大人編 ルークとアイリーン、アントニオ


 桃と手をつないだベル、美月が砂浜に戻ってくると、トウジや和希たちが駆け寄る。アントニオは激怒した女王バチに腕を刺され、鎌倉警察署に送られていった。

 二人はホワイトボードの前に集まった『ビーヘイバー』参加者に、ロンドンで7歳から劇団員をやっていた時と10年後に起きたことを話し始めた。


 「アントニオは50人の劇団員の中で、セリフを暗唱することができる男子でした。アントニオが出た舞台では観客の拍手が20分間鳴り止まず、30本のブーケや20枚のハンカチを両腕で持って出てきたこともあったんです。

 もう一人、観客から大きな拍手とブーケを送られていた子がいて、その子とは夜の10時まで一緒にセリフを読んでいました。

 13歳からセリフの暗唱後にアイリーンと抱き合おうとしたり、他の子がいないところで僕を殴ったりして観客から渡される水色のブーケも減り、劇団をやめてロンドンの学校でストリートダンスを始めたんです」


 「ルークが銀座で寿司職人になり、私のスマートフォンにアントニオからメールや

電話が1日20件来るようになったんです。日本に住みルークと付き合っていた私を、自分のものにしたいという気持ちでした。

 アントニオは17歳で始めたストリートダンスでも大きな拍手をもらい、大会では1位になっていましたが送られてくるメールや電話は40件に増え、男性を見ると冷や汗が出ていました」

 話し終えた二人は「桃、ベルさん、美月先生。謝らせてください」「ごめんなさい」と頭を下げる。ベルが「あなたたちのせいじゃないわよ」と英語で言うと、桃と美月もうなずいた。

 

 

 清太が「ルークさん、アイリーンさん。ソーセージとチーズ入りのホットドッグと、粉砂糖がかかったパン食べますか?」と聞きながら二人の前にあるパイプ椅子に置く。

 ルークは粉砂糖がかかったパン、アイリーンはホットドッグを両手で持ち食べ始める。「舞台の後に食べていたものだね」「うん」と言いながら、清太に笑みを見せる二人。

 「劇団員をやっていたんですね」「14歳の時にアイリーンと一緒に4時間舞台に立って、階段から下りる時に転倒しそうになった。

 アイリーンのお父さんが淹れた紅茶と一緒に出されたのが、ホットドッグと粉砂糖のパンだった。

 20人の劇団員はロンドンで舞台に立ちながら、ストリートダンスもやっている」ルークはパンをちぎって食べながら、小声で言った。

 

 

 「ありがとう。美味しかった」「ありがとうございます。ご来店、お待ちしています!」清太は口元を拭き終えた二人に、店の電話番号と住所が書かれた名刺を渡す。

 「お父さんもパン好きなの。一緒に店に行くね」アイリーンは名刺を肩掛けカバンに入れ、清太に手を振ってからルークと一緒にテントに戻った。

 


 

 



 




 


 

         


 




 

 



 

 

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