどでキャンプもしながら、約3日ほどで目的地は、シンたちの目の前に現れた。
巨大な城壁が街を円形に囲み、真ん中には中世のお城のような建造物が建っている。確かに大きい街であった。
旅の途中で何度もモンスターが襲ってきた。それをまめに倒しながら進んできた甲斐もあり、お金は大分溜まっている。
『アズブルグ』の南門から入る。多くの行商人が荷物を運んでいる。街の中も大勢の人間で賑わっていた。
「凄くない??この街凄いね!現実世界じゃ、こんな場所ないよ!!」
飛び跳ねながら商店が両脇に並ぶ大通りを中心へと向かって走るガルシア。彼女に仕方なく付いていく麗華。
「あんまり、遠く行かへんようにな!」
意外と世話好きなヒデの声に手を挙げて反応すると二人は、どんどん進んでいった。
「さて、わいもアイテム屋探索してくるから、シンたちも好きに探索してくるとええ。この札持っていきな。それに話しかければ、わいに繋がるから。まあ、携帯電話みたいなもんねん。」
ヒデも一人でアイテム屋の方に歩いて行った。
それにしても、ヒデは凄い。まだこちらに来て間もないのに、”魔法を応用してこんな物を作るとは。スキルに関係しているのかもしれない。“そうシンは、考えていた。
———— 『アズブルグ』商業都市と呼ばれ、聖王国の西部一の都市である。シンたちは、この街である一団と出会う事になるが、この時はまだ何も知らない。
異世界転移したらあんまり面白くなくて絶望したんですが... KOYASHIN @KOYASHIN
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